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業界動向 2022.05.26

UGCや広告に求められるユーザーのモラル: 「Roblox」でキム・カーダシアンを冒用した不適切広告から考える

ユーザーがオンライン上のプラットフォームに自作のコンテンツ(UGC:User Generated Content)を投稿し、それを他のユーザーが楽しむことはよく行われています。UGCは多様なコンテンツの創作・利用・流通を促し、人々に豊かな生活を与えてくれます。また、クリエイターが生活の糧を得る手段としても重要な役割を果たすようになっています。

他方、UGCの中には、残念ながら違法・有害なものも見受けられ、プラットフォームが膨大なUGCを一律にチェックしてそれらを削除等することも困難な場合があります。Web上のバーチャル空間に多数のユーザーが参加し、相互にコンテンツの利用を行うプラットフォームにおいても同様です。


 

Robloxで起きた不適切なUGCの流通

近時、Z世代の若年層がユーザーの大半を占める、世界的に利用されているオンラインゲーミングプラットフォーム「Roblox(ロブロックス)」で不適切なコンテンツが表示されたとして、物議を醸しました。Robloxはゲームプラットフォームなので、ユーザー自身が作ったワールド(=バーチャル空間)を自由にアップロードすることができます。

ゲーム関連メディア「Polygon」の2022年4月18日付け記事によれば、米国の著名人であるキム・カーダシアン(以下「カーダシアン」)の6歳の息子がRobloxで遊んでいたところ、カーダシアンの泣き顔の画像が含まれるRobloxのゲームの広告がポップアップで表示され、それをクリックすると、そのゲームにはカーダシアンの性的な映像が含まれている旨の記述が表示されたそうです。

運営元のRoblox社によれば、その映像がRoblox上で閲覧可能となっていた事実はないそうです。また、その広告の記述も直ちに削除。該当する広告を閲覧したユーザーも、極めて少数だったとのことです(前掲のPolygon記事を参照)。

本件は「極めて不適切なUGCとその広告が、若年層を中心に利用されているプラットフォーム上で流通した」という点で重大な問題のある事例であるといえます。衝撃的・煽情的・欺瞞的な広告によって不当にユーザーを誘導しようとする不適切な広告(いわゆる「クリックベイト」)であることに加え、重大な問題として次の2点を指摘する必要があります。

・カーダシアンの権利や利益が著しく害されたこと
・青少年の健全な育成にとって有害な情報が、若年層を中心とするプラットフォームで流通したこと

被害者に対する権利侵害等

 言うまでもありませんが、カーダシアンが自ら望まない形で泣き顔の画像をオンライン・プラットフォーム上に表示され、また、極めて不適切な内容の記述において氏名を冒用されたことは、その内容に照らし、カーダシアンの肖像権、名誉、プライバシー等の人格的な利益を侵害する違法なものである可能性があります。加えて、ゲームの広告として顧客であるユーザーを誘引するためにカーダシアンの肖像等が利用された点において、パブリシティ権侵害等の問題も生じる可能性があります。

また本件では、広告の内容に反し、カーダシアンの不適切な映像がプラットフォーム上に流通した事実はなかったとのことですが、万が一本人の望まない性的な映像がアップロードされた場合には、一般の権利侵害情報がインターネット上に流通した場合とは異なる取扱いがされているため、本人及びプラットフォーム運営者双方にとって注意が必要です。

知的財産権や肖像権、名誉・プライバシー等の権利侵害情報一般がインターネット上に流通した場合、被害者はプラットフォーム運営者に対し、権利侵害情報の削除等を求めることができます。削除申請を受けたプラットフォーム運営者は、その情報を投稿した者(=発信者)に対して削除に同意するかどうかを照会し、7日を経過しても発信者から削除に同意しない旨の申出がなかったときは、発信者から損害賠償を受けることなく削除を実行することができます(プロバイダ責任制限法3条2項。※同法の正式名称は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」)。

これに対し、性的な画像等を撮影対象者の同意なくインターネット上で公表された場合については、いわゆる「リベンジポルノ防止法」(正式名称は「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」)に基づき、より迅速に削除等を行ってもらえる場合があります(同法の概要については警察庁ウェブサイト等を参照)。

すなわち、同法の「私事性的画像記録」に該当する性的な画像等の電子データがインターネット上で公表され、名誉又は私生活の平穏が侵害された場合、被害者(撮影対象者)は、プラットフォーム運営者に対し、その電子データの削除等を求めることができます。そして削除申請を受けたプラットフォーム運営者は、その発信者に対して削除に同意するかどうかを照会し、2日を経過しても発信者から削除に同意しない旨の申出がなかったときは、発信者から損害賠償を受けることなく削除を実行することができます。

つまり「私事性的画像記録」の場合、発信者に対して削除に同意するかどうかを照会してから削除が可能になるまでの期間が、7日から2日に短縮されているのです。したがって、被害者としては、不適切な情報がアップロードされていることを発見次第、速やかにプラットフォーム運営者に対して削除申請をすることが大事です。プラットフォーム運営者としても、削除申請等によらず権利侵害の事実を認識した場合に速やかに削除を検討すべきことはもちろん、削除申請を受けた場合の取扱いの違いに留意することが必要です。

なお「私事性的画像記録」等のわいせつな情報の公表等をした者(投稿者)は刑事罰の対象になることがあります(例えば、リベンジポルノ防止法3条)。
 

青少年の健全な育成にとって有害な情報の流通

 有害な情報によって精神的・道徳的・身体的な影響を受けやすい子どもが触れる広告の内容は特に注意が必要です。この観点から、例えば「子どもに影響のある広告およびマーケティングに関するガイドライン」(公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)が公表され、これをもとに事業者等において自主基準を策定することなどが期待されています。

同ガイドラインでは、「特に暴力的な表現や過度な性的表現は、子どもの発達段階・年齢によっては負の影響を及ぼすことになるため十分配慮する」べきことが基本原則として定められ、表現自体のほか、広告媒体や時間帯を考慮することが望ましいとされています。
 

UGCにおいて求められるユーザーのモラル

今回、Robloxは、発覚後迅速に問題の情報を削除するなどの対応を実施することができたようです。

本件では、本人と子どもにとって不幸な形で不適切な情報の流通が発覚してしまいましたが、現状、数多くのUGCが投稿されるプラットフォームにおいて、有害な情報が(一時的に)流通してしまう場合があることは残念ながら事実です。本人とプラットフォームの協力による迅速な削除等の対応を継続・実施していくことに加え、投稿するユーザーのモラルが強く求められるところです。若年者を中心的なユーザーとするプラットフォームにおいてはなおさらです。

なお、本件は、近時話題を集めているメタバースのプラットフォームとして世界的に有名な「Roblox」で起きたことではありますが、UGCとその広告に求められるモラルや削除対応等の法的問題は、インターネット上のサービス全般において共通するものです。したがって、本件をメタバース特有の問題として捉え、規制の強化等を議論することには慎重であるべきです。

(※本記事は報道された範囲での事実をベースに作成しているため、なるべく断言を避けて記述しています。また、法的な記述は日本の法律に基づくものです)


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