【体験レポ編】歩けるVRHMD、HTC Vive。新型プロトタイプVive Preで追加された機能とは?

台湾のスマホメーカーHTCは、同社が開発しているPC向けヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)HTC Viveの新型プロトタイプVive Preを発表しました。 ラスベガスで開催されているCESにて、HTCが設けているプライベートルームにていち早くその体験をしてきたので体験レポートをお送りします。
これまでMogura VRでは、HTC Viveの体験レポートを書いたことはないため、初めての体験レポートとなります。
既にMogura VRの記事ではHTC Viveに関する多くの情報を提供していますが、改めてHTC Viveがどういったものか説明した上で、製品版に近いとされているVive Preのレポートをお伝えします。HTCによると、Vive Preは製品版そのものではなく、さらに多少の改良が加わるとのことです。

そもそもHTC Viveとは

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HTC Viveは、Valve社とHtC社が共同で開発を進めてるPC向けのVRHMDです。

Valve社は、PCゲームの開発のほか、世界最大のPCゲーム配信サイトSteamの運営を行っており、そのユーザー数は1億人を超えます。一方、HTC社は台湾のスマホメーカーとして知られています。

2015年2月末、ValveはVRハードウェア、ソフトウェアの一連のシステムSteamVRを発表しました。そのハードウェア1号機がHTC社のHTC Viveということになります。VRの知見を有しソフトウェアの配信プラットフォームを提供するOculusとハードウェアメーカーのサムスンが共同開発しているモバイルVRHMD、Gear VRでの2社の関係とも似ていますね。

HTC Viveは歩ける!

HTC ViveはOculus Riftと同様PC向けのVRHMDです。画面の解像度やフレームレートなどはRiftと同程度で、違いはありません。

また、頭を回せるヘッドトラッキングの精度も大きな違いはありません。前世代のプロトタイプに比べ軽量化が図られていますが、装着時の軽さはRift製品版のほうが軽かった印象です。また装着時に肌に接する部分もより付け心地の良い材質に変化しています。ケーブルはオーディオ、HDMI、USB、電源と4本あり、PCとの間に小型の装置を挟み、まとめて処理されます。

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 正面にはVive Preの印が。そしてケーブル類と、それを束ねる小型の装置。(写真は拡大できます)

コントローラーはSteam VR コントローラーと呼ばれている棒状のコントローラーを使用し、手を動かして物を掴むといった動きができます。形状が大幅に進化し、バッテリーの持ちも4時間と向上しています。

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Steam VRコントローラー、Vive Preバージョン(写真は拡大できます)

そしてHTC Viveの最大の特徴はルームスケールの位置トラッキング「Lighthouse」システムです。最大5m×5m四方の空間を体験者はHTC Viveを装着した状態で自由に移動することができます。座る、寝そべる、後ろを向くといったあらゆる動作が全ての位置で可能になっています。

そのトラッキングの精度の高さと移動できる空間の広さを初めて体験したときは、非常に新鮮で楽しかった、という一言に付きます。VRの中で自由に動けることで、まさに現実の制約を感じず、よりVRでの体験に没頭できるようになり、その実在感(プレゼンス、そこにいる感覚)はさらに深まります

lighthouseルームスケールのイメージ図。部屋の中の2箇所に配置したベースステーションと呼ばれる装置でトラッキングを行います 20160105_104731座ってみたり。なおRift製品版でも座ることは可能ですが、5m×5mという広範囲の移動は1つのカメラでは実現できません DSC_0049ベースステーション Vive pre版。起動時の震動がなくなり静音化しています。

なお、今回Vive Preでは、これまでのプロトタイプに比べてトラッキング精度がさらに向上しており、コントローラーのトラッキングもブレることなく非常に正確です。

VRと現実をスイッチできる画期的な「Chaperone」システム

Vive Preには、ハードウェアの正面にフロントカメラが着いています。これまでのプロトタイプにはなかった新機能です。まさにカメラの通り、HTC Viveを装着したまま、現実世界を見ることができるというもの。HTCは「Chaperone」システムと呼んでいます。

Chaperoneはフランス語、英語で「(若い女性に)付き添う役」のことを意味します。 実際にカメラを通した映像は、現実そのものではなく、人や物体の輪郭が強調されたような見え方になります。実際の顔などはきわめて微かにしか見えず、人が向こう側にたくさんいる様子や目の前に椅子があることなどが輪郭から認識できるようになっています。

体験して画期的だったのは、置いてある物体に対して正確に行動をとることができることです。

「Chsprone」システムを起動した状態になると、現実世界にあるものの輪郭がわかります。サーモグラフィが単色になり輪郭が見えているような見え方になります。Gear VRにもパススルーカメラが搭載されていますが、物体と自分までの距離感が現実と違い実用的ではありませんでした。

しかし、Vive Preでは、距離感が正確に反映されます。 その実例として、スタッフが置いた椅子を見て、そこに座るといった動作を実際に試してみました。距離感が完全に一致します。一致しすぎていて、本当にここでいいのだろうか、と一瞬戸惑ってしまったほどでした。

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スタッフが持ってきた椅子に座る体験者(写真は拡大できます)

HTCによると飲み物を掴んで飲んだりするといった動作も可能になるとのこと。

コントローラーでは、ボタンを2回ダブルクリックするように押すとこの「Chsprone」システムが起動するような仕組みになっていました。ワンボタンでVRと現実の間をいったりきたりできる感覚は非常に面白いものです。

HTCは、この機能の利用により、VRHMDをはずすことなく、様々なことができるようになるとして長時間の使用が可能になることを挙げています。 また、HTC Viveでは歩けるとはいっても、トラッキング範囲は最大で5m×5mです、範囲からはみ出そうになると、警告として青白い格子状のフェンスが出現します(前のプロトタイプでもあった機能)。その際に、「Chaproone」システムを通して現実に周りにあるものも認識することができます。

「Chaperone」システムは、現実とVRをシームレスに連続してつなげていく機能です。今後AR的な用途に使える可能性もありますね。

デモでは、トラッキングの正確さと体験の質の向上を実感したが…

今回、Vive Preで体験できたデモは、空間に3Dお絵描きができる『Tilt Blush』、水中で海の生き物と出会う『the Blu』、オフィスでの仕事を体験する『Job Simulator』、パズルゲームPortalのキャラクターが登場する『Aperture Demo』の4点です。

Tilt Brush』ではコントローラーをペンのように動かし、VR内の3D空間に好きなようにお絵描きができます。使うペンは蛍光ペンや星を散りばめるもの、燃えるようなエフェクトのついたものなど、様々。3D空間にお絵描きをするというこれまでにない新たな遊び、そしてアートとしての可能性を感じるソフトです。

https://www.youtube.com/watch?v=ayH_pwSTlk4

3ヶ月前にHTCとnVIDIAが共同で行った『Tilt Brush』のコンテストの動画

『Aperture Demo』はValveの人気パズルゲーム『Portal』に登場するロボットを修理するという内容。部屋の中を歩いて回りながらレバーを引いたり、引出しを開けたりなどのアクションをしていきます。

今回のデモではあえて実際に動ける範囲よりもVR内の部屋が広く設定されていました。その際はコントローラーのボタンをおすことで遠くに自分の手を飛ばして操作をすることができました。体験している時は手ではなくコントローラーそのものが見えていたため手という感覚がありませんでしたが、手が見えていた場合、まるで自分の手が伸びたような感覚になりますね。 HTC Viveでは、最大5m×5mの範囲で体験できますが、事前に設定すればより小さなスペースでも体験することも可能となっています。その際に現実の空間が狭くてVR内の空間が広いという問題への解決策として追加された機能のようです。

https://www.youtube.com/watch?v=u28oYid7pOU

水中で水没船の甲板に立って海の生き物を観察する『the Blu』は、さながらVR水族館です。目の前を小さな魚の群れが通ったと思えば、少し離れた方からシロナガスクジラが近づいてきます。非常にシンプルな体験ですが筆者は最も感動しました。なぜなら、「見たい生き物がいたら歩いて近づき、顔を近づけてマジマジと観察できた」からです。クジラが接近してきた時は大きな目の前に近づきにらめっこをするなど、まさに海の中を歩ける水族館のような感覚で楽しめました。 VRthBlu_encounter_panorama5a1-570x320
Job Simulator』は、Oculus Rift版も開発されているお仕事体験ゲームです。単純労働は全てロボットが行うようになった遠い未来。かつて人間がやっていた単純労働を人間であるプレイヤーがやってみようというもの。カップにコーヒーを入れて飲んだり、PCのスイッチを入れてメールを処理するといったタスクをこなしていきます。Steam VRコントローラーを使って現実の手と同じように手を動かしながら物をつかみ、時に投げたり、ピーナッツクリームを机に塗りたくったりと、タスクをこなしながら遊べるところが最大の楽しさがあります。

Oculus Touch版と比べると、やはりOculus Touchのほうがよりコントローラーを意識しない自然な動作で体験ができたため、手に持つコントローラーではOculus Touchに軍配が上がりそうです。

なお、Ocullus Touch版の体験記事はこちら

https://www.youtube.com/watch?v=Uhh4dA-V2os

 そして、最後に座って遊ぶタイプのスペースSTG『Elite:Dangerous』が試遊できました。しかも操作は普通のコントローラではなく、フライトシミュレーター用の本格的なもの。ゲームセンターのような雰囲気が漂います。実際に宇宙船の操縦席にいて、敵機と撃ちあう体験ができました。もともとこのゲームはPC版が配信されていますが、本格的なスペースシムということもあり、難易度が高くなっています。確かに操縦桿を握ると、VR内の自分も操縦桿を握っており同期します。

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本格的なフライトコントローラーが設置されたブース

操縦桿を座って操縦桿を握るよりも自分の手の動きをより正確にトラッキングするSteam VRコントローラーでの5m×5mを歩いての体験の方がHTC Viveの良さを体験できるのは間違いありません。しかし、このデモではHTC Viveは歩きまわるコンテンツだけでなく、椅子に座って動かずに楽しむVRコンテンツにも対応していることを示しています。

 

今回は、HTC Viveの新型プロトタイプVive Preの詳細な体験レポートとなります。引き続き、HTCのVR担当副社長ダニエル・オブライアン氏のインタビューも近日中に公開します。

この記事を書いた人

  • KFtb1VIM

    慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、環境省に入省。環境白書の作成等に携わる。ECベンチャー勤務を経て、現Mogura VR編集長、株式会社Mogura代表取締役社長。
    現実を進化させることができるVRに無限の可能性を感じ、身も心も捧げている。これまでに体験したVRコンテンツは展示、配信合わせて500作品以上。現在ももちろんコンテンツを体験し続けており、VR業界の情報集約と提供、コンサルティングに強みがある。また、海外の主要なVRイベントでは必ず現地に足を運び、取材やネットワーク構築を行っている。2016年は6回渡米。

    Twitter:@tyranusii

    Mogura VRのライター一覧はこちら
    http://www.moguravr.com/writers/