6月28日、リクルートが運営する会員制オープンイノベーションスペース「TECH LAB PAAK」の成果発表イベント「OPEN PAAK DAY」が開催されました。同イベントでは、VRをテーマにしたトークセッションも行われました。
トークセッションの参加者は株式会社gumi代表取締役社長の國光宏尚氏、株式会社パノラプロ代表取締役社長の広田稔氏と株式会社桜花一門社長の高橋建滋氏の3名。
国内外のVR事情に詳しく実際にVR分野の事業家でもある3名によって行われたディスカッションの様子をまとめました。
VRは「視界と視界が繋がる」技術
國光氏はVRについて『“スマホの次”のインターネット端末』という要素と『ゲーム機などの“次世代のエンタメ機器”』という要素の2つがあり、この2つの用途のVRが同時進行で立ち上がっていることを理解するのが重要だとしました。
『“スマホの次”のインターネット端末』としてVRを捉えるならば、PC・スマホと同じようにVRも非常に広大な領域に影響を与える可能性が考えられます。國光氏は「視界と視界が繋がる」技術になると語り、VRならではの体験を提供することが出来るかどうかが肝になるとしました。例としてスマホゲームを挙げ、流行したスマホゲームは、据置型ゲームの操作性を移植したものではなく、スマホならではの「タッチパネルによる気持ち良い操作」を提供したものだと、具体例も出しながら考えを示しました。
大企業もVRに取組んでいる
広田氏は「表には出ていないが」大企業もVRに取組んでいるとし、BtoBや産業用でのVRの活用が進んでいることを指摘。さらに高橋氏は実際にANA(全日本航空)の上層部の方から「VRを防災訓練で使いたい」と言われたことがあることを明かしました。高橋氏によると、飛行機は地上に置いておくことが高コストで、防災訓練用に飛行機を地上に置いたままにするのは大きな費用が掛かってしまうとのことです。そこで、VR空間で飛行機内での防災訓練を行うことが出来れば費用対効果は非常に良いものになると述べました。広田氏も、“飛行機×VR”のように、VRと既存の何かを組み合わせることで利便性が向上するケースは普通にあるとしました。
『ゲーム機などの“次世代のエンタメ機器”』としてのVRの可能性としては、没入感やゲームキャラクターとの関係性を深く感じられるというテーマが、壇上で盛り上がりました。國光氏もVR空間上だとゲームのキャラクターに「恋をしてしまいそうになる」「現実に戻ってこれない人が出てくるかもしれない」「出生率が下がってしまうかも」と、VRの没入感の凄さを実感したからこその言葉を出しました。
VRによって人間は今までよりも「優しく・賢く」なれる
高橋氏はVRによって人間は今までよりも「賢く」そして「優しく」なっていく可能性があると語りました。活版印刷によって人々は他者の人生や心情を想像できるようになったと指摘し、VRによって相手が嫌がるようなことや残酷な行為をしなくなるのではないかと話しました。インターネットやSNSも、それらが出現したことによって、誰かを盲目的に崇拝する人が少なくなったように、新しいメディアであるVRは人間をポジティブな意味で変化させる可能性を示しました。
インキュベーション施設である「TECH LAB PAAK」で開かれたトークセッションということもあり、VRで起業をするならばどのような分野が良いかというトピックも出ました。これに関しては、國光氏は「とても簡単」だと言い、PCやスマホで既にあるサービスを“VRで展開する”ことが良いとしました。また“VRで展開する”ならば、PCやスマホよりも便利であることや現実を超えるプラスアルファの価値観を提供するのが大切になるという旨を各人が指摘しました。
そして國光氏は、VRに置き換えるならば大きい市場を獲っていくことが重要と語りました。そういう意味ではスマホよりもVRやARの方が開拓できる分野が広く、成功すれば大きい市場を獲ることが出来ると、起業する上でのアドバンテージを示しました。
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