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メタバース最新動向 2023.09.13

中国が「メタバース産業3カ年計画」公表、世界的企業の育成目指す

9月8日、中国工業情報化部(工信部)が、関係4省庁との連名で「メタバース産業の革新的発展に向けた3カ年行動計画(2023-2025年)」を公表しました。イノベーション推進など5方針を基本原則とし、5つの優先課題について、14項目の行動計画を掲げています。同日には、中央政府の公式サイトにも政策の解説が掲載されました。


(出所:維基小霸王, CC-BY-SA 4.0)

同文書では「開発目標」として、2025年までに世界的な影響力を持つプラットフォーム企業を3から5社、関連産業クラスターを3から5つ育成することなどが記載されています。

また、具体的な産業政策として、科学技術・産業特区の設置、知財制度・産業標準規格の改良、関連企業の減税なども行動計画に盛り込まれました。関係5省庁は今後の保護措置として、様々な部門間の連携強化、高等教育機関における人材育成の最適化、国際協力の深化を進めるとしています。

地方政府の行動計画を受けた対応か

中国では、2022年頃から、地方自治体がメタバース等に関する「行動計画」を独自で発表しています。上海市や北京市、鄭州市は3カ年の行動計画を発表したほか、地方政府では浙江省が同様の文書を公表しました。先行文書との関係は不明ながら、中国政府が行政機関レベルで「行動計画」を公表するのは初めてです。

5課題/14項目の行動計画

同文書で優先課題ごとに言及された、14項目の行動計画は以下の通りです。

(1)高度なメタバース技術と産業システムの構築

  • 1.キーテクノロジーの統合と革新を強化する。
  • 2.メタバース製品の供給を充実させる。
  • 3.産業エコシステムの相乗的な発展を構築する。

(2)3次元でインタラクティブな産業メタバースの育成

  • 4.主要産業プロセスのメタバース化の促進を模索する。
  • 5.主要産業における産業メタバースの普及を加速する。
  • 6.産業メタバースの革新的なアプリケーションモデルを模索する。

(3)没入的でインタラクティブなデジタルライフアプリケーションの創出

  • 7.没入的でインタラクティブな消費生活シナリオを普及させる。
  • 8.虚実融合の公共サービスシナリオを創出する。
  • 9.スマートで安全な災害救助シナリオを支援する。

(4)体系的で完全な産業支援の構築

  • 10.産業標準規格の体系を改善する。
  • 11.イノベーション支援能力を強化する。
  • 12.一流のインフラを構築する。

(5)安全で信頼できる産業統治システムの構築

  • 13.メタバースの協調的な統治システムを整備する。
  • 14.安全保障能力の構築を強化する。

周辺分野のテクノロジーにも言及

この文書では、通信技術、セキュリティ、ハードウェア、3Dモデリング、サービス開発といった周辺分野にも言及しています。

  • 通信技術:5G-A/6G、10ギガバイト光回線、FTTR(Fiber to The Room)、衛星インターネット
  • セキュリティ:コンテンツ審査、リスク・違反処理、企業コンプライアンス、情報管理
  • ハードウェア:GPU、センサー、音響部品、ディスプレイ、XRヘッドセット、3Dディスプレイ、ホログラフィック・リアルタイム・コミュニケーション、ブレイン・コンピューター・インターフェース
  • 3Dモデリング:モデリングソフト、レンダリングエンジン、物理シミュレーション、デジタルヒューマン、デジタルツイン、3Dマップ、バーチャル番組制作・放送システム
  • データ処理:人工知能、ブロックチェーン、クラウドコンピューティング、分散型ID、データ資産の流通
  • サービス開発:バーチャルオフィス・教室、バーチャルショッピングモール、災害シミュレーション、産業メタバース、クラウドツーリズム

中国国内では、2023年7月に大手IT企業が業界アライアンス「メタバース同盟」を設立するなど、主要プレイヤーの協調戦略が進みつつあります。今後、行政機関がどのような産業政策を打ち出すのか要注目です。

(参考)中華人民共和国工業情報化部中華人民共和国中央人民政府


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