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活用事例 2017.06.26

視力1.0のVR世界 70メガピクセルで実現する超高解像度のVR


フィンランドのVarjo社は「Human-Eye Resolution技術」を用いたVRヘッドセットを開発しています。そのプロトタイプのデモを米メディアVRscoutの記者が体験しました。

このVRヘッドセットは、驚くほど解像度が高くエンタープライズ市場に向けて今年の後半に発売を開始する予定です。以下は、体験した際のレポートとCEOへのインタビューをまとめています。

目指すのは現行世代の1.2メガピクセルを大幅に更新する70メガピクセル

Varjo社はフィンランドのヘルシンキに拠点を置くスタートアップ企業です。同社はVRやMRといったいわゆるXR分野向けに画素数が70メガピクセルのディスプレイシステムを開発しています。これは現在市販されているOculus RiftやHTC Viveの約1.2メガピクセルと比べると圧倒的な高解像度ディスプレイです。チームメンバーの出身はマイクロソフト、インテル、NVIDIAやノキアといった会社から集まっており、8ヶ月前から独自の技術を開発し「20/20」と呼ばれるプロジェクトに取り組んでいます。(20/20は欧米で視力の程度を表わす表記、20/20は視力1.0と同じ。)

視力1.0のVR世界とは

VRの視界が視力1.0で見えるというのは、かなりの臨場感を持ってVRを体験することを意味します。たとえば、部屋のカーペットはふわふわした質感まで感じることができたり、木々に実っている実の形状まで認識できるでしょう。

また、現在のVR環境における大きな不満の1つはVRでテキストを読もうとすると解像度が低く難しいことですが、それらも楽に見ることができるのがVarjoの20/20ディスプレイシステムです。

Foveated Rendering(中心窩レンダリング)でリアルタイム処理を目指す

このような驚異的な解像度を持つシステムの課題は、いかに遅延を出さず、リアルタイム性を維持する程度に計算処理を抑えるかです。チームメンバーはこの問題を解決するために、人間の視界は視野全体で常に高解像度で見るわけではないという特性を利用しました。具体的には中心の約2度の範囲を高解像度とし、周辺は解像度を現在のVRヘッドセットと同等レベルに落としました。
Varjoのディスプレイは視線をトラッキングしたFoveated Rendering(中心窩レンダリング)を使用しています。その結果、現在VR向けに使われているPCの処理能力があればこのディスプレイシステムを使用できます。

XR空間の没入感を上げるためには視覚的な忠実度を現実と遜色ないレベルに上げる必要がある

VarjoのCEO兼創業者であるUrho Konttori氏は、XR空間の解像度を上げる必要性について以下のように述べています。

「現実をシミュレートするためにXRを使用する場合、視覚的の現実に対する忠実度が最も重要です。忠実度が人間の目で見て差が無いレベルに上がるまで体験者はまるでそこにいるかのように体験することはできないでしょう。」

Konttori氏によると、もし現実をXRによって置き換えたい場合、現在市販されているヘッドセットでは解像度が低いという問題から、忠実度が低く、置き換えは難しいと述べています。

「今日のVRの解像度は人の眼に例えれば、裸眼での運転ができない解像度になっています。VRの中で、教室の後ろの方に座って黒板の文字を読むことを想像してください。これがインテリアデザイナーだとしたら、部屋の奥の方のテクスチャを確認することと同様の状況ですが、現在のVRではその実現は難しいです。車のデザイナーも美しい輪郭を見たいと思っているはずです。また、車の屋根の反射を明確に見たかったり、異なる視点から反射を見たいと思うでしょう。また、(VRでデスクトップ環境を再現する)バーチャルデスクトップを見たいと思うなら解像度は本当に必要なものです。」

「3Dでは、デザインコンセプトは全く新しい意味を持ちます。それらは単純に平面にUXやUIが表示されているだけではありません。3D空間は、我々が生活している空間であり、相互に作用しています。従って、その中ではっきりと見ることができるというのは、解像度のちょっとしたアップデートではありません。人が創造力を働かせるためのベースラインと捉えています。
クリエイティブなツールは、VRにおいて最も高い可能性を見いだしています。VRネイティブのデザイナーが将来誕生したとき、全く新しい見方で建物をデザインするでしょう。あなたは、それらを建築する際にデザインの中に住むことができます。この変化はクリエイティブなプロセスを意味します。」

当初はエンタープライズ向けに2017年Q4に出荷予定

Varjoの最初の製品はハイエンドのエンタープライズ市場向けヘッドセットで、高精度の組み立てや共同作業が必要な企業を支援することを目的としています。今年の第4四半期の終わりに正式な出荷を行う予定であり、これから数ヶ月以内にβ版に入る予定です。従って、Varjoはまず独立系のソフトウェアベンダー(ISV)や、建築、デザイン、シミュレーション/トレーニングといった視覚的な忠実度の必要性が高い企業と提携する予定です。

Konttori氏は最初にエンタープライズ市場に参入することに関して以下のように述べています。
「現在のVRシステムでデザインをしていると、今後より解像度の高いシステムが登場してUXのパラダイム変化が起きればデザインのやり直しといったことが発生します。Varjoのシステムで最初から最後までデザインすれば、2年ごとにヘッドセットの解像度が上がるごとにデザインし直すといった必要はなくなります。私たちは、各企業が正しい目標に向かって設計を進めるのを支援したいと考えています。」

具体的な価格は示されていません。コンシューマー向け製品は今後、Varjoが成長するにつれて、コストが下がることで発売できるようになるとKonttori氏は予想しています。

しかし、体験した記者が最も気になった今後の展開は、同社がMRヘッドセットも研究開発していることです。それはマイクロソフトのHoloLensと言うよりかは、インテルのVR(インテルはMerged Realityと呼称)ヘッドセットProject Alloyのようなものになるとのこと。Varjoの先進的な視覚的忠実度をもち、内蔵カメラで外界を撮影して現実とバーチャルなものを合わせて表示します。直接撮影されたサンプルでは、現実の壁面をデジタルランプでリアルタムで照らし、色や影の変化が見られました。そのヘッドセットは、今年後半に発売するVRヘッドセットよりももっと初期のプロトタイプですが、チームが研究開発に興奮しているのか理解できました。

(参考)
What it’s like to View XR Through Varjo, the World’s First Human-Eye Resolution Headset – (英語)
https://vrscout.com/news/view-xr-varjo-worlds-first-human-eye-resolution-headset/

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