国際宇宙ステーション(ISS)の補給ミッションで、VRヘッドセット「VIVE Focus 3」が宇宙に送られました。宇宙飛行士のメンタルケアのためのVRコンテンツを複数備えています。
(宇宙飛行士のAndreas Mogensen氏。宇宙空間で「VIVE Focus 3」を使用する予定。出所:HTC)
VRヘッドセットで「癒やし」、宇宙空間でも
宇宙飛行士は宇宙ステーションでの長期滞在期間中、孤立した狭い空間で、さまざまな機器の騒音・アラームに晒されながら、数多くの実験計画をこなします。必然的に心理的なストレスは多くなります。
こうした状況を受け、XRHealth、Nord-Space Aps、HTCは宇宙空間で使用できる「VRセラピーシステム」を開発。宇宙飛行士が瞑想・リラクゼーション用途の360度動画を視聴できるようにしました。「丘の上から美しい夕日を眺める」「ヨーロッパの山道を歩く」といった内容で、宇宙飛行士のメンタルケアに貢献します。
宇宙でも使えるVRシステム
今回送られたVRヘッドセット「VIVE Focus 3」を開発したHTCは、宇宙でのVRヘッドセット使用に向けた技術的な課題にも対応しています。従来のVRヘッドセットは地球上で使うことが想定されているため、ほぼ重力のない宇宙空間ではセンサーが正しく動作しません。VRコンテンツが揺れたり回転したりしてしまい、VR酔いを引き起こすなど、体験は困難なものになります。
HTCは、運転シミュレーターやVR体験施設などで用いられているトラッキング技術を応用し、コントローラーをアンカーポイントとする手法を開発。コントローラの位置情報を参照することで、微小重力下でも位置合わせを行えるようにしたとのことです。
(宇宙空間に送られるVRヘッドセット。出所:HTC NIPPON)
地上トレーニングもVR空間で
また、HTCのVRヘッドセットは地球上でのトレーニングにも活用されています。ISSに滞在中の宇宙飛行士は、「宇宙ステーションから投げ出された同僚を宇宙遊泳して救助する」という緊急事態に備えた訓練をVRで行っています。
(地球上でのトレーニングでVRヘッドセットが活用する様子。出所:HTC NIPPON)
アメリカ航空宇宙局(NASA)は、1985年からVRヘッドセットの利用検討を進めています。2010年代に入ると、さまざまな企業・研究機関が、宇宙ステーションや地上トレーニングでのXR活用に取り組むようになりました。一例として、2021年にはJAXAの星出彰彦氏が、宇宙空間におけるVRヘッドセット使用の実験を行っています。