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開発 2022.08.26

【CEDEC2022】「Unityを用いたPlayStation VR2向けゲーム開発」レポ。開発者向けのPSVR2情報をおさらい

CESA(一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会)が主催するゲーム開発者向けイベント「CEDEC 2022」が、2022年8月23日から25日にかけて開催されています。本記事では2日目に開催された講演「Unity上でのPlayStation VR2向け次世代ゲーム開発」をレポートします。

この講演はGDC2022で行われた「Building next-gen games for PlayStation VR2」を再編集した日本語版の講演です。ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社の江端優介氏から講演が行われました。

Unity上でのPlayStation VR2ゲーム開発

Unity上でPlayStation VR2(PSVR2)用のゲームを開発するにあたって理解すべき、「PSVR2の特徴的な機能」や「PSVR2のためのUnityグラフィックス」、「フォビエートレンダリング」、「Unity上で使えるPSVR2の入力方法」について紹介がありました。

PSVR2の特徴的なスペック・機能としては、4KHDR・120fpsの有機ELディスプレイやアイトラッキング(視線追跡)、インサイドアウトトラッキング、ヘッドセットからの振動フィードバックや3Dオーディオ機能等が挙げられています。これらについては、姉妹メディアMoguLiveで、PSVR2の情報やスペックについてまとめた記事に記載されています。

PSVR2のためのUnityグラフィックス

続いて、PSVR2におけるUnityグラフィックスの機能として、6つの項目が説明されました。これらの機能を利用することで、PSVR2向けに最適化されたグラフィックス表現のゲームを開発できます。

・シングルパスレンダリング:両眼向けの情報を同時に計算することでCPU使用率を削減します。
・ミラービューモード:TV側に表示する内容を制御できます。HMDに表示している映像だけではなく、HMD側とは完全に別の映像を表示できます。
・オクルージョンメッシュ:HMDから見えないものを描画しないようにすることでレンダリング負荷を削減します。オクルージョンメッシュをデプスバッファに描画します。
・レンダリング解像度スケール:要求品質に合わせてレンダリング解像度を調整できます。
・リフレッシュレート:オフスクリーンバッファへの描画とHMDへの描画を異なるフレームレートで動作できます。例えば、60fpsで描画して、120fpsでフレームを再投影することもできます。
・VRモードON/OFF:VRモードとTVモードを切り替えられます。VRモードをオプションにできます。

UnityはPS5のハードウェアをフルに活用するため、PS5向けに「次世代グラフィック・コンテキスト」と呼ばれる新しいグラフィックスコードを開発しています。これにより、開発者がコードを変更せずともパフォーマンスが向上します。PS5のスペースシップデモにおいて、GPU処理が14%高速化、CPUメインスレッド処理が32%高速化しています。

視線追跡に対応してさらなる最適化を遂げたフォビエートレンダリング

PSVR2では、アイトラッキングと組み合わせた「フォビエートレンダリング(またはフォービエイテッドレンダリング)」が利用できるようになります。

フォビエートレンダリングは、人間の眼の持つ「高解像度でものが見れるのは視線の中心とその付近だけであり、視線の中心から離れた場所(周辺視野)では、低解像度でものを見ている」という性質を利用する技術です。アイトラッキングでプレイヤーが見ている場所を検知し、そこから離れた場所の画質を意図的に落とすことで、GPUのパフォーマンスを向上させます。フォビエートレンダリングは、HMDの光学系の詳細な知識と人間の視覚の不完全性を利用することで実現しています。PSVR2はアイトラッキングを行うことで、さらなる最適化を実現しています。

PSVR2の初期プロトタイプでは、フォビエートレンダリングにより最大2.5倍高速化、視線追跡を組み合わせることで最大3.6倍高速化したとのこと。実際のゲームにより近いベンチマークシーンではフォビエートレンダリングにより最大2.1倍高速化、アイトラッキングを組み合わせることで最大2.3倍高速化しました。なおこのシーンには、何百ものメッシュと複数の動的ライトとシャドウ、ビジュアルエフェクト、デカール、ブルームなどが含まれています。

新しい入力手段、視線追跡

PSVR2以前のVRヘッドセットでは、アイトラッキング機能は一部のハイエンドモデルや外部デバイス経由での提供にとどまっており、全てのユーザーが使えるものではありませんでした。しかしPSVR2には標準でアイトラッキング機能が搭載されており、ゲーム開発者は全てのプレイヤーがこの機能を利用することを前提に開発できます。

Unityでは視点の位置と視線角度の情報や瞳孔のサイズ、まばたきの状態を取得できます。例えば、アイトラッキングを用いてオブジェクトを選択したり、視点の位置にあるオブジェクトを拡大表示できます。ゲーム開発者はこれらの情報を利用してさまざまなアイデアを実現できます。ゲームに行き詰まっている状態でプレイヤーがどこを注視しているか分析することで、なぜ行き詰まっているか深く理解できる可能性もあります。また、まばたきではなく「ウインク」したかを調べてゲームメカニクスに利用することもできます。

続いて、新しいVR専用コントローラであるPSVR 2 Senseコントローラが紹介されました。Unityではこのコントローラの全ての機能が利用可能です。例えば、フィンガータッチ機能では、実際にボタンを押さずに触れている状態を検出できます。

これにより、ジェスチャーを検出したり、ゲーム内にプレイヤーの指がどこにどのような状態かを表示することもできます。これにより、プレイヤーが、ボタンの位置を確認するためにわざわざ手元を覗き込む必要がなくなります。また、コントローラからのハプティックフィードバックには、従来の振動形式より繊細な振動が表現可能なAudioClip形式を利用できます。

(参考)CEDEC2022


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