11月28日、超高解像度XRヘッドセットメーカーのVarjoは、3年ぶりの新製品「XR-4」シリーズを発表しました。「XR-4」は片眼あたり4K解像度のディスプレイを採用し、前モデルと比べて水平・垂直ともに視野角を拡大。視野角1度あたりの最高画素密度(Peak-Pixel-Density)は51PPDです。「XR-4」の本体価格は3,990ユーロ(約65万円、2023年11月28日時点)から。また、追加料金で「SteamVR」や法人向けサポートにも対応します。
(「XR-4」。以前の「XR-3」とは異なり、「Meta Quest 3」風の見た目に。提供:Varjo)
企業やプロフェッショナル向け超高解像度VR/MRデバイスを開発
フィンランドに拠点を構えるVarjo(ヴァルヨ)は、「人の眼レベルの解像度を実現する」というスローガンのもと、主に法人やプロフェッショナル向けの超高解像度VR/MRヘッドセットを開発しています。超高解像度のディスプレイと、従来のディスプレイの2枚を組み合わせた「Bionic Display」と呼ばれる技術を採用し、前世代の「XR-3」では「人間の眼レベルの解像度」を部分的に実現しました。現在、日本ではエルザジャパンなどが国内代理店を務めています。
Varjoによれば、米国企業の総収入ランキングの「フォーチュン100」に入選した企業のうち、約25%がVarjoの技術を活用しています。主に航空士や宇宙飛行士の訓練、自動車産業、医療・ヘルスケア、建築・デザイン等で活用されています。
エンタープライズ利用に特化した製品改良
「XR-4」シリーズは、Varjoが2020年12月に「XR-3」シリーズを発表して以来、約3年ぶりとなる新製品です。「XR-3」と比較してディスプレイ解像度が片眼4K(3840×3744)に向上、視野角も水平120度、垂直105度に拡大。ディスプレイ輝度は2倍の200ニトに向上しています。
(「XR-4」のレンズとディスプレイ。両眼で合計約2,800万画素であり、Apple「Vision Pro」の公称「2,300万画素(以上)」を上回っている。ただし、視野角の拡大に伴い、視野角1度あたりの最高画素密度は旧モデル「XR-3」のディスプレイ中央部の70PPDを下回っているようだ。提供:Varjo)
さらに専用コントローラーが付属するほか、外部センサーを必要としないトラッキング方式(インサイドアウト方式)が標準搭載されます。カメラやセンサー部分では、LiDARセンサーの性能向上、環境光センサーを搭載することで、よりシームレスなMRを実現します。
(付属品や新たに追加された機能などの一覧。ゲーミングデバイスメーカーのRazerによるインサイドアウト方式のトラッキングとコントローラー、環境光センサー、FOV調整スライダー、「XR-3」と比較して8倍の性能のLiDAR、空間オーディオ機能、ノイズキャンセリング機能搭載マイクなど、大量のアップデートが施されている。提供:Varjo)
さらにNVIDIAの同社の3Dデザインツール「Omniverse」との統合を実現。その他にも、「Unreal Engine」や「Unity」をはじめとした100種類以上のアプリケーションに対応します。NVIDIA RTX Ada世代のGPUにより、さらにフォトリアルな風景のフォービエイテッド・レンダリングや、MRコンテンツのリアルタイムレイトレーシングが可能になります。
また、派生シリーズとして「XR-4 Focal Edition」と「XR-4 Secure Edition」が発売されます。9,990ユーロからの「XR-4 Focal Edition」は、航空訓練用に視線誘導型オートフォーカスカメラを搭載、パススルーカメラの性能も向上しています。また7,990ユーロからの「XR-4 Secure Edition」は、政府利用・産業利用レベルのセキュリティを確保。フィンランドの貿易協定(TAA)認定製品に準拠しており、オプションで無線通信機能を取り外し可能です。
(「XR-4」は3モデルで提供され、いずれも産業や軍事での利用が想定されている。提供:Varjo)
「XR-4」価格表・スペック概要
「XR-4」シリーズ別購入価格
シリーズ名 | 価格 |
XR-4 | ■本体価格: 3,990ユーロ(約65万円) ■オプション: ・SteamVR方式のトラッキング追加: 1,000ユーロ(約16万円) ・エンタープライズ・プロ・パッケージ(デバイスオファー、優先出荷・サポート対応): 2,000ユーロ(約32万円) |
XR-4 Focal Edition | ■本体価格: 9,990ユーロ(約163万円) ■オプション: ・SteamVR方式のトラッキング追加: 1,000ユーロ(約16万円) ・エンタープライズ・プロ・パッケージ(デバイスオファー、優先出荷・サポート対応): 2,000ユーロ(約32万円) |
XR-4 Security Edition (Fixed Focus) |
■本体価格: 7,990ユーロ(約130万円) ■オプション: ・SteamVR方式のトラッキング追加: 1,000ユーロ(約16万円) ・エンタープライズ・プロ・パッケージ: 標準搭載 ・無線周波数不使用: 2,000ユーロ(約32万円) |
XR-4 Security Edition (Enhanced Passthrough) |
■本体価格: 13,990ユーロ(約228万円) ■オプション: ・SteamVR方式のトラッキング追加: 1,000ユーロ(約16万円) ・エンタープライズ・プロ・パッケージ: 標準搭載 ・無線周波数不使用: 2,000ユーロ(約32万円) |
ディスプレイ・光学系
解像度 | 3840×3744×2枚 |
ディスプレイタイプ | 3.59インチ Mini-LED |
リフレッシュレート | 90Hz |
コントラスト | 1:10000(ローカルディミング機能付き) |
輝度 | 200ニト |
色域 | sRGB: 98% DCI-P3: 96% |
視野角 | 水平120度×垂直105度 |
視野角1度あたり最高画素密度 (Peak Pixel Density) |
51PPD(パススルー時は33PPD) |
パススルーカメラ | 20メガピクセル×2個 |
パススルー遅延 | 22ミリ秒 |
カラーセンサー | RGB |
備考 | ・「XR-4 Focal Edition」は視線誘導型オートフォーカスカメラ(パススルー時は50PPD)に標準対応。 ・「XR-4 Secure Edition」は+6,000ユーロで視線誘導型オートフォーカスカメラに変更可能。 |
センサー・トラッキング
瞳孔間距離(IPD) | 56-77mm(自動調整) |
LiDAR | 300,000ピクセル、範囲7m、30FPS |
アイトラッキング | 200Hz駆動 |
位置トラッキング | ・インサイドアウトトラッキング: 標準対応 ・SteamVR: オプション追加可能(+1,000ユーロ) |
モーショントラッキング | ・ART: 対応 ・OptiTrack: 対応 |
デバイス
重量 | 約1021g |
コントローラー | Varjoコントローラー(Razer社製) |
外部デバイス接続 | DisplayPort×1 USB-C×1 |
オーディオ | 入力: ・内蔵マイク2台(ノイズキャンセリング機能搭載) 出力: ・空間オーディオ対応内蔵スピーカー ・3.5mmオーディオジャック |
(出所:Varjo提供資料をもとに編集部作成)
(参考)Varjo プレスリリース