2016年9月現在。VR市場にはハイエンド向けのOculus RiftやHTC Vive、モバイルVR分野ではサムスンのGear VRやGoogleのCardBoardなど、さまざまなVRデバイスが出回るようになりました。VR技術の歴史は、VRデバイスの歴史、と言い換えてもいいかもしれません。
本記事では、1930年代から現在に至るまでのVR技術の歴史を、インフォグラフィックで見ていこうと思います。インフォグラフィックは、アメリカのシラキュース大学が開設している修士課程の通信制プログラムで制作されました。
以下のインフォグラフィックには、登場する技術を三つに分類しています。
1.前身技術(物理世界とバーチャルな世界にまたがっているもの)
2.AR(ユーザーの現実世界にバーチャルな要素を付与するもの)
3.VR(ユーザーをバーチャルな世界に没入させるもの)
1930年代
「Link Trainer」は1930年代にリンク氏によって開発された飛行機シミュレーター。前身技術として紹介されています。
最初はアミューズメントパークなどに遊具として導入されました。ところがエアメール便の配達事故や第二次世界大戦を経て軍などが、徐々に飛行士訓練のために「Link Trainer」を導入し始めました。
1940年代
1940年代に徐々に広まったのは「Sawyer’s」社による「View-Master」です。「リール」を装填して除くことで、両眼立体視を利用してカラーの3D画像を見ることができるというもの。
ひとつのリールで7つまで画像を見れたことが当時特徴的とされ、推定ではビューワー1億台、リールは15億本売れたとされています。もとは大人向けの教育ツールとして開発されましたが、徐々に子供のおもちゃへとシフトしていきました。
1950年代
1957年に登場した「Sensorama」は、Morton Heiligが開発した筐体型のマシーンです。プレイヤーはイスに座ってマシーンをのぞき込みます。正面には比較的大きなスクリーンがあり、3D映像を楽しむことが可能。加えて、アロマなどの香りを生成、イスが振動、送風などの機能も搭載されていました。インフォグラフィックではARに分類されています。
1960年代
1960年に登場したのは、最初のヘッドマウントディスプレイとも称される「Telesphere Mask」です。こちらも先の「Sensorama」と同じくMorton Heiligによる開発。両眼立体視は可能でしたが、モーショントラッキング機能はありませんでした。
1970年代
あのGoogleストリートビューの前身とも言われる「Aspen Movie Map」が登場したのは1970年代。
これは、アメリカのコロラド州にある街「アスペン」をバーチャルツアーで自由に散策できるというものです。車の天井に装着したカメラでアスペンの街中を撮影。車が進んでいく様子は、動画ではなくパラパラ漫画のように再生されます。スピードは視点を変更したり、一時的に再生を止めるといった操作は「タッチスクリーン」で可能となっています。
1980年代
VRL Researchが1980年代にリリースしたのは「The Eyephone」というHMD、そして「The Data Glove」というグローブ型の入力デバイス。HMDの視野角は90度、価格は9,400ドル(約94万円)でした。
1990年代
任天堂が「バーチャル・ボーイ」をリリースしたのは1990年代の出来事です。スタンドアロン型のデバイスで、テニスやピンボールができるものでした。
なおバーチャルボーイ以降、2016年9月の時点で任天堂は、VR分野への参入は行っていません。2016年に行われたE3内のインタビューにて、任天堂アメリカの社長は「VRがメインストリームになる頃に参入するだろう」と述べています。
2000年代
2000年代にはアーケード用に大型の筺体を使用するVRゲームが登場し始めました。
2010年
マイクロソフトのモーショントラッキングセンサである「Kinect」がリリースされたのは2010年のこと。現在ではXboxの他にもWindows対応版などもあり、プレイヤーの身体の動きを認識してゲームに利用できます。またKinectを使ったトラッキングは、エンターテインメント以外の分野(医療など)でも用いられています。
2011年
2011年にはAppleが、iPhoneを使って360度コンテンツを視聴できるビューワーをリリース。
2012年
Oculus Riftが米国クラウドファンディング「Kickstarter」に登場したのが2012年。当時3日で100万ドル(約1億円)を集めて話題を呼びました。2014年にはFacebookに20億ドル(約2,000億円)での買収され、2016年3月には製品版Oculus Rift CV1をリリースしました。
これが最初の合図になったかのように、同時期にVRHMD開発に取り組んでたソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE、旧ソニー・コンピュータエンタテインメント)やValveも自社のVRデバイスを発表しました。Valveはその後HTC社と共同開発の体勢を取り、2016年4月にHTC Viveを発表。SIEのPlayStation VRは2016年10月に発売予定です。
2013年
Tactical Haptics社は2013年に手の動きをトラッキングできるモーションコントローラーをリリース。搭載されているシミュレーターは、押す、引く、握るなどの操作を認識できます。
2014年
Google CardBoardの登場は2014年。これは基本的に段ボール製のデバイスで、Androidスマホを差し込むだけで手軽にVRを楽しめるというもの。
Googleは2016年秋、ミドルエンドを狙ったVRプラットフォームDayDreamをリリースする予定です。こちらはCardBoardより上質なVR体験が可能とし、コントローラーもセットになっています。
また日本でも2014年、理化学研究所の藤井直敬氏が株式会社ハコスコが設立。ハコスコは二眼タイプの他に両眼立体視を必要としない単眼タイプもあり、小さな子供やお年寄りも気軽に楽しむことができます。
2015年
サムスンがOculusと共同で開発するモバイルVRHMDの「Gear VR」は2015年11月(日本では12月)にリリース。
サムスン製のスマホGalaxy S6/S6 Edgeのみの対応ですが、それゆえにハードウェアとの連携が取れ、他のモバイルVRHMDとは一線を画した高品質なVR体験が可能となっています。2016年にはGalaxy Note 7にも対応したマイナーチェンジ版がリリースされています。サムスンは他にもオリンピックのVR中継を行うなど、VRに対して積極的な取り組みが見られます。
2016年
そして2016年に出荷が開始されたのはマイクロソフトのMR(Mixed Reality)デバイス「HoloLens」。装着することで現実にさまざまな映像を重ねることができるもの。開発者版ではあるものの、HoloLensは既にNASAや各航空会社などで訓練や開発などに使用するデバイスとして採用され始めています。
2016年は先に触れた通り、Oculus RiftとHTC Viveの製品版が市場に現れ、10月にはPSVRの発売も控えていることから、「VR元年」と呼ばれています。
この先も、VRはどこへ向かっていくのか、どんな技術が現れるのか、それが人間や生活にどんな変化をもたらすのか、この目で見るのが非常に楽しみですね。
(参考)
This Infographic Outlines The Evolution of Virtual Reality – UploadVR
http://uploadvr.com/infographic-evolution-of-vr/
※MoguraVRはUpload VRのパートナーメディアです