半導体大手のNVIDIAは、8月10日に行った「SIGGRAPH 2023」での基調講演に合わせて、3Dコラボレーションプラットフォーム「Omniverse」のメジャーアップデートを発表しました。各機能は無料配布中のオープンベータ版(個人向け)で先行利用でき、エンタープライズ向けにも順次提供される予定です。
NVIDIAの「Omniverse」とは
NVIDIAの「Omniverse」は、3Dデザインやデジタルツインのリアルタイムコラボレーションプラットフォームです。異なるツールで作成された、形式の異なる3DデータをUSD形式に変換し、複数人が同一のプロジェクトを操作できます。組織内外のサイロ化を解消し、複雑な3Dコンテンツの制作工程を簡略化できることから、コスト削減や生産性向上が図れます。
(「Omnicerse」サービスページ。出所:NVIDIA)
今回のアップデートはOpenUSDと生成AIに注目
今回のメジャーアップデートによる主要な変化は、「Omniverse Kit の機能改良」と「OpenUSDに対応したAPI連携強化」の2点です。このほか、自社の生成AIアプリ「Omniverse Audio2Face」が多言語サポートに対応し、新しい人物モデル(女性)が追加されたとしています。
Omniverse Kit の機能改良
「Omniverse Kit」は「Omniverse」のコア機能のひとつで、同プラットフォーム向けのネイティブアプリを開発するためのSDK(ソフトウェア開発キット)が集約されています。今回の主要なアップデートは以下の4点です。
- Omniverse Kit Extension Registryで「Omniverse」が持つ600超の拡張機能にアクセスできます。
- 新しい開発者テンプレート・リソース:OpenUSDに対応しました。
- 「Omniverse RTX レンダラー」に3DレンダリングのためのAIノイズ除去機能が追加されました。
- XR開発のための空間フレームワーク:フルレイトレーシングの法人向けXRコンテンツが開発できます。
OpenUSDに対応したAPI連携強化
NVIDIAはファイルフォーマット「USD(Universal Scene Description)」を積極的に採用しており、2023年8月には拡張規格「OpenUSD」の国際標準化を目指す活動にも参加を表明していました。
今回のアップデートで3D制作アプリ「Omniverse USD Composer」や生成AIアプリ「Omniverse Audio2Face」がOpenUSDに対応したほか、新たに4種類のアプリが利用可能になりました。いずれも「Omniverse Cloud」向けAPIを通じて提供されます。
- ChatUSD:USD準拠のPythonコードなどが生成できるコパイロット(質問回答GUI)。
- RunUSD:クラウド上でOpenUSDファイルの互換性を検証できるAPI。
- DeepSearch:セマンティック検索用の大規模言語モデル(LLM)エージェント。
- USD-GDN Publisher:OpenUSD準拠の3Dシーンをブラウザ・モバイルにリアルタイム配信。
NVIDIAは、OpenUSD対応により、他社の生成AIツールとの相互接続を行えるようにするとしました。同社が言及した生成AIツールは「Wonder Studio AI」「Inworld AI」などで、現時点でもOpenUSD形式のデータを「Omniverse」にインポートできます。「Adobe Firefly」に対応したAPIも開発予定とのことです。