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業界動向 2023.01.17

米陸軍の「HoloLens 2」追加購入を議会がストップ

1月12日、アメリカ合衆国議会は陸軍による4億ドル(約500億円)の資金調達要求を拒否しました。これは「HoloLens 2」6,900台分を追加購入する名目で計上されたもの。米メディアによれば、「却下の理由は、直近の実地テストにて8割を超える参加兵士が頭痛、眼精疲労、吐き気などの”任務に影響する身体的な負担”を訴えたことである」と報じています。

大規模資金投入の戦闘MRシステム

米陸軍は、2021年より「Integrated Visual Augmentation System (IVAS)」と呼称されるシステムの導入を進めてきました。本システムには、実戦に向けて軍用にカスタマイズしたマイクロソフトのMRヘッドセット「HoloLens 2」を用います。

2021年には、マイクロソフトと契約期間5年(5年間の延長オプション付)、契約金額が最大218.8億ドル(当時のレートで約2.4兆円)の大型契約を結び、実際の戦闘配備に向けた開発やテスト運用などを加速させていました。今回の米議会による新たな資金調達拒否の決定は、「IVAS」本格導入の動きを鈍化させると考えられます。

兵士の8割が不快な症状を訴える、改善版のための予算を要求

米メディアBloombergによると、資金追加調達の却下理由は2022年6月に行われたテストの評価によるもの。陸軍は70人の歩兵部隊兵士を対象に、72時間の戦闘シナリオの中での「IVAS」運用テストを行いました。その結果、80%以上の兵士が「HoloLens 2」使用によって頭痛、眼精疲労、吐き気などの”任務に影響する身体的負担”を訴えたとのこと。この心身症状は「HoloLens 2」装着から3時間以内に現れたようです。

一方、米陸軍は要請拒否を受け、4,000万ドルに縮小した資金調達要求を実施。米議会はこれを承認しています。得られた資金は、前年度の予算から確保した1億2,500万ドルとともに「IVAS」新モデルの開発に当てられます。米陸軍当局によると「ユーザーインターフェースと利便性を改善するため、分散カウンターウェイトを備えたより薄型のヘッドアップディスプレイを開発する」とのことです。

なお本記事執筆時点で、本件に関するマイクロソフトの正式なコメントは明らかにされていません。

(参考)Road To VRBloomberg


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