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災害発生から「デジタルツイン」活用へ現場はどう動いた?熱海土石流、分刻みの記録

今年7月3日、静岡県熱海市伊豆山で発生した土砂災害は、死者26名(8月30日現在)を含む多数の被害をもたらした。

残念ながら被害を未然に防ぐことはできなかったものの、被害状況を早期に把握し、二次災害を減らすことに役立ったと言われているのが、静岡県が整備していた「点群データによる地域地形情報」だ。

点群データを使った被災地の情報分析は、行政の側の人々だけでなく、点群データを使ったデジタルツインに関わる人々が自主的にネット上に集い、つながり合って行われた部分がある。

通称「静岡点群サポートチーム」は、当時どう行動し、結果どうなったのか? 静岡点群サポートチームにも関わった、Symmetry Dimensions Incが8月24日に開催したセミナーの様子をお伝えする。

同セミナーでは、Symmetry Dimensionsの沼倉正吾CEOをはじめとした、静岡点群サポートチームの関係者が登壇し、時系列に沿って当時の様子を生々しく語った。

Symmetry Dimensions Incは8月24日、「静岡点群サポートチーム」が静岡県熱海市伊豆山土砂災害にどう対峙したのか、に関するセミナーを開催した。


(今回の災害で協力した「静岡点群サポートチーム」の面々)

関係者が続々メッセンジャーに集う

まず、静岡県熱海市伊豆山で発生した土砂災害についておさらいしておこう。

この災害は7月3日10時30分頃に発生したもの。東海地方から関東地方南部を中心に記録的な大雨が発生、その結果地盤がゆるみ、静岡県熱海市伊豆山で大規模な土石流が発生した。その様子を撮影した映像がSNSで拡散されたため、それをみて驚いた人も多いだろう。


(土砂災害の概要について)

静岡点群サポートチームは、この時すでに動き出していた。

最初に動いたのは、静岡県 交通基盤部 建設支援局 建設技術企画課 建設イノベーション推進班長の杉本直也氏だ。

当日は土曜日で、杉本氏は第一報を「病院の待合室のテレビで知った」と話す。

土木技師である杉本氏は「これは大変なことになりそうだ、と直感した」と話す。

徹夜になる覚悟で着替えを詰めて県庁へと向かいつつ、考えたことがあった。それは「VIRTUAL SHIZUOKA(バーチャル静岡)」のデータが被害把握に使えるのではないか、ということだ。

「VIRTUAL SHIZUOKA」とは、静岡県が進めているデジタルツイン整備計画のこと。静岡県内の土地・建物などを3Dスキャンし、オープンに使える「点群データ」として公開して様々な用途に活用しよう、という試みである。

https://www.youtube.com/watch?v=dbRRwQje9Fo

「VIRTUAL SHIZUOKA」解説ビデオ

「当時は下田での災害も大きいと予想されていました。(注:静岡県下田市では、7月1日に大雨により住民に避難指示が出されている)2020年に伊豆東海岸の点群データを取得していたので、そこでは災害対策に点群データを使うだろう、と予測はしていたんです」

杉本氏はそう説明する。

VIRTUAL SHIZUOKAの点群データは、オープンデータとして様々な用途で利用することを前提として作られたものだ。とはいえ元々は、県が土木作業をするためのデータ、それも「災害対策」を主眼に集められたものだ。

ただ、杉本氏は「人の命が奪われる災害で脚光を浴びることを望んでいたわけではなかった」とも言う。

「災害の後に使える想定はしていたのですが、想定していたのは、道路の法面が崩れた場合などに、元々地形がどのような形だったのかをデータと照合することで素早い回復に役立つのでは……と思っていたのです。だから今回のことについては、ものすごく複雑な気持ちです」(杉本氏)

データを取っていたといっても、現状ではそこから「危ない地点を割り出す」ようなことはしていなかった。だから、災害を事前に察知するのも困難だったわけだ。

「本来なら、災害の前にわかるのが一番良かったのでしょう。しかし、起こってしまった。そこから、腰のうえまで泥のなかに浸かりながら対応することになります。そこに土砂が流れ、巻き込まれるのが最悪の事態です。そこで、データを使って二次災害防止、安全対策ができないか、ということが念頭にありました。発生原因のメカニズムを探るなどの目的ではなく、現地のサポートをするのが重要と考えました」(杉本氏)

VIRTUAL SHIZUOKAの点群データ活用については、ネット上にコミュニティが存在する。各自の仕事に絡んで点群データ活用を考える人々が、個人的な関係でつながっていったものだ。彼らは日常的にメッセンジャーなどでやり取りをしており、この日もFacebook Messengerで状況を話し合っていた。

松尾泰晴氏もそんなグループの一人だ。土木の専門家で、現在は3DやIT技術を使った現場効率化について、施工業者や行政などをサポートする業務を行っている。

松尾氏はSNSでシェアされてきた土石流の映像を見て驚き、関係者に連絡した。

そこからFacebook Messengerのグループが立ち上がり、点群データを使った分析が始まる。

7月3日15時41分のことだった。

(災害が起きて約5時間後の7月3日15時41分、Facebook Messengerのグループで、データを活用したサポートチームの連絡網が立ち上がる)

刻々と解析されるデータ、現場判断に「点群からの解析」を提供

Symmetry Dimensions(以下Symmetry)・沼倉氏は、「もしデータがあるなら、そこから現地の状況を把握することができるのではないか、と考えた」と話す。

土石流が起きた直後の段階では、まだ映像がシェアされている段階。現地の正確な場所やその規模は正確に把握されていなかった。そこで、点群のデータから位置の特定と被害状況の推定ができれば……ということから、前述のFacebook Messengerグループが立ち上がった。

一応ここで「点群」とはなにかを解説しておきたい。

点群データとは3D形状を点の集まりで示したもの。スキャンしたデータそのものに近く精細だが、一方でデータ量が多く、処理のために形式変換が必要になることもある。

「当時はSNSの画像くらいで、正確に熱海のどこで被害が発生しているかはわかりませんでした。一方、Symmetry側で、令和元年に作った7TBの点群データを読み込んでいる、ということはわかっていましたので、Symmetryのシステムを見て情報が得られれば……と考えました」と杉本氏は言う。

沼倉氏は「たくさんの写真が共有されてきたので、それが使われた」と話す。杉本氏から土石流の専門家に情報がシェアされ、発生源の特定につながった。するとその地域は、Symmetryが持っていたデータに「ギリギリ入っていた」(沼倉氏)場所であることもわかってきた。

これが16時頃のことなので、ほんの2、30分で位置特定と本格的な点群データ活用まで進んだことがわかる。

(16時01分、データとSNSでシェアされた情報などから大まかな位置を特定)


(公開地図情報と照らし合わせ、現地の様子も見えてきた)

場所がわかってくると今度は別の事実も見えてくる。「造成した場所が問題だったのではないか」という見通しだ。

「Google Mapなどで公開されている過去の情報と照合し、時系列で見ると地形の形が変わっているのはわかりました。なので、まずは発生源をKML(Keyhole Markup Language、地理データと関連コンテンツを格納するためのデータ形式で、Google Mapでも使われている)で共有しました。それが16時40分のことです」

松尾氏はそう話す。


(「盛り土」をした場所ではないか、との情報を確認するため、Google Mapで確認するためのKML情報の共有が開始)

その後、16時57分に現地入りしていた、静岡県・難波喬司副知事より写真が手に入る。


(16時57分、静岡県・難波喬司副知事が現地で撮影した写真が手に入る)

Symmetry側は、点群からの3Dデータをすぐに見られるよう、関係者に対し、同社サーバーへとリモートデスクトップで接続する環境を整えた。ここからさらに、実際に土砂がどのような経路で流れて行ったのかの検証が始まる。それが、土石流発生から7時間以上が経過した18時頃のことだ。30分後には点群サポートチームにそれぞれの専門家も入って話し合いが進み、19時40分頃には、データから崩落の規模と流路の推定ができてくる。

(点群のデータを使った規模・流路推定が続く)

19時48分、そのデータをもとに、災害対策の陣頭指揮を執っていた難波副知事のもとに、崩落規模分析の第一報がもたらされる。このタイミングで、難波副知事をはじめ、対策に取り組む災害対策本部・交通基盤部などの幹部が揃った形でZoomによるミーティングがもたれ、情報の説明が行われた。

(19時48分、Zoomでミーティングが行われ、難波副知事のもとに点群データを元にした崩落規模分析の第一報がもたらされる)

なお、難波副知事は、名古屋大学大学院で土木工学を専攻した、国交省出身の土木関連の専門家でもある。「副知事の頭にも、被災前の(3D)データが取れており、この日のデータと比較できるという発想はあり、何かあったら連絡を……ということにはなっていた」と杉本氏は言う。

さらに翌日、天候が回復すればドローンを飛ばし、そこからの映像で詳細が見えてくるだろう……との観測もあった。

23時24分、国土交通省が2010年頃に航空レーザーで取得していたデータがあることがわかり、改めて土地改変の状況が比較できた。

以下の図の暖色部分が盛られたところで、赤が減っているところだ。同時にデータから簡易な横断図も作られている。

この図から「盛り土の可能性」がはっきりとしてきた。


(23時24分、2010年に国土交通省が作成した航空レーザー測量データとの比較により、造成の様子や規模などのよりしっかりとした推定が得られた)

日が変わって0時4分。これらの図は杉本氏から難波副知事に直接メールで送られたという。難波副知事はこのデータを持って、7月4日朝5時より、現地調査に入った。

7月4日13時、現地からドローンによる動画データが入ってくる。これにより、さらに詳細な情報が得られ、3Dデータも構築される。

(現地でドローンによって撮影された映像から、さらに詳細な3Dデータが制作される)

行政のルールが活用を縛る、被災地のために素早く動ける体制作りを

こうした流れを見ていくと、今回の事例を考える上で重要なポイントが出てくる。

それは、関係者の間で「独自にデータの共有がされていた」「それぞれのツールに習熟しており、作業が途切れなかった」という2点だ。

現地の写真やKMLのように小さなデータはメッセンジャーで直接やりとりされているし、点群データの追加なども、Dropboxを経由して行われている。

松尾氏は「(Dropboxなどは)民間では普通に使っているんですが、公共工事だと使えないツールなどが多い」と話す。

実際杉本氏は、県から支給されたPCではなく、自前のMacBookと回線を使ってやりとりをしていた。点群はデータ容量が多く、USBメモリーなどでのやりとりを考えてもその方が楽だからだ。

とはいえ、これは行政としてはかなり異例なことだ。実際、今回のスピード感は「行政のルール」のままではどうしようもないところがあった。

「たとえば県の職員としてのメールアドレスはあるのですが、そこにメールをもらっても個人用スマホには自動転送できない。週末、職場宛にメールをもらっても月曜の朝までは見れないわけです。個人で別の手段を使っており、『それはいいのか』『ルールに反しているのではないか』というご指摘はいただくのですが、緊急時なので『そうしないとできない』のが本音」と杉本氏は話す。

点群以外でも、今回そうした例はいくつもあった。

たとえば、難波副知事は今回、自分のiPadを使って現地の様子を県のメールで送ろうとしたのだが、ブロックされてしまった。結果的に個人宛のアドレスを使って送ることで解決している。

前述のように、副知事を含む県関係者同士のミーティングも、基本的にはZoomを使って行われた。Zoomは行政で使えない場合も多い。

青山学院大学・地球共生学部の古橋大地教授は、次のように警鐘を鳴らす。

「アカデミックの世界では使用ツールに制限はない。一方、NPOとして連携する場合には、『LGWAN』の問題も含め、セキュアで大変なところがあります。緊急時用のインターネットマシンがある自治体か否かが重要。そうした仕組みがないところは全く機能しません。また、今回のメンバーは、日常から様々なツールを使い慣れていた。普段使っているものしか現場では役に立ちません。わからない人がいれば、そこで作業が止まってしまう。今回のような状況が揃うことは少ない」

LGWANとは「総合行政ネットワーク」のこと。都道府県・地方自治体を結び、行政専用に利用されている。セキュリティ確保の目的から本質的に閉鎖系として設計されているため、迅速に外部とコミュニケーションをとったり、大容量のデータを扱ったりするのが難しい。今回のような用途には向かない部分もある。

今回については、点群データの土木活用について、長く個人的な関係を構築してきたメンバーが集まったから実現した、という経緯がある。

そのため、今回の点群サポートチームの動きには批判もあった。

「属人的なものである」「ボランティア的な活動には問題があるのでは」「行政の活動として、指揮系統を飛び越えたり、個人で連絡を取ったりするのはいけないのでは」


(静岡点群サポートチームの活動については批判的な声もあったという)

そうした声は「甘んじて受け止める」と杉本氏は言う。ここまで見てもお分かりのように、「そうしないと実現できない」ことではあったからだ。なにより、静岡県側はそれをちゃんと理解しており、適材適所で活かしてきた。筆者個人としても、それを外部で批判するのはちょっと筋違いであるように思う。

ただ、前出のように「災害が起きる前に役立てることができなかった」という批判はあるだろう。それも、関係者は受け止めている。「もともと災害後に使われることを想定していたが、人の命が奪われるような災害で脚光を浴びることを望んでいたわけではない」と言う杉本氏の言葉は、偽らざる本音だろう。松尾氏も「現地で復旧にあたっている方々が欲している情報はあったはず。あのタイミングでは現地とつながれなかったけれど、できたことはもっとあったのでは」と振り返る。

ただ、筆者は杉本氏の次の言葉にハッとさせられた部分もある。

「本当に被災県になった時になにができるか? 実はなにもできないんです。遠くのエリアに住むみなさんに助けてもらうしかないんです。だから、データはオープンにする必要がある。そこは土木系としては、すっと腑に落ちた部分です」

現在は多くのツールがある。情報についても、マスメディア以上にSNSが素早く拡散する能力を持っている。だとすれば、緊急時にスムーズに技術とデータを活用する手段は必須のもので、そこにブレーキをかける方がマイナス……と考えるべきではないだろうか。

災害時のために「データライセンス整備」を今やっておくべき

もう一つ、古橋教授は重要な点を指摘する。それが「データのライセンス」だ。

課題は2つある。

まず、緊急避難的にデータを利用する際の課題だ。

「今回のような使い方は正しい一方で、ライセンスとしてはアウトな時があります。でも、でもこれを許せるような世の中にしていかないといけない。アメリカだとクリアーできるのですが、日本だとNG。理由は、欧米の著作権法の中には『フェアユース』と『フェアディーリング』の考え方がある一方、日本では採用されていないからです。早く著作権法を改正してフェアユースを導入してくれれば……と思います。今はちょっと足踏み状態で、残念です」(古橋教授)

そしてもう一つが「オープンデータでのライセンス形態」そのものの課題だ。

現在、日本で行政が作るデータは「官民データ活用推進基本法」により、個人情報に紐づかない情報についてはオープンデータとして扱うことになっている。VIRTUAL SHIZUOKAでの点群データも同様だ。

一方、「官民データ活用推進基本法」に基づくデータは「政府標準利用規約2.0」に基づいたライセンスとなるため、現在はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの「表示 4.0 国際 (CC-BY 4.0)」にすることが推奨されている。

だが、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスは基本的に著作物を前提としたライセンスルールで、「データ」は対象とならない。オープンデータになったものは「著作物」「非著作物」が入り混じる場合が多いため、データとして活用するならば別のライセンス形態が望ましい。

「1つのプラットフォームに閉じるのは良いことではなく、いろいろなプラットフォームに派生する・使われて行くのがいいでしょう。そのためには、多様なオープンデータのライセンスをカバーしていないと広がりが産みづらい。ですからCC-BYだけでなく、ODbL(Open Database License)とのデュアルライセンスであることが望ましい。そのためには政府のお墨付きが大事です」(古橋教授)

古橋教授は「ライセンスは発展途上の課題で、災害時にはその議論はやりたくない」という。筆者も同感だ。

今回の事象をベースに、「他の地域の人々がデータを活用して素早く被災地を助ける」ためのオープンデータ・デジタルツイン環境整備の道のりを築いてほしい。


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