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トレーニング・研修 2018.03.14

狭いスペースでも問題なし、消火器コントローラーでVR防災訓練

2018年3月7日、東京・日本橋の江戸桜通り地下歩道で「日本橋体験型防災訓練」が開催されました。突然襲ってくる地震や火事などの災害に備えるために、体感型防災アトラクションや救助・救護・応急手当・搬送訓練などを体験できます。

本イベントには「VRで消火器を操作する」という次世代型の消火器訓練が用意されていました。こちらを実際に会場で体験してきましたので、その様子をレポートします。

ずっしりとした重みを感じるコントローラー

VR消火器訓練では、VRヘッドセットの「HTC Viveに加えて、専用の消火器コントローラーを使用します。

この消火器コントローラーは訓練用の水消火器と一体になっており、実際に消火剤や水を噴出することこそないものの、本物の消火器そのものと変わりありません。体験の際は左手でこの消火器コントローラーを握り、右手のViveコントローラーと同時に操作することで、実際の消火器訓練と非常に近い感覚を味わうことができます。ちなみにこの消火器コントローラーは特許出願中なのだとか。

体験をする際は最初に、消火器の使用法を解説したガイドを見ることができます。こちらはVRの操作説明も兼ねていますが、それだけでなく「消火器は燃えている地点から3メートル離れて使用する」といった、実用的な知識を学ぶことができます。

続いて消火器の操作に移ります。まずは左手で消火器を持つのですが、先ほど紹介したように消火器コントローラーは形状も重さも本物の消火器と変わらないため、少し力を入れないと持ち上げることができないほどの、ずっしりとした重さが感じられます。こうして実際の重さをあらかじめ体感することが、消火訓練にとって大事なポイントだとよくわかりました。

次に消火器の上部にあるピンを抜き、右手のホースを構え、出火元に狙いをつけます。しっかりを狙ったのち、左手のレバーを握って消化剤を噴出させます。今回体験した火災は「オフィスでノートパソコンのリチウムバッテリーが発火した」という設定でしたが、ほかにも和室やリビングなどの状況設定が用意されているそうです。

VR内で消火剤の粉末が舞い、煙が近づいてくるなかでなおも炎に向かって消化剤を噴出させていると、無事に炎が消えて消火することができました。この時に狙いがそれて時間がかかると、炎が燃え広がってしまい、初期消火が間に合わなくなることもあるそうです。VR消火全体の体験時間は、約2~3分といったところでしょうか。

VRで消火器訓練をするメリット

会場で、本コンテンツの開発を行ったASATEC株式会社の朝日恵太代表取締役社長に、お話を伺うことができました。

朝日氏いわく、「VRを使って、何か世の中の役に立つものを開発してみたい」という思いからこのVR消火器訓練のアイデアが生まれたそうですが、開発当初は消火器コントローラーなどもなく、現在のものとはかなり違ったものになっていたそうです。消防署の方のご好意でアドバイスをいただくことにより、より実際の消火器訓練に近づけてゆき、現在の形になったとのことでした。

通常の消火器訓練では、粉末状の消火剤を噴出する本物の消火器や、水を噴出する訓練用の水消火器が使用されます。しかし、この場合は周囲への影響を考えると、屋外などの広い場所でしか訓練を行うことができません。そこでVRを利用すれば、屋内のような狭い場所でも安全に訓練が可能になるというメリットがあるのです。今回の日本橋体験型防災訓練が、地下鉄の駅に直結する地下道で開催されていたことからも、そのことがよくわかります。

消火器コントローラーのユニークさもさることながら、VRが社会に役立つ一例として、注目したい活用事例だと言えるでしょう。


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