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業界動向 2018.07.24

VR対応PCは全世界で5,000万台超が存在、約3年で4倍に

Oculus RiftやHTC ViveなどのハイエンドなVRヘッドセットを使用するためには、必要なスペックを満たしたPCが必要です。初期投資には1,200ドル(約13万円)かかるとも言われ、VRの普及を妨げる一因と考えられています。

しかし昨今ではGPUの処理能力向上や価格低下も進んでおり、実際には「VR Ready(VR対応)」のPCが、予想以上に普及していることがうかがえます。メディアRoad to VRが推計したところ、ゲーム販売プラットフォーム・Steamユーザーのうち、およそ5,360万人がVRに必要なスペックを満たしたGPU搭載のPCを所有しているようです。

GPUの価格低下、処理能力向上

CPUやGPUとはコンピューターの演算装置で、特に3Dゲームなど複雑な画面表示処理をするには、グラフィックスに特化しているGPUが必要とされています。

2015年末時点、半導体メーカーのNVIDIAは、市場に普及するVR対応PCの台数を1,300万台と推計していました。当時VR対応のスペックを満たすGPUの価格帯は330ドル~650ドル(約36,000円~72,000円)。AMDのRadeon R9 290や、NVIDIAのGeForce GTX 970といったGPUが、VRに必要な最低限とされていました。


(AMDのRX 480)

その後AMD、NVIDIA共に開発を進め、より低価格で処理能力の高いGPUが市場に送り出されてきました。例えばAMDのRX 480は200ドル、NVIDIAのGTX 1060は250ドルという価格で、GTX 970相当の能力を実現しています。

1年前の2017年5月には、VR対応のGPUを搭載するSteamユーザーのPC台数は、約2,500万台と推計されていました。その後GPUの低価格化、処理能力向上の結果、VR対応のPC台数は5,360万と、2倍以上に増加したと考えられます。


(NVIDIAのGTX 1060)

VRヘッドセット売上と比較すると…

なおRoad to VRは、次のような手法で5,360万という数字を算出しています。まずSteamは、同意したユーザーから使用するデバイスのスペックデータを取得しています。もちろん全ユーザーではありませんが、これをサンプルとして用います。

サンプルデータによると、ユーザーの内26.32%がVR対応のGPUを搭載したPCを使用。また過去のデータ及び現在のコンカレントユーザー数から、最新のアクティブユーザー数は2億360万人と推計しました。このアクティブユーザー数とVR対応のPC比率から算出したのが、5,360万という数字になります。

これは、2017年にリサーチ企業のSuperdata社が発表した売上推計台数、HTC Viveが約66万台、Oculus Riftは約38万台という数字と比較して、文字通り“桁違い”な数です。両社にとっては、VRヘッドセットの潜在顧客がこれだけ存在するという良いニュースでしょう。あとはユーザーに、自分のPCでVRをプレイできると気付いてもらうだけです。

推計値に関する5つの注意点

ただしこの数字は、次の5つの点に注意が必要です。

OculusのGPUリストが基準

まず、今回対象にした「VR対応の」GPUは、Oculusが提示する推奨環境のGPUリストに基づいています。しかし実際には、Oculus Riftの最低動作環境は、同社独自のASW(非同期スペースワープ)レンダリング技術のおかげで、推奨動作環境から分離され、より位置段階低いグラフィックボードでVR体験が可能とされています。このスペックを含めると、SteamユーザーのPCの内、VR対応のPCは8,130万台にまで拡大します。

プロ仕様のGPUが含まれず

2点目に、Steamが公開するユーザーのGPUは、全ての製品名が明確にされているわけではありません。例えばNVIDIAのQuadroやTitan、AMDのRadeon Proシリーズといったプロ仕様のGPUは見当たりません。おそらく数が少ないため、「その他」に分類されているのでしょう。これらのGPUもVR対応となるため、若干ですがVR対応のPC数は増えると考えられます。

GPUのスペックのみで判断

3点目に、PCがVR対応か否かを決定するのは、GPUだけではありません。CPUのスペック、USBやHDMIのバージョン、OSなども影響します。しかしデータからはGPUとCPUの両方がVR対応のスペックを満たしているかは確認できないため、今回の推計はGPUのみに基づくものとなっています。

限られたユーザーデータから推計

4点目に、推計はSteamユーザーに限定したものです。またSteamの中でも、デバイスの情報を提供するユーザーに限られたサンプルデータを使用しています。

もっともPCゲームユーザーの大半はSteamを使用していると考えられるため、推計が現実から大幅に乖離するとは考えにくいです。しかしこれらの事実は、推計値が実際と異なってくる可能性を示しています。

今後GPUリストの見直しが発生?

そして最後に、対象とするGPUのリストにはいまだに2016年のOculus RiftやHTC Vive発売当時の物が掲載されている点が挙げられます。VR対応のGPUを搭載したPCユーザーの増加は、単純に推奨スペックのGPUが増えたために引き起こされている、とも考えられるのです。次世代のVRヘッドセットで旧モデルのGPUが対象リストから外れれば、この数字は変わってくるかもしれません。

このように数値の取り扱いに注意は必要ですが、VRに対応するハイエンドPCは、VRヘッドセットよりもはるかに普及していると推測されます。このようなゲーミングPCユーザーにどのように訴求するかも、今後ヘッドセットメーカーの課題になるでしょう。

(参考)Road to VR
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