大成建設株式会社が、建設計画における業務効率化を目指し、「建設承認メタバース-CONSTRUCTION CONTRACT」を開発します。BIMデータから竣工イメージの3D空間を制作、議事録などの各種データを一元管理。従来の紙の図面や、目視確認を主体としたワークフローの刷新を狙います。
大成建設によれば、このシステムは同社が進める「生産プロセスのDX」の一環で開発されます。日立製作所グループ3社(株式会社日立コンサルティング、GlobalLogic Japan株式会社、株式会社日立社会情報サービス)との共同開発です。9月8日にはイメージ動画を公表しました。
(出所:大成建設)
建設計画における「承認」業務の効率化を目指す
大成建設によれば、建設事業の設計工程における手戻り・工程の再調整を減らすには、「関係者相互の認識の相違をなくし、速やかな合意形成につなげるために情報の一元管理」が重要です。一方、実際の施工現場には、IT人材不足や紙図面・目視確認などの業務慣習といった、多くの改善すべき課題がありました。
(紙図面を主体とした、従来の業務風景イメージ。出所:大成建設)
BIMデータ起点に各種データを統合管理
そこで同社は、BIMデータに意匠・構造・設備などのデータを統合し、竣工イメージの3D空間を制作。発注者や施工主、施行者といったプロジェクト関係者が共有し、要求の整理やディテールの理解を行いやすくします。
(発注者と施工主が3D映像を視聴しながら会議を進める将来イメージ。出所:大成建設)
また、イメージ動画には、関係者への説明や仕様決定といった、「建設承認」を得る過程で、オンライン通話やクラウドサービス、決裁システムを活用する場面も描かれています。
(サービス内でオンライン通話・録画が行える。出所:大成建設)
同社によれば、このシステムは合意形成に必要なデータや建設承認に至る議事録などを一元管理することで、建築プロジェクトにおける確定情報を明確化。竣工イメージの早期実現を進められるとのことです。
建築DX分野で進む、3DCGとXR活用
建築業界では、費用膨張や工期遅れが長らく課題とされています。国土交通省は、予算超過の一因が「公共建築事業の発注フローにおける設計・積算段階の手戻り」であると指摘しています。一例として、オーストラリアのシドニー・オペラハウス建設事業では設計の修正・変更が相次ぎ、設計費は関連予算の10%にも達したうえ、総費用は当初予算の37.8倍に膨らみました。
これらのロス削減のため、建設プロジェクトの上流工程で3DCGやXR技術を活用する試みがたびたび行われています。今後、国土交通省によるBIMデータの標準化や環境整備が進むなかで、さらなるデータ活用による業務効率化も期待されています。