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テック 2023.11.29

Apple「Vision Pro」の製造原価は「Meta Quest 3」の4倍以上か——中国アナリストが推計

中国深圳市の投資アナリスト、Wellsenn XR Technologies(维深信息技术)が、「Meta Quest 3」やApple「Vision Pro」の製造直接原価(部品別)を推計しています。Wellsennによれば、「Vision Pro」の原価総額は「Quest 3」の4倍以上。内訳の多くはディスプレイに使われているマイクロOLEDや、独自開発のチップセットに充てられていると推定しています。


(出所:Upload VR)

Wellsenn XR Technologies(以下:Wellsenn)は、元・投資アナリストの何万城氏が設立した市場調査会社です。XR産業の調査レポートを多数公表しているほか、これまでにもMeta「Quest 2」や「PICO4」など主要なVR/ARヘッドセットの製造原価を独自に推計しています。

Vision Proの原価総額は「Quest 3の4倍」?


(Meta Quest 3とApple Vision Proの直接原価総額。出所:Wellsenn XRの推計をもとにMogura VRが作成)

Wellsennによれば、Apple「Vision Pro」の直接原価は、総額で1,726ドル(約26万円, 2023/11/28時点)。「Meta Quest 3」の430ドル(約6.4万円)と比べて4倍に達します。

「Vision Pro」は3,499ドル(約52万円)で発売予定で、製造原価率は少なくとも49%以上。対する「Quest 3」(128GBモデル)は499ドルで発売されており、製造原価率は少なくとも86%以上と予想できます。したがって、Metaはこの製品でほとんど利益を得ていない、もしくは損失を出している可能性があります。

Meta Quest 3の原価内訳(推計)


(Meta Quest 3の原価内訳(部品別)。出所:Wellsenn XRの推計をもとにMogura VRが作成)

「Quest 3」の原価内訳を部品別にみると、「チップと冷却(Chips & Cooling)」カテゴリーが152ドル(約2.2万円)と最高額です。Wellsennによれば、このうち90ドル(約1.3万円)はクアルコムのチップセット「Snapdragon XR2 Gen 2」の費用であるとのこと。

続いて費用の高いカテゴリーは、LCDディスプレイ2枚を含む「ディスプレイ」や、パンケーキレンズ2枚を含む「レンズとIPD」です。組み立て費用は30ドル(約4.4千円)と推計されています。

Apple Vision Proの原価内訳(推計)


(Apple Vision Proの原価内訳(部品別)。出所:Wellsenn XRの推計をもとにMogura VRが作成)

「Vision Pro」の原価内訳を部品別にみると、「マイクロディスプレイ(Microdisplays)」カテゴリーが700ドル(約10万円)と最も高額です。Wellsennによれば、このうち350ドル(約5万円)がソニーのマイクロOLEDディスプレイの費用であるとのこと。

続いて費用の高いカテゴリーは、Appleが独自開発したチップセット「M2」「R1」などを含む「チップと冷却」や、パンケーキレンズ2枚を含む「レンズとIPD」です。製品構造が複雑なため、組み立て費用は130ドル(1.9万円)に達すると推測されています。

デバイス普及の鍵は、部品供給の安定・拡大か

Wellsennの推計から、XR/メタバース産業の基幹製品であるヘッドセットは、その製造費の多くをディスプレイや半導体、レンズなどが占めていると分かります。

ヘッドセットメーカー各社は、人気タイトルの誘致や開発者向けサポートに注力する一方で、チップセット開発の内製化や、パートナー企業との提携を進めています。関連部品の安定供給と規模拡大が、今後もXRデバイス普及のキーポイントになると見られます。

なお、Wellsennの推計金額は、ハードウェアの部品調達と組み立てにかかる直接原価に限られ、間接費を含みません。また複数年契約などによる値下げで、実際の調達価格が推計値とは大幅に異なる可能性もありえます。

(参考)Upload VR, 深圳市增强现实技术应用协会

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