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メタバース最新動向 2023.03.09

メタバースで新車が買える!? 日産×東京日産の実証実験「NISSAN HYPE LAB」が6月30日まで一般公開

日産自動車と日産東京販売がXR/メタバースを活用した車両販売の実証実験「NISSAN HYPE LAB」を3月8日から6月30日までの期間限定で一般公開します。3月3日にグローバル本社で行われた内覧会の様子を、ベテランガジェットライターの武者良太氏がレポートします。


(提供:日産)

これまで日産自動車株式会社(以下「日産」)は、多方面でメタバース/XR技術を用いた取り組みを続けています。車両開発段階におけるデザイン領域でのVR活用、生産現場でのMR活用、リアルとバーチャルを融合しドライバーが見えないものを可視化するInvisible-to-Visible技術、VRChatを用いた生活者とのコミュニケーション・PRなどです。

その日産が、自動車販売会社である日産東京販売株式会社(以下「日産東京販売」)とともに、XR・メタバース技術を用いた車両販売にチャレンジします。その可能性を探る実証実験「NISSAN HYPE LAB」が、3月8日から6月30日までの期間限定で開催されます。

日産(Japan-ASEANデジタルトランスフォーメーション部)の山口稔彦氏によれば、「クルマ」の購買行動もまた、コロナ渦を経て変化しており、場所や手段にとらわれない購入サポートが求められています。平日は深夜しか時間がとれず、週末は家族サービスで、初めていくディーラーは敷居が高い、と感じている方もいるようです。新車購入も1~2回の商談で成約する方が増えており、従来のように何度もディーラーに通って車種を比較検討したり、グレードやカラー、オプションを設定したりしなくなっています。


(提供:日産)

「NISSAN HYPE LAB」は、自分の余暇時間で訪問できて、気軽に相談できるバーチャルショールームを提供し、その価値を測る実証実験です。

協力会社と共に開発したメタバースプラットフォームに、「自動車ショールーム」と商談用の「パーソナルルーム」が用意されています。指定した車両のインテリア・エクステリアの色を変更できる「3Dシミュレーター」や、選択した車両の走行イメージを視聴できる「360度ドライビングビュー機能」も備えます。サービス内で購入契約も可能です(地域限定。対象外エリアの方には地元ディーラーを案内)。

新技術に興味のある方に目を向けてもらうなど、潜在ニーズの掘り起こしが期待されます。たとえば、出張中の家族とメタバースで待ち合わせて、詳しい話を聞いてそのまま契約するといった、自動車選びの新スタイルが生まれるかもしれません。

スマホでもWebブラウザからアクセスできる


(提供:日産)

「NISSAN HYPE LAB」は、高品質グラフィックを制作できるゲームエンジン「Unreal Engine 5」を用いて開発されました。Webブラウザでアクセスでき、高精細な車両の描写ができるのもポイント。レンダリングはクラウドサーバー側が担当することで、GPU未搭載のビジネスノートPCでも、スマートフォンでも大丈夫です。


(撮影:武者良太、以下同じ)

NISSAN ID(日産グループ共通ID)を用いて「NISSAN HYPE LAB」にアクセスすると、最初にアバター作成画面が表示されます。ソーシャルVRのトレンドとは異なり、現実の人間の姿に寄せたデザインです。

実証実験中は、フェアレディZ(スポーツカー)、サクラ(軽BEV)、エクストレイル(SUV)、アリア(SUV EV)を展示。車両をタップ(またはマウスポインタで選択してクリック)すると、選択した車両の閲覧モードに変わります。車両前にアバターを立たせて記念撮影。撮った写真をSNSでシェアできます。


(提供:日産)

フロア内にはバーチャルスタッフが在席(営業時間は11:00-20:00)。近寄ることでボイスチャットかテキストチャットで会話でき、操作方法なども質問できます。

カーライフアドバイザーと商談、見積、契約まで

パーソナルルームのなかでは、日産東京販売のカーライフアドバイザー(ディーラーの営業職)とも話せます(要事前予約)です。アバター接客のトレーニングプログラムに參加した9名が対応します。


(提供:日産)

大きなディスプレイにカーライフアドバイザーのPC画面を共有表示することで、ボディカラーの選択やオプション設定について相談したり、費用見積や新車の電子契約も結べます。

ドライブしている雰囲気も味わえる

「パーソナルルーム」に隣接する「3Dシミュレーター」は、車両のエクステリア(外観)とインテリア(内装)をじっくり見られるスペースです。時間帯を「昼」または「夜」に設定して、車両イメージの変化も確認できます。

インテリアは運転席と助手席に座って確認できますが、後部座席を振り返って見ることができないのは残念でした。シートアレンジが確認できるモードも追加希望です。これらの点には改善を期待します。


(提供:日産)

「3Dシミュレーター」はコンフィグレータ(編注:注文仕様に応じた製品構成イメージの出力)としても使えます(サクラとエクストレイルに対応)。製作した車両は3台まで保存可能。「360度ドライビングビュー機能」でも使えて、雄大な景観のなかを走るアニメーションが見られます。運転席からのビューも選択できます。

懸念はあれど期待の実証実験


(提供:日産)

内覧会で感じた懸念は他にもあります。レンダリング解像度の低下と、スタッフの在席時間です。

当日説明によれば、「NISSAN HYPE LAB」には同時に100人まで入室可能とのことですが、ゲスト/プレス向け通信回線の遅延なのか、レンダリングサーバー側の負荷なのか、低ビットレート状態の映像が頻繁に表示されてしまいました。このままでは「Unreal Engine 5」を用いたメリットが失われかねません。

また、夜20時までスタッフが在席するため、実店舗の営業時間(18時まで)と比べて2時間も余裕がありますが、平日深夜にしかプライベートな時間がない人からすると、まだ物足りないところがあるでしょう。潜在ニーズ獲得のためのチャレンジとして、曜日限定でも深夜営業に挑んでほしいと感じました。

とはいえ、今回はあくまでも実証実験です。開催終了(6月30日)までに寄せられた意見をもとに、日産は「新しいテクノロジーを取り入れながら正式ローンチを目指し、ユーザーが求める様々な購入スタイルをサポートしていきたい」と考えているそうです。

自動車ユーザーにとっても、ブラウザベースのメタバース空間で、「欲しい・買おう」というモチベーションが湧くのか、自分自身で体験できる面白いチャンスだといえます。

NISSAN HYPE LAB実証実験ページ
http://www.nissan.co.jp/HYPELAB/

(執筆:武者良太、編集:笠井康平)


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