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開発 2024.03.21

現実とバーチャルをつなぐ作品がズラリ。“空間再現ディスプレイ”オンリーイベント「ELF-SR ViSON」レポ

2月25日、東京の末広町1/3rd Lifeにて、ソニーの空間再現ディスプレイ「ELF-SR」シリーズを活用した展示イベントELF-SR ViSONが開催されました。

「ELF-SR」シリーズは、アイトラッキングセンサーと立体表示システムを組み込んだ「裸眼立体視ディスプレイ」。見ている人の視線を認識し、3Dモデルやバーチャル空間を立体的に表示、現実から覗き込むような体験ができるデバイスです。言わば「立体的に見れてインタラクションできる、バーチャル空間への窓」のようなもの。さらに、XRヘッドセットのように装着の手間はかかりません。

「ELF-SR ViSON」は、このELF-SRシリーズに魅せられた人々が主体的に開催したイベントです。いずれもチャレンジングなELF-SRシリーズを用いた展示が集まっていました。以下、筆者が注目したいくつかの作品を紹介しましょう。

メタバース内にいるアバターを指でつまめる「夢幻スコープ」

ソーシャルVRサービス「Resonite」のワールドと現実をつなぐ、オレンジ(@orange_3134)氏が展示していた「夢幻スコープ」。ワールドの中にいるアバターの方々とはマイクを通じて話せます。「現実空間にいながら他のソーシャルVR内アバターとコミュニケーションできる」という作品は今までにもありましたが、遅延ゆえか会話がしにくいという印象がありました。しかしこの「夢幻スコープ」は遅延が少なく快適。これはResoniteの仕様によるところもあるのでしょうか。

また、外付けのハンドトラッキングセンサーと同期させることで「アバターを指でつまみ上げる」というインタラクションも実現しており、まるで小人たちと戯れる巨人のような感覚になります。このときにアバター側はどう見えているのかとお聞きしたら、「本当につまみ上げられているように、視界が動いています」(オレンジ氏)とのこと。……ということは、Resonite側からも巨人のような人物が見えているという感覚になるのでしょうか? ちょっと気になります。

NPCワークがはかどりそうな「インターナショナルマルチリンガルVketちゃん1号」

バーチャルマーケットを主催している株式会社HIKKY(@HIKKY_Official)のブースにあったのが「インターナショナルマルチリンガルVketちゃん1号」。AIでの自動音声応答技術を組み込んだNPCアバターに話しかけると、その内容に応じて返答をしてくれるシステムです。多言語対応も行っており、そのまま無人店舗の受付で働けるNPCアバターとなりそうです。


(外付けハンドトラッキングセンサーを用いて、アバターをなでることもできます)

液晶タブレット&ペンでたこ焼きを転がして焼いていく「VRたこ焼き」

液晶タブレットを入力デバイスとして、そのプロセスをゲーム化したのがシロフード(@sirohood_exp)氏の「VRたこ焼き」。ELF-SRには生地を流し込んだばかりのたこ焼きプレートが表示されています。そのまま放置しておくと焦げてしまうため、ピックに見立てたペンを液晶タブレットのうえでスライドさせて、たこ焼きをひとつひとつを転がします。

現実のたこ焼きさながらに、感覚がつかめるまではかなり難しかったのですが、慣れてくると気持ちよく転がせるようになっていきます。こうしたELF-SRシリーズと液晶タブレットの相性はかなりよく、他にも様々なコンテンツが作れるのでは? と感じました。

立体視ドライビングゲームを実現した「ELF-“SR20” Racing Simulator」

XRヘッドセットも3Dメガネも使わない立体視ゲームはいくつかありましたが、ハンドルコントローラやレーシングシートのようなオプションを用いてドライビングゲームを仕立ててきたことにびっくり! それがごんびぃー(@GONBEEE_project)氏の「ELF-“SR20” Racing Simulator」です。

ELF-SRシリーズをあえてユーザーの目線の高さにセットするべく、VESAマウントのモニターアームを活用。普段は付属フレームを用いて斜め上から見下ろすように使うことが多いのですが、実は他の角度でも運用できる、と気付かされました。

また、フォトグラメトリとNeRFを使って実車をスキャン、リアルそのものの車体を作り上げています。これなら自分の愛車を表示させることもできますし、大掛かりな機材とはいえ、新しい体験ができるコンテンツ機器としてはコンパクト。大型ショッピングモールなどの開いたエリアでの体験会や、その先は商業展開と、夢が広がるコンテンツです。

透視可能な3Dモデル資料のビューワーに「3Dデジタルアーカイブ」

レーザースキャン/フォトグラメトリ技術を用いて、建築物や鉄道車両を3Dデータ化するビジネスに取り組んでいる株式会社ホロラボ(@HoloLabInc)は、今までに手掛けてきたデジタル保存された3DデータをELF-SRシリーズで見られるビューワーを展示していました。拡大・縮小が自由自在。拡大し続ければ外壁を越え、内部構造を見ることができます。

一部の3Dデータはクリエイターの方が「VRChat」や「cluster」でワールドとして公開を行っており、内部に入り込んで散策できることが魅力。他方でこうした写真や模型では、1:1スケールでは気づけなかった箇所を見て取ることができるという魅力があります。

3台のELF-SR2を連結させた「等身大召喚装置」

ELF-SRシリーズには15.6インチの「ELF-SR1」と、27インチの「ELF-SR2」の2種類があります。しかしそれをも超えるサイズの「ELF-SR」が登場。SRD探検隊が展示していた「等身大召喚装置」は、ELF-SR2を3台連結させ、等身大のアバター(Unityちゃん)を表示することに挑んでいます。

ELF-SR2をそのまま使っているため、ベゼルが太く画面同士の間が切れています。しかし、縦位置×大画面×立体的に見えるUnityちゃんのインパクトは強烈です。またSRD探検隊の方いわく、「遠い位置では普通の2Dのように見えますが、ELF-SR2のセンサーが反応するくらいまで近づくと、裸眼立体視用のビューになります」。実際に運用するとなるとかなり高価な機材ではあるものの、遠くからでも展示を見つけてもらえるというメリットもあるでしょう。

紙面では紹介しきれませんでしたが、「ELF-SR ViSON」には他にも多くの興味深い作品がありました。そして、いずれも「現実と仮想を繋げて、面白い/驚くようなインタラクションを生み出すこと」を重視したものばかり。まさしく、裸眼立体視ディスプレイのELF-SRシリーズを軸としたテック×カルチャーイベントにふさわしいものだった、と言えるでしょう。

(了)


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