6月18日、米国の調査会社IDCは、2024年第1四半期のVR/ARヘッドセットなどに関する出荷台数、市場シェアの調査結果を発表しました。分類法の改訂に伴い、VR用途に特化したヘッドセットの市場シェアや出荷台数は大きく減少しました。他方、Appleの「Vision Pro」やMetaの「Meta Quest 3」などは「MRヘッドセット」に分類され、大きく市場シェアを伸ばしています。
(IDCによる各種ヘッドセットの市場シェア予測グラフ。それぞれ拡張現実/AR, Augmented Reality、延長現実/ER, Extended Reality、複合現実/MR, Mixed Reality、仮想現実/VR, Virtual Realityデバイスのシェア率を示したもの。MRのシェアが最も大きく、これは「Meta Quest」や「Vision Pro」系列を含んでいるがゆえと思われる。オレンジの線は市場成長率を示す。なお、「延長現実」はMogura VR News編集部による仮訳。 画像:IDC)
分類の変更で「純粋なVR/AR」は減少、代わりに「MR」台頭
IDCは四半期ごとに調査を行い、各種ヘッドセットの出荷台数や市場シェア率予測などを発表しています。今回は分類法の改訂に伴い、「VR/ARヘッドセット」の出荷台数は前年同期比で67.4%減少しました。IDCによれば、「調査がMRやERといった新しいカテゴリーを含むようになったため、出荷台数の減少は予想された事態だった」とのこと。
なお、分類法の改訂においては、Appleの「Vision Pro」や「Meta Quest 3」などが「MRヘッドセット」に分類されています。また、VR用途に特化したヘッドセットのみが「VRヘッドセット」、「HoloLens 2」のような透過型のヘッドセットは「ARヘッドセット」、そして「XREAL Air 2」のようなグラス型ディスプレイは「ERヘッドセット(Extended Reality Headset)」に分類されました。
IDCは、これらヘッドセットの総出荷台数は今年後半から増え、2023年と比較して約7.5%増加すると予測しています。
「デバイス調査」であって「使い方」は反映されていない点に注意
このIDCの調査は講演などでもたびたび参照されますが、あくまで「デバイスがどのような機能を有しているか」を基準とした調査であり、「デバイスがどのように使われているか」を示していない点には注意が必要です。
例えば、Appleの「Vision Pro」や「Meta Quest 3」は、現実空間の情報を遮断し、完全なバーチャル環境へ没入できる(=VR的な使い方)一方、周囲をカメラやセンサーで認識し、現実空間を表示しつつ、その上にバーチャルな物体やディスプレイを表示することもできます(=MR的な使い方)。つまり、これらのMRデバイスはVRデバイスを包含している/兼ねている状況です。
(Meta Quest 3のMR的な使い方。飛行機内でディスプレイを表示し、現実空間を視界に入れながら映像視聴やブラウジング、プレゼン資料の作成などができる。画像: Meta)
昨今のMRデバイスの利用のされ方は、非常に多種多様です。「MRデバイスのシェアが増えた」ことは、「MRデバイスの、VR的な使われ方が減った」ことを意味しているわけではありません。今後もコミュニティおよび実際のユーザーの意見や、各種プラットフォーム企業からの発表などを注視する必要があります。
(参考)IDC