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活用事例 2024.04.11

Appleが「Vision Pro」の活用事例を公開。シミュレーションやトレーニング、デザインに生産性向上まで幅広く

4月9日、Appleは空間コンピュータ/MRヘッドセット「Vision Pro」の、ビジネスにおける活用事例集を公開しました。利用方法を4つのカテゴリで紹介し、自動車産業や製造業、サービス業など、幅広い業種でのユースケースを紹介しています。

Appleの「Vision Pro」は、Appleが2024年2月に発売した空間コンピュータ/MRヘッドセットです。搭載された多数のセンサー/カメラにより、キーボードやマウスを使わず、目や手・指の動き、音声で操作が可能です。また、高解像度のディスプレイとパススルーカメラにより、装着中でも外部の状況を低遅延で把握できます。

既に海外では医療分野での利用事例や、NVIDIAが開発・提供するリアルタイム3Dコラボレーションプラットフォーム「Omniverse」との連携等が発表されており、今後の利用事例拡大が期待されています。

SAPやマイクロソフトのツールが対応、生産性向上に

Appleは、ユースケースのひとつとして「生産性向上のための、カスタマイズされた作業空間」を挙げています。

一例として、ドイツのビジネス向けソフトウェア企業SAPは、データ分析ツール「SAP Analytics Cloud」とワークフロー管理ツール「SAP Mobile Start」をVision Proに対応させており、3次元的にダッシュボードやワークフローにアクセスできる仕組みを実現しています。


(「SAP Analytics Cloud on Apple Vision Pro」。3Dマップやグラフを空間上に配置することで、より直感的なデータの可視化を行う)

また、マイクロソフトは複数の「Microsoft 365」関連製品をVision Proに対応させました。「Word」や「Excel」「PowerPoint」といった文書・表計算・資料作成ツールに加え、「Teams」のような会議ツール、や、AIツール「Copilot」も利用可能です。


(「Microsoft 365」の各種製品をVision Proで表示している様子。巨大なウィンドウでの作業や、複数アプリを使ったマルチタスクも可能)

デザインとコラボレーション

「Vision Pro」には、約4Kのディスプレイが2枚採用されています。高解像度のディスプレイは3Dコンテンツを鮮明に表示し、デザインやコラボレーションといった作業を支援します。

一例として、NVIDIAのリアルタイム3Dコラボレーションプラットフォーム「Omniverse」では、サーバーでレンダリングした3DモデルをVision Proにストリーミングします。これにより、スタッフはイマーシブ環境下で高精細な3Dモデルを確認できます。


(「Omniverse」のクラウド版「Omniverse Cloud」を使用、3Dコンテンツをクラウドストリーミングすることで、高精細な3DモデルをノートPC接続なしで表示する)

また、ポルシェの「Porsche Race Engineer」では、エンジニアはリアルタイムで車両のデータを可視化し、速度やブレーキなどの重要な指標を、走行中のサーキットの状況や車両の位置情報と共に確認できます。モニタリングだけでなく、これらのデータを自動車ファンやレースの視聴者に提供することで、エンターテインメント要素を高めることも可能です。


(「Porsche Race Engineer」。複数のエンジニアが車の各種データをリアルタイムでモニタリングし、様々な視点からの情報を取得・分析できる)

Vision Proを使ったトレーニング・事前シミュレーション

Vision Proを使うことで、いわゆる「本番環境」「実際の現場」でなくとも、効率的なトレーニングや学習が可能になります。

AppleはKLMオランダ航空を例に挙げています。整備担当者はメンテナンス前にVision Proで3Dモデルを表示し、作業フローをひとつひとつ確認。事前学習による効率改善を図っています。


(KLMオランダ航空で使用されているエンジンの3Dモデル。表示された手順に対応するパーツがハイライトされ、従業員は「どのステップで、どのパーツをどう操作するのか」を学ぶ。実寸大での表示も可能)

様々な方法での作業支援

Appleは最後に「ガイドされた作業(Guided Work)」を挙げています。Vision Proで作業指示書を表示する、現場の状況に合わせた回路図や配管を可視化するといった方法で、現場作業者の生産性を高めます。

こうしたケースでの活用事例としては、建設業者や保守作業員が、空調や各種配管・配線システムの図面を3Dで閲覧できる「Resolve」などが挙げられています。


(「Resolve」。各種「壁の中にある」配管や配線の図面を3Dで閲覧することで、実際のプランニングやメンテナンスに役立てる)

また、About ObjectsとDigitalCMが開発した「FireOps」も例として挙げられています。「FireOps」は森林火災や人命救助等に対応するためのアプリケーションで、リアルタイムで現場の状況と地理空間データを表示し、人員や車両のリソースを正しく振り分けることを支援します。


(複数の作業フローやツールを統合する「FireOps」。森林火災であればスタッフの人数や割当、車両の移動履歴と現地の3Dデータをまとめて可視化し、連絡や配置等を円滑に進められるようにする)

Appleはこれらの事例を示しつつ、「さまざまなリソースを開発者に提供し、企業にとってのゲームチェンジャーになるようなVision Proの体験を実現できるよう支援します」とコメント。さらに企業向けの「Enterprise Spatial Design Lab」を発表、Appleによるサポートの提供やVision Pro向けアプリ開発の学習機会を提供する旨を明らかにしています。

(参考)Apple


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