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活用事例 2016.09.01

VRビジネスの現在と未来 配信かロケーションベースか?

日本最大のゲーム開発者向けカンファレンスCEDEC2016(コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2016)二日目の2016年8月25日、VR Now 特別パネルディスカッション VR最前線「VRビジネスの現在と未来」が行われました。

CEDEC2016

モデレーターは、ゲームジャーナリストであり、今年の5月に発売された新書「VRビジネスの衝撃―『仮想世界』が巨大マネーを生む」の著者でもあるTokyo VR Startups 取締役 新清士氏。

パネリストは、今年4月にオープンしたVRアクティビティ体験施設「VR ZONE Project i Can」の仕掛け人であるコヤ所長ことバンダイナムコエンターテインメント小山順一朗氏、同じくタミヤ室長こと田宮幸春氏。Oculus RiftやGear VR向けプラットフォームに既に複数のVRタイトルをリリースしているコロプラからVR開発チーム小林傑氏。

古くからアーケードゲームやアミューズメント施設の実績があり、VRで「VR ZONE Project i Can」を立ち上げてロケーションビジネスに取り組もうとしているバンダイナムコエンターテインメント。大手スマートフォンゲームメーカーであり、初期からVRタイトルのプラットフォーム配信ビジネスに踏み切って、継続的にVRタイトルをリリースし続けているコロプラ。ビジネスからコンテンツ制作にいたるパネルディスカッションとなりましたが、本記事では、両社の取り組むVRビジネスの現在と未来についての議論を紹介していきます。

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CEDEC2016

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CEDEC2016

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なぜVRに取り組むことになったのか

VR ZONEのメインターゲットは20〜30代のいわゆるリア充層。ゲームに変わる新しいエンターテインメントを立ち上げようとした、と小山氏。Oculus Rift DK1を触った時に「これはすごい」と思ったことがきっかけ。ゲームではなくエンターテインメントを冠した会社名に変わった時に(※)、「この新しいデバイスでエンターテインメント体験を提供する」と訴えた、とのこと。

※2015 年 4 月 1 日に株式会社バンダイナムコゲームスは株式会社バンダイナムコエンターテインメントに社名変更

コロプラでのVRの取組は、社長の馬場氏自らが率先してVRをやろうと社内で働きかけはじめたことがきっかけ。最初はスマートフォン向けタイトルをVRに移植していたが、移植ではVRらしさが足りず、今後はオリジナルVRゲームを作るために、自分が呼ばれたと小林氏。

CEDEC2016

VR ZONEがもともとVRデバイスを持っていないマジョリティ層をターゲットにしていたことに対し、コロプラでは国内のVRの認知度をどう考えて開発に入ったのでしょうか。小林氏は、「VRデバイスは持っている人がまだとても少ないものの、持っている人に届けるとフィードバックが返ってくる。スマートフォンの黎明期にゲームを作っていた時に似ている。少ないユーザーに向けて作ってフィードバックを得ることができる。また世界中のユーザーからのフィードバックが得られる」と答えています。

VR ZONEでも最初は体験時間の1枠90分につき、現在の半分の20人に絞った、とのこと。スタッフが何が起きても十分に対応できる状態でプレイヤーの遊び方や反応に対する知見を貯めることができたと小山氏は言います。

ユーザーから得られたフィードバックは?

ユーザーから得られたフィードバック、知見の例として酔い対策やコントローラーの選択に加えて、両社からはさまざまな工夫があげられました。

・VRを体験している人の様子をムービーにして見せることで、VR未体験の人にやってみたい!と言う気持ちを抱かせることができる。
・初めてVRを体験する人は、その世界にいることを信じ込む。VR内でスキー中に岩にぶつかりそうになって、現実でも後ろに飛び退くなど、その中でできることをやってしまう。
・事前にこういうことをやらないように、と具体的にお客様にアナウンスすると、安全にプレイしてもらうために有効である。
・VRではゲーム性を強くすると体験が損なわれる。体験を強くするとゲーム性が損なわれる。どちらに比重を置くのかを検討する必要がある。

5年後のVRはどうなるか?

新氏から、3年後には大きなVR市場の形成が始まっている。既にVR市場が形成されたオリンピックの頃にどうなっていると思うか、という質問。3名ともVRが十分に普及することを当然に想定、それぞれがVR体験施設としての展望、プラットフォーム配信としての展望を語りました。

CEDEC2016

小山氏:VRは今できないことを代替するようになるのでは。本当にスキーに行かなくても代わりにスキーをVRでするようになるかもしれない。ARとVRが組み合わさって体感できるデバイスになり、施設に行かなくてもVRができるようになるだろうが、ライブイベントが現在残っているように、施設という形はなくならないかもしれない。ネットの世界にみんなが溶けこむような世界になったらプラットフォーム配信のコロプラさんの勝利になるだろう。

田宮氏:VRが家庭で楽しめるようになる方向は絶対にあり、リッチになっていく。それに対して、体感が伴う施設でないと体験できないことも残り続けるのでは。友達と一緒に行ってその場で共感する。場を含めての楽しさ、エンターテインメントの場所は残り続ける。

小林氏:個人的な願望としては一家に一台VR。スマートフォンは毎日必要で持っていくけれど、ゲーム機としても使われている。VRも便利だけど、ゲーム機としても発展していくものになるだろう。

両社ともVRに早期に参入することで、VR市場の形成前にユーザーからの貴重なフィードバックや開発上の知見を得ることに成功しています。

プラットフォームで配信するコンテンツもロケーションベースのものも、VRの普及後にさらなる発展を遂げるために、今の段階からユーザーへ体験の提供を始めています。

本公演を聴いていると、現状では、ターゲットが海外ユーザーやハードゲーマー層であるなら、プラットフォーム配信VRビジネス。国内ユーザーやノンゲーマー層ならロケーションVRビジネスが、ターゲットユーザーのフィードバックを得易い傾向があると考えられます。


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