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統計・データ 2019.08.26

集める注目は約2倍、記憶への定着は70%強く 驚くべきARの脳へのインパクト

AR開発のZappar社やマーケティング企業Neuro-Insightらは、ARが脳に与える影響についてレポートを発表しました。ARは他のメディアと比較して非常に高く注意を引くほか、見る者の記憶に強く残ることを実験から立証。広告や人材育成などで、企業にとって大いに活用の余地があるとしています。

本記事はZappar社の公式ブログに掲載された研究レポートをサマリーしたものになります。

6つの課題から見えたもの

研究チームが調査したのは、ARが脳に及ぼす影響です。類似のタスクをARと非ARのグループに分けて実施させ、脳の電気的な活動を調べる手法をとっています。

被験者は18~65歳までの英国のスマートフォンユーザー151人。おおよそ半数ずつ2つのグループに分かれ、以下6つの課題に取り組みます。その際片方のグループはAR版、もう一方はARでない通常のバージョンを体験します。

1.グーグル翻訳: ARバージョン/オンラインにテキスト入力するバージョン
2. 商品のパッケージ閲覧: ARパッケージ/通常のパッケージ
3. ブロック積みゲーム: ARバージョン/通常バージョン
4. IKEAの商品閲覧: ARを使った家具の試し置き/IKEAウェブサイトの閲覧
5. 眼鏡のウィンドーショッピング: ARアプリ/通常のメーカーウェブサイト
6. BBC記事閲覧: ARバージョン/通常のウェブサイト

また異なる刺激に対して脳がどの程度反応しているかの計測には、Steady State Topography (SST)と呼ばれる手法を利用しました。人の注目、感情、記憶といった認知機能を把握するために、脳の電気的な活動を測ります。

課題はどちらのグループもiPadを使用して体験し、その様子は動画で撮影されました。

実験の結果は驚くべきものでした。ARグループと非ARグループの脳の反応には、これまで他のメディアに関する研究では見られなかったほどの、非常に明確な差が見られたのです。その影響を3点説明します。

ARが脳に与える3点の影響

1. より強く視覚的な注目を集める

ARを使ったタスクでは、使わないものに比較してより強く視覚的な注目をひくことがわかりました。複数の認知機能を調べた結果、ARと非ARの差は1.9倍という数値。また調査チームによると、これまでに研究した他のメディアと比べても、ARは高いレベルで注意を集めるということです。例えばTVとの比較では、ARが45%高い注目をひくという結果が出ています。被験者のタイプでは、若年層でより視覚的注目が強くなることもわかりました。

さらにこの差異は、特に感情面を司る右脳の視覚的注目において顕著な傾向が見られました。このことからARの利用は、見たものを記憶することにも強い影響があると言えます。なぜなら感情に対するインパクトの強さは、記憶と密接な関係があるためです。

以上を踏まえると、消費者に強い印象を与えたいメーカーやブランドにとって、AR活用が重要であるという示唆を得られます。

2. ARは脳に”驚き”を引き起こす

2点目は、ARはユーザーに「驚き」を引き起こすということです。神経学的用語で言えば、ARグループは接近/回避の値がより低く計測されました。これは、被験者が刺激に対して近づいたり離れたりしたいという程度を表しています。

「回避」つまり後ずさりする、という行動は、驚きを表す指標にもなります。この結果から、被験者の予期しなかったことがARでは起こっていた(すなわち、驚きをもたらした)ということがわかります。また興味深いことに、「接近」の反応は特に男性で強く見られました。

そして驚きをもたらす、というARの影響から言えるのは、ARが今後も人々の感情に強く訴える経験として存続し続けるだろうというということです。

3. ARにより記憶の効果は70%強くなる

効果的な企業広告にとって、見た人の「記憶に残る」という点は非常に重要です。記憶に残ることで、その後の購買行動等に繋がるためです。

実験から、ARタスクは非ARに比較して70%高いmemory encodingの値を示しました。つまり、より強く記憶に残るということです。なお1の視覚的注目は若年層で、2の接近反応は男性で特に強く見られましたが、この記憶に関してはすべてのグループでARに高い効果が見られました。

この結果から言えるのは、ARに高い広告効果が望めるという将来性です。見る人の印象に強く残る媒体として、今後多くのAR広告がうたれる可能性を持っています。

将来ARはどうなるのか?

このようなARの効果(人を惹き付ける、記憶に強く残る等)も、時間の経過に伴いある程度消失する可能性はあります。例えばインターネットが初めて登場した頃の驚きと、現在とを比べれば分かるでしょう。ARもインターネットのような日常の一部となれば、驚きは失せてくると考えられます。
従って今後、より重要になるのがARコンテンツのストーリー性や内容です。人を強く惹き付けるストーリーを語る、というARの力が、いっそうポイントになってきます。

結論

実験結果を踏まえ、企業やブランドはどのようにARを活用すれば良いのでしょうか?
ARは非ARと比較し非常に強い注目を集め、記憶に残るということが今回確認できました。この力は、企業が大いに活用し得るものです。

また、これはブランドレベルでの活用にとどまりません。例えば人材開発の分野において、高い注目や記憶という点を活かし、スタッフ教育にARを用いることも可能でしょう。企業にとっては今こそ、長期的な視野でARの活用を検討すべき時と言えます。

(参考)Zappar


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