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業界動向 2022.04.22

KDDIら、商業ベースの都市連動型メタバースを想定したバーチャルシティガイドラインを公開

2022年4月22日、KDDI株式会社、東急株式会社、みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社、 一般社団法人渋谷未来デザインで組織している「バーチャルシティコンソーシアム」より、メタバース/都市連動型メタバース業界の発展に向けたバーチャルシティガイドライン ver.1が公開されました。

ガイドラインとは本来、特定の目的を定めた上で求められる指針となります。しかし現在、メタバースという言葉は具体的な方向性や、利用目的が定まっているわけではありません。そこではじめにKDDI株式会社 事業創造本部 副本部長 兼 バーチャルシティコンソーシアム代表幹事の中馬和彦氏より、メタバースの現状と展望が伝えられました。

メタバースサービスの構造と「Web3」

中馬氏からは、メタバースサービスを振り返る上で、2007年にブームを迎えたと言われているセカンドライフが取り上げられました。当時はサービスにアクセスするためのPCのスペックや回線環境が十分ではありませんでしたが、そこから十数年が経ち、2度めのメタバースブームが到来。このきっかけとなったのが、新型コロナウィルスによる世界的なパンデミックです。

「ステイホーム」が求められる世の中。子どもたちが学校に行けず、友人とのコミュニケーションにオンラインゲームを活用するようになり、オンラインで過ごす時間が長期化。次第にゲームをするためではなく雑談をする目的で、オンラインゲームを利用するケースも多くなってきました。

また重要なキーワードとして「Web3」も取り上げられました。中馬氏はWeb3の時代になったことにより、従来は特定の企業が作ったゲームをデジタルで課金をして遊んでいた世界から、複数のゲーム空間を自由に行き来して、さらにアイテムを購入するだけじゃなくて売買できるという、「PayからEarnへ」の流れが生まれていると説明。ゆえにメタバースはただの空間ではなくオープン経済圏の方に近づいている、というトレンドの変化が起きていると解説しました。

一方で「何でもメタバースでできる」かというと、そこまでの状況は整っていません。そこでメタバース×Web3の世界でアイテムを所有し、販売をすると経済活動ができて、3Dのアバターでコミュニケーションができるということになれば、限りなくリアルに近い経済活動ができるようになると考えられると中馬氏。

コロナ化以降もなかなか従来の生活様式に戻らないなか、選択肢としてのメタバースっていうものがより現実を帯びてくる。メタバースでの生活時間がどんどん長くなる。ゆくゆくはメタバースとスマートフォンの利用時間がリアルでの行動時間を逆転する、と言われているそうです。もしほとんどの時間をメタバースで過ごすとなると、今までの洋服や化粧やアクセサリーになりうるアバターなどのデジタルコンテンツが、非常に価値を持つということなります。消費がリアルのものからデジタルコンテンツの方に確実に流れていく変化が起きる。そうなると、メタバースの空間はリアルに相当する新しい経済圏となりえます。

セカンドライフを含める2007年以降のサービスを「ビフォアメタバース」、ゲームがSNS化した2017年以降のオンラインゲームなどを「プレメタバース」としたとき、2020年代以降にやってくるメタバースはWeb3の要素が加わり、特定のゲームだけではなくて、他の空間にも自分のアイテムを持って行き来できるようになると考えており、バーチャルシティコンソーシアムとしてはこれを“本命のメタバース”と呼ぼうとしているようです。

デジタルデータに権利をもたせることを想定

今回新たに発表された「バーチャルシティ宣言」は、バーチャルシティコンソーシアムがメタバースに環境において目指していきたいビジョンであり、メタバースを発展させていくときに課題となることを整理していく指針となるものです。

「バーチャルシティ宣言」には7つの項目があります。

1. 創作活動を促し、人の多様性を開放する
2. 人の生活空間を拡張し、新たな経済圏を創出する
3. グローバルレベルでの「シティプライド」と都市の文化を育む
4. 「ヒト・モノ・コト」の偶発的な出会いと、コミュニケーションを創出する
5. テクノロジーを活用し、ユーザーの権利の適切な保護に務める
6. 公の場としての適切な運営と、オープン性を確保する
7. 民主的なルールメイキングを推進する

また「バーチャルシティガイドライン ver.1」の主要トピックを見ると、メタバース全体に関係する項目と、バーチャルシティコンソーシアムが推進している都市連動型メタバースに関係する項目に分かれていることが把握できます。
 

クリエイターエコノミーの活性化としては多様なクリエイティビティを発揮できる場が望ましいと記載されており、同時に複数のサービスで作成したデータをやり取りするために、ブロックチェーン技術の活用が重要であるとしています。そんなユーザーが活動する場として、ユーザーの自治によって都市連動型メタバースの運営を可能とする、オープンガバナンスの仕組みを考えているとのこと。

バーチャルシティコンソーシアムとしては、これからはすべてのコンテンツをユーザーが作成することをベースとして考えているそうです。しかしデジタルデータの著作権、所有権は、現状の法律では認められていません。ゆえに、デジタルデータに権利があることを定義する必要があると、法整備をするべきだと政府にも提言しています。

ガイドラインでは、「デジタルデータの権利が認められるようになれば、リアル都市を超えるインパクトを持つバーチャルシティになるはず。そのメタバースで生活するアバターの肖像権やパブリシティ権を認めて欲しい、という要望が出てくるだろうと想定し、先行して整備するべき」といった趣旨の提言を行っています。

リアルを模した空間をバーチャル上に再現するときの問題にも触れています。曰く、リアル空間のものをデジタル上で再現するにあたり、現行法上の原則において権利者の同意を必要としていません。しかしバーチャルシティコンソーシアムが目指していくWeb3と融合したメタバースは、リアルな経済圏であり社会になるため、経済活動を行うのであれば連携する町の人たちとの合意をとることを前提で進めるとのことです。

またリアルの経済圏とメタバースの経済圏が融合することを想定したとき、相互流通の仕組みやビジネスモデルを積極的に提案していくといいます。


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