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業界動向 2022.08.18

究極のXR体験は「世界のストリーミング」——XR・メタバースのダークホース企業、Varjoが語る未来

2015年頃から大きく開拓が進んだVRヘッドセット市場。数多くのデバイスが登場し、淘汰と進化が進んだ。一部調査によれば、2022年にはMeta(旧Facebook)の「Meta Quest 2」が新規販売の9割を占め、盤石の地位を築いている。性能と安さが生んだ、Metaの圧倒的な市場シェア。しかし、それは決して「VRのすべて」ではない。

フィンランドに拠点を構えるスタートアップ、Varjo(ヴァルヨ)人の眼レベルの解像度を実現する」というスローガンのもと、企業向けの「超ハイエンド」なVRヘッドセット市場を独自開拓している。カメラや各種センサーを組み合わせ、VRだけでなくARにも対応したヘッドセットを展開。一般消費者向けのMetaとは全く異なる路線で、着実に歩みを進めているのだ。

今回、Mogura VR NewsではVarjoのチーフ・ブランド・オフィサー、ユッシ・マキネン(Jussi Mäkinen)氏にインタビューを敢行。Varjoが目指す「人の眼レベルの解像度」の進展や、メタバースのための技術展開、そして同社の戦略について訊いた。



ユッシ・マキネン / Jussi Mäkinen
Varjoチーフ・ブランド・オフィサー(CBO / 最高ブランド責任者)。研究開発、デザイン、クリエイティブ・マーケティングが交差する分野で活躍する、ハイテク・マーケティングのプロフェッショナル。ノキアやロビオ等のグローバルテクノロジー企業で新しいブランドやテクノロジーを生み出し、複数のテクノロジースタートアップのアドバイザーを務める。

Varjo Aeroはユーザーコミュニティから生まれた

——まずは2021年にリリースされた「Varjo Aero」の話を聞かせてください。Varjoは常に究極のデバイスを追求している企業だと考えていたのですが、Varjo Aeroは方向性が少し違いますよね。最高スペックで、トータル100万円近くする「XR-3」と比較すると、およそ30万円のVarjo Aeroはミドルレンジ製品のようにも思えてきます。

マキネン:
Varjo AeroはフライトシミュレーションやAAA級VRレーシングゲームなど、最も要求の厳しい「プロシューマー」向けの、あくまで「ハイエンド」なVRヘッドセットという位置づけです。もちろんXR-3のような「超ハイエンド」ではありませんが、究極のビジュアルを見たい人向けだと考えています。Varjoの他製品と同じく、Varjo Aeroでは非球面かつ場所によって解像度が変わるレンズを使っています。これにより、例えば「Microsoft Flight Simulator」では次元の異なる視覚体験ができます。

またVarjo Aeroはプロシューマー向けであると同時に、多くのプロフェッショナルが使用しています。比較的軽く、ケーブルが1本で済み、市場にある他のVRヘッドセットよりもはるかに忠実なビジュアルが提供できるからです。


(「Varjo Aero」。他社製品と比較しても極めて高いスペックを持ち多機能的だが、Varjoの製品としては最も安価。「ハイエンドVRヘッドセットへの入り口」「産業レベルへのエントリーモデル」とでも言うべき位置づけだ。日本では株式会社エルザジャパンが代理店として販売を行っている)

マキネン:
この「プロシューマー向けデバイスを作る」というアイデアは、ユーザーコミュニティから生まれました。Varjoはデバイスを企業や組織向けにのみ販売していましたが。YouTuberやインフルエンサーの方、熱心なVRユーザーから「Varjoの製品を買いたい、使いたい」という要望を多くいただくようになったんです。このユーザーコミュニティからのフィードバックを受けて、私たちは考え方を180度変えました。Varjo Aeroは、ビジネス向けだけでなく、誰もが購入できる最高のVRヘッドセットだと思います。

——Varjo Aeroは日本のAmazonでも販売されていますよね。Varjoとしては初めてのプロシューマー向け製品とのことですが、スペックや価格はどのように決定したのでしょうか。製品企画のプロセスについて教えてください。

マキネン:
Varjo Aeroは、他のコンシューマー向けヘッドセットとはまったく異なる方法で取り組んでいます。普通は最初に販売する価格帯を定め、その価格に見合うようなスペックを考えるでしょう。私たちの場合は違います。私たちはいつも、どの製品でも、「どのような体験を提供するか」という仕様と使用感を決めるところからスタートしています。

Varjo Aeroは「VR-3」などと比較しながら、「どうすれば、世界最高の誰でも買えるVRヘッドセットを作れるか」を考えました。Varjo Aeroには「人の眼レベルの解像度」はありませんが、これまで作られた中では最高のVR向けディスプレイがあります。また、Varjo Aero用のレンズは大きな発明でした。ディスプレイの解像度は同じでも、「体感する画質」が非常に良くなったのです。


(Varjo Aeroは特殊なレンズを採用しており、視界の中心になればなるほど高解像度に見える仕組みだ。画像:Varjo)

マキネン:
逆に、必要とされない機能は何かも考えました。今回搭載されていないハンドトラッキングはそのひとつです——最高のビジュアル体験という意味では少し外れます。一方でアイトラッキング(視線追跡)は、超ハイエンドなグラフィックの実現に重要なので、そのまま残しています。

——まずはスペックと体験から決めているのですね。価格は後であると。

マキネン:
フライトシミュレーションやVRレーシングゲームのために、多くの機材に投資している人たちがいますよね。彼らのことを考えてみましょう。そうすると、Varjo Aeroは「没入感を向上させるために、かさばる大きなモニターを3つも買うのではなく、ハイエンドなVRヘッドセット1つで済む」という使いみちが見つかります。

3つのモニターを使うよりも、VRヘッドセットを使ったほうが体験はよくなります。「Microsoft Flight Simulator」では、モニターとVRではまったく異なる体験ですし、VRの方がより没入感があります。この比較においては、Varjo Aeroは価格もリーズナブルだと思いますよ。

コミュニティドリブンなアップデートで進化するデバイス

——さらなる製品の構想やロードマップはあるのでしょうか? 例えば、ここからさらに低価格の「ミドルレンジ」のラインナップを増やすような。

マキネン:
残念ながら、私は将来の製品ロードマップについて詳細にお話しすることはできません。一方で、言えることがひとつあります。私たちはユーザーコミュニティの声に耳を傾け続けています。私たちには非常に活発なコミュニティがあり、何度もやり取りをして、Varjoの製品にどのような体験が必要かを理解しています。製品に求められているものを知る——最も簡単で、最も大切なことでしょう。

私たちはコミュニティとコミュニケーションを取りながら、ソフトウェアのアップデートを行っています。直近では「ディスプレイが明るすぎる」という意見を受け、明るさ調整機能を追加しました。また、XR-3にはリアルタイム・クロマキーのための新しいソフトウェアを導入しています。

Real-time chroma keying with Varjo XR-1_ Google Earth in mixed reality from Varjo on Vimeo.

マキネン:
私たちは常に新しい機能を取り入れていますし、ビジネスユーザー以外にもどんな機能を提供できるか、もっと理解したいと思っています。皆さんのニーズを通して将来を予測し、よりよい体験を考えることができます。

——コミュニティと向き合っているという点が非常に印象的です。ユーザーたちとはどのようにコミュニケーションをとっているのでしょうか?

マキネン:
私たちはDiscordでコミュニティを展開し、日々ディスカションを行っています。実はこのDiscordサーバーは、ユーザー主導でスタートしたものなんです。はじめはゲーマー向けに展開されていましたが、徐々に私たちもコミュニティと協働したいと思うようになりました。VarjoのR&D;担当者やマーケティング担当者、カスタマーサポートがこのコミュニティに関わっています。Discordコミュニティのモデレーターとして活躍している人たちもいます。

現在、Discordは私たちがコミュニティを発展させ、コミュニティに貢献するための場となっています。コミュニティからさまざまな質問を受けたり、デザインを積極的に提案したりしています。このコミュニティにはエンタープライズの法人ユーザーも加わっています。あらゆる人のためのコミュニティですからね。

——はじまりはユーザーからで、今はお互いに何かを提案したりする場にもなっていると。

マキネン:
将来的には、日本人のモデレーターも迎えて、日本人が「そうそう、そうなんだよ」というような感じで参加できるようにしたいですね。日本語に対応することは私たちにとって非常に重要で、Varjoが最初に公式ウェブサイトに追加した第二言語は日本語だったんですよ。

——日本からも参加しやすくなると、非常に嬉しいです。先ほどのアップデートの話に戻ると、Varjoはよく「ハードウェアの会社」として認識されています。実際はそれと同じくらい、あるいはそれ以上に、ソフトウェアのチームも大きいのではないでしょうか。

マキネン:
そうです! もともと、Varjoのメンバーの多くはソフトウェアを扱う仕事をしていました。なので「ハードウェアもやるし、ソフトウェアもやる」のです。社員の大半はソフトウェアに従事していますし、サービス面にもますます力を入れています。

私たちはすべてのヘッドセットに対し、8週間サイクルでアップデートを配信しています。私たちのハードウェアは、ソフトウェアのアップデートによって常に進化し続けているのです。まるでテスラの自動車のように。XR-3を「発売当初とは全く別物に進化した」と言う方もいるくらいです。

——ソフトウェアアップデートのロードマップについて、教えていただけることはありますか?

マキネン:
(ハードウェアと同じように)ロードマップは、皆さんのニーズに合わせて決定しています。いま私たちの顧客で最も多くを占めているのは、自動車や航空宇宙産業です。彼らがVarjo製品で何かをしたいと考えているのであれば、私たちはそれに耳を傾け、何をすれば良いのかを常に考えています。

もちろんVarjo Aeroのように、産業向けを意識したものだけではありません。コミュニティから「明るすぎて、黒が少し灰色っぽくなってしまうことがある」というフィードバックがあったので、明るさを簡単に調整できる機能を導入しました。また、使いやすいPPD(瞳孔間距離)のセレクターを作ったこともあります。これはコミュニティが求めるものを作ったいい例です。

では、次はどうなるのでしょう? 素晴らしいことに、私たちは非常に速いサイクルで仕事をしています——つまり、思いついたことをすぐに実行に移すことができるのです。ハードウェアは比較的時間がかかりますが、ソフトウェアは非常に速い。時間が経つにつれてどんどん良くなっていきますよ。

「最高の没入感」へのこだわり、ハード・ソフト両面から攻める

——最近、Metaは将来的のVRデバイスを実現する技術についての発表を行い、HDRや20/20の解像度、焦点距離など、光学的な課題を挙げています。Varjoが考える、将来のVRやMRのためのハードウェアの課題は何でしょうか。

マキネン:
私たちのビジョンは、メタバースが“本当に”実現し、現実とバーチャルを違和感なく融合させること。そのためには、没入感とコンピューティングパワーが最も重要なドライバーになると思っています。メガネのような非常に小さなデバイスに、全てを詰め込もうとはしません。どうすれば没入感を高められるか、体験する人の感動を減らさないか、という観点から研究を続けています。軽量化する代わりに没入感を減らすようなことは考えていません。没入感が最も重要なのです。

装着感や快適性は没入感を高める要素のひとつです。XR-3はVRやARの「定番」でこそないものの、最もハイクオリティな体験がどのようなものかを示していると思います。そしてMRのデバイスとして見ると、いわゆる「光学シースルー」のデバイスでは没入感は非常に限られています。局所的な合成は、まだ画質が悪く視野が狭い。また、一体型のMRデバイスの場合、コンピューティングパワーが限られてしまいます。より高いレベルの製品を作る方法を見つける必要があるのです。


(画像:Varjo)

マキネン:
没入感のために重要なのはコンピューティングパワー、そして人間の目レベルの解像度です。その答えのひとつが、私たちが提供し始めたクラウドサービス「Varjo Reality Cloud」なのです。将来的にはより多くの計算処理がクラウド上で行われるようになると考えています。そのため、私たちはAWS(Amazon Web Services)と密接に協力して、Varjo Reality Cloudに取り組んでいます。多くの資金と時間を投資していますし、積極的に新機能を市場に投入しています。

Varjo Reality Cloudで最も重要なのは、コンテンツをストリーミング配信できることです。人間の目レベルの解像度のVRコンテンツを、ストリーミング配信できるんです。圧縮率も高く、これはNetflix等よりもはるかに効率的な仕組みです。

Varjo Reality Cloudにはユニークな機能も組み込まれています。例えば「Foveated Transport」は、フォービエイテッド・レンダリング(※)を活かした機能です。アイトラッキングを利用して、どのピクセルを優先的に描画するかを決定しています。Foveated Transportを使えば、人間の目の解像度のコンテンツを、遅延なくストリーミングできます。クラウドコンピューティングをVRでうまく使えるわけです。

(※フォービエイテッド・レンダリング:ユーザーの視界の中心に近ければ近いほど高解像度で、遠ければ遠いほど低解像度で描画することで、レンダリングリソースの最適化を図る手法、またはそのための技術のこと)

——遅延の少ないVRのクラウドレンダリングは素晴らしい技術ですね。Foveated Transportにおいて、ユーザーとの通信の遅延はどれくらいを目標にしているのでしょうか? 今もなお技術開発が進められているところだと思いますが。

マキネン:
実は、もう目標に到達しています。VRヘッドセットで見たときに目立った遅延が感じられないことを目指しており、概ね10ミリ秒から20ミリ秒の間であれば問題ありません。アイトラッキングによってユーザーがどの場所を見ているかが分かるので、先回りして遅延の問題に対処できるのです。また、次にどこを見るかという動きも予測することができます。

Varjoは「世界のクラウドストリーミング」を目指す

——Varjo Reality Cloudについて、より詳しく聞かせてください。既に利用が進んでいるとは思いますが、どのような場所で使われているのでしょうか?

マキネン:
Varjo Reality Cloudは自動車産業ですでに使われはじめています。Autodeskのツールでフォトリアルな自動車の3DCGを作り、それをストリーミングする、といった流れですね。このように、フォトリアルな3DCGをクラウドからストリーミングするのは「世界のストリーミング」の最初の一歩です。

世界で最も技術要求のハードルが高いユーザーは、日本とドイツの自動車技術者たちです。そのような人たちを満足させることができれば、それこそが、すべてをストリーミングする完全なメタバースへの第一歩になると思っています。

——「世界のストリーミング」という言葉はとても興味深いです。最初にVarjo Reality Cloudのティザームービーを公開した際、メインとなっていたテーマは、VRやARで世界を忠実に再現し、遠隔地に行ったかのような状態を再現する「テレポート」でしたよね。これはまさしく「世界のストリーミング」です。

マキネン:
ええ。Varjo Reality Cloudがストリーミングにおいて革新的である理由は、ストリーミングする対象が“世界”そのものであるという点です。現実や空間全体を、本当に“すべて”をストリーミングしているのです。これは技術があってこそ初めて可能です。私たちはこの技術をとても誇りに思っていますし、今年中にこの技術を使ったアプリケーションが登場することを楽しみにしています。

マキネン:
また、Varjo Reality Cloudには、2022年の後半にUnityとUnreal Engineのサポートも追加する予定です。そうすれば、UnityとUnreal Engineのファイルをローカルに保存する必要はもうなくなります。クラウドからストリーミングすればいいのです。これらは完全な世界のストリーミングになるでしょう。リアルとバーチャルをシームレスに融合させるための没入感の実現と、コンピューティングパワーの向上。この2つが、私たちVarjoの研究開発における大きな指針です。

「テレポート」については、具体的な方向性と構想に焦点を当てるため、いくつかの企業と密接に連携して進める予定です。日本の企業とも一緒に取り組みたいと思っています。日本の企業もクローズド・サービスに参加していただければ、お互いにとってとても良い結果をもたらすはずです。

——Varjoの公式サイトにはパートナー募集のフォームもありますよね。提携といえば、最近ではブレイン・コンピュータ・インタフェースを手がけるOpenBCIと提携しています。

マキネン:
OpenBCIが提供している「Galea」は本当に面白いデバイスだと思います。ユーザーインターフェースの未来を象徴するような製品で、ユーザーの心を読み取ることができるのです。この提携の面白いところは、彼らはもともと別のVRヘッドセットでの提携を模索していたのですが、丸一日続けてテストした結果、「他のVRヘッドセットよりも、Varjo Aeroのほうが良い」という結論になったそうです。これはVarjo Aero以上にハイエンドなVRヘッドセットが作られていないということでもあります。

マキネン:
OpenBCIとVarjoは、ハイエンド同士で完璧にマッチしていたのです。ただし、これはあくまで彼らの製品であることに留意してください。基本的には「Varjo AeroにOpenBCIのブレイン・コンピュータ・インターフェースを追加し、それをトータルパッケージとして販売している」わけです。従来の頭部固定ストラップを外し、独自のストラップを入れているのです。VarjoはOpenBCIとの緊密な協力関係を築いており、一緒に仕事ができることに、本当に興奮していますよ。

世界最高のフィードバックがもらえる国、日本

——組織の話についても聞かせてください。今のVarjoはどれくらいの規模なのでしょうか?

マキネン:
Varjoは成長していますし、かなり国際的なチームになっています。フィンランドに約180名、ドイツ、イギリス、その他の国に数名います。そしてアメリカにも30人ほど。フィンランドのヘルシンキには、ハードウェアのプロトタイピング用ラボがあり、そこで製品をトータルに組み立てることができます。しかし、私たちは工場を持っていません。中国に工場を持っているパートナーがいて、そこで生産したうえで、ロジスティクスやその他諸々のことを行っています。

そして、私たちはパートナーシップを重視しています。国際的なパートナーは非常に多いと思います。Varjo Reality CloudはAmazon Web ServicesやNVIDIAと提携していますし、UnityやEpic Gamesも、私たちにとって非常に重要な存在です。新しい種類のソフトウェア・パートナーも増えてきています。AutodeskはVREDやAutoCADをローカルにインストールすることなく使えるようになりました。リンクを貼って、ヘッドセットをつければ、目の前に3DCGを見ることができるのです。

私たちがやりたいことの1つは、最高峰のVRやARの使い方をシンプルにすることだと考えています。Varjo Reality Cloudはとてもシンプルです。インストール方法等を詳細に勉強する必要がないので、この種のソフトウェアをより簡単に使えるようになりました。リンクを別の国に送り、それをクリックしてもらうだけです。すぐに役員やマーケティング担当者、デザイナー、エンジニアが、ヘッドセットを装着して、同じものを見ることができるのです。

——「Webサイトは早い段階で日本語に対応した」と話していましたが、Varjoにとって日本市場はどのように捉えられているのでしょうか。

マキネン:
とても重要です。私たちにとって2番目に大きな市場です。フィンランドと日本はとても近い関係にあると思います。私たちは似たような文化を持っており、日本人と仕事をすることはとても楽しいんです。加えて日本のユーザーは非常に要求が高く、同時に先進的です。それゆえ、私たちの製品に対して多くの素晴らしいフィードバックをいただいています。Varjoのように世界最高の製品を作りたい会社が、最高の製品を作れるよう、背中を押してくれるのです。

そのため、私は日本語でお客様と話し、皆さんの声を聞き、その声を研究開発に反映させ、次に何をすべきかを理解するために、この場にいるのです(※編集部注:本インタビューは日本国内で行われた)。日本市場を見れば、日本企業がどのようなイノベーションを起こしているのか、未来を予測することができると思います。日本市場には、ハイテク技術による革新と導入の伝統があり、私たちはそれを理解し、追随したいと考えています。

——マキネンさんは日本にはよくいらっしゃるのですね。

マキネン:
以前は日本に住んでいたんですよ! フィンランド大使館に勤めていたんです。だから、日本には何度も来ていますし、できるだけ頻繁に来ようと思っています。日本のお客様をVarjoの本社にお招きしたこともあります。このように親密な関係を築くことは、本当に重要です。私たちは最高の製品を作りたいし、それはユーザーのニーズを本当に理解することでしか作れないからです。

(※今回のインタビューは英語で行ったが、雑談は日本語。マキネン氏は日本語も堪能だ)

——マキネンさんから見て、エリアごとにVR市場の違いはありますか? 例えば北米、米国、欧州、アジアの間でもかなり大きな差異があるように思います。

マキネン:
米国では航空宇宙分野での利用が多く、消費者向けのフライトシミュレーターも需要があります。ヨーロッパでも同様ですね。もちろん、自動車メーカーもたくさんありますし、自動車や機械の設計でも多々使われています。

日本は自動車産業や重工業の分野で、このようなエンジニアリングや設計が盛んです。それぞれ特徴があると思いますが、日本のお客様が世界で最も要求の厳しいお客様だと思います。映像のクオリティや没入感、そしてコンピューティングパワーに対する要求が非常に高いのです。そして、VRではこれらのすべてが一体となる必要があります。

いつか、Varjoのユーザーミーティングを開催したいですね。私たちのユーザーや提携企業すべてを集め、お互いに議論するような。

——最後に、マキネンさんから日本の皆さんへのメッセージをお願いします。

マキネン:
最初に、日本のユーザーとコミュニティに大きな感謝を伝えたいと思います。先ほども申し上げたように、日本は私たちにとって非常に重要な市場であり、さらに貢献していきたいと考えています。一緒に未来を作り、メタバースを作りたいのです。

フィンランドと日本は非常に緊密な協力を行い、そのコミュニティが一体となる必要があると思います。日本のユーザーコミュニティで、プロフェッショナルと消費者の両方から、継続的なサポートとフィードバックをいただいていることに、とても感謝しています。私たちはこれからも日本とのコミュニケーションを続けていきます。(了)

(インタビュー・執筆: 久保田瞬 / 編集: 水原由紀 / 協力: 株式会社エルザジャパン


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