Unreal Engine 4で高品質なVRコンテンツを作る秘訣【後編】

前編では、『Game Tools & Middleware Forum 2016 Tokyo(GTMF)』でエピック・ゲームズ・ジャパンが行った講演「Unreal Engine 4で高品質なVRコンテンツを制作するために知っておきたい100のテクニック」の内容を紹介しました。

後編では、ゲーム制作プロセスについての講演「Unreal Engine 4を利用した先進的なゲーム制作手法 The Unreal Way 2016」の内容をお伝えします。

「Unreal Engine 4を利用した先進的なゲーム制作手法 The Unreal Way 2016」

GTMF UE4

ゲーム制作でどんどん良いアイディアが生まれる”ホワイトボックス”と”キットバッシング”

続いての講演では、エピック・ゲームズ・ジャパン サポート・テクニカル・アーティストのロブ・グレイ氏がUnreal Engine 4を利用したゲーム制作手法について語りました。ゲームの制作手法に関する講演ですが、ゲーム以外を含むVRコンテンツ制作全般にも応用できる話のため取り上げます。

ロブ氏によると、ゲーム制作の中で大切なのは、面白さ・楽しさを早く見つけること。いくらグラフィックが綺麗でも楽しくなければゲームになりません。大事になる考え方は”fail early fail often”(早くに失敗して、たくさんの経験を得ること)です。そのための手法”ホワイトボックス”と”キットバッシング”を紹介しました。

ゲームの原型を作る方法「ホワイトボックス」

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「ホワイトボックス」は、プロトタイプを作るプロセスで、『Gears of War』、『Infinity Blade』などのシリーズや現在制作中のタイトルで使用されています。ゲームやアートのコンセプトを基にシンプルなメッシュのアセットを使ってどの様なゲームになるのか簡単に作ってしまうというもの。ゲームのどの点に面白さがあるのかを見極めるために用いられるため、テクスチャは作りこみません。そうすることで、ゲームを作りこんだ後の段階での差し替えがなくなり、無駄な時間の消費を防ぐことができたり、本来のコンセプトのゲームの楽しさから外れてしまうことを防ぐためのプロセスとなっています。

ホワイトボックスを用いたプロトタイピングは、ゲームを作成するにあたって、チームのコミュニケーションにも役に立ちます。紙だけで書いた資料だとアイデアが具体的にわかりにくいところ、3D空間で実際に作ってみることにより、背景やエフェクトに何が必要なのかチームメンバーに説明しやすくなります。また、他のメンバーからフィードバックやアドバイスをもらうことができるため、アイディアの幅を広げることができるようになります。

その一方でホワイトボックスに合わないゲームもあります。例えば、カメラが固定されている格闘ゲームやステージ内での移動があまりないゲーム等はホワイトボックスを使っても意味は薄いとのこと。ホワイトボックスに合いそうなゲームであれば、1ステージあたり、数日から数週間で作成することができるため、ホワイトボックスを作って、メンバーと一緒にプレイしてから制作をしてみても良いのかもしれません。

アイディアをどんどん生む方法「キットバッシング」

ゲーム制作の過程では多くのドキュメントが作成されます。キャラクターデザインのドキュメントもその一つですが、文章で考えていることを伝えるのは難しいものです。

『Gears of war』の制作現場では、デザイナーが「でかいクリーチャーがいたら面白い」と思って、ステージに使われていた素材から新しいキャラクターを作り、そのキャラクターをゲーム内に置いて遊んでいました。たまたま他のスタッフがそれを見つけたところ「ぜひともゲームに入れたい」ということになり、何時間も書類を作ったり議論を交わしたりすることなく実際のゲームに付け加えることになりました。それがBoomerというキャラクターが生まれたきっかけです。

デザイナーが、頭の中でデザインしたものを自分でプロトタイプを作って制作用にレビューし、実際に面白かったポイントを書類に落とす仕組みにすると、大幅な時間削減に成功することができました。これをロブ・グレイ氏は「キットバッシング」と呼んでいます。

キットバッシングをして問題があったり、アイディアが良くないことに気付いたとしてもロスした時間はデザイナー一人分の時間だけで、全体としてのロスを少なくできます。全体で見ると大掛かりな作業の無駄を回避できるという利点があります。

ロブ氏が挙げたキットバッシングの大事な点は6つです。
・一人のデザイナーによって制作する
・時間をかけずに実装をする
・既存のアセットを使う
・素早いイテレーションを行う
・フィードバックをもらう
・アイディアをどんどん捨てる

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実際にプレゼンテーションの時間中にロブ氏は、ゴミ箱と部屋の柱の装飾に使われていたものを使って、わずか5分程度で新しいクモのようなキャラクターを作って見せ、その手軽さをアピールしました。これを実際のゲームに置いてみてプレイすることで、どういったところが楽しいのか、もっと改善できるポイントはないのかを探していきます。


VRに関しては、ゲームにとどまらずプロトタイピングによって得られる知見が多くなっています。GoogleでVRコンテンツの研究を行っているDaydream Labでも、非常に多くのプロトタイピングを行っていることが明らかになっています。これまでにない表現が求められるだけに、プロトタイプづくりは重要となっています。

一見複雑で高負荷がかかり不可能に見えることであっても、品質の高いゲームをより短い時間で効率よく作るための方法は、様々なテクニックの上に成り立っています。今回はエピック・ゲームズが紹介したテクニックを取り上げました。今後も、そういったテクニックに目が離せません。

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この記事を書いた人

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    Shunri

    慶應義塾大学在学中の4年生。大学では経済、プログラミング、ビジネス、サービスデザインを中心に学んでいます。思い立ったが吉日!ってな感じで、水泳、サッカー、フットサル、将棋、ボードゲーム、ポーカー、自作パソコン、カメラ、アニメ…今はもちろん”VR”!広く深くを目指して‼

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