世界には数々の芸術作品がありますが、その大半は“見て”鑑賞することを前提としています。それゆえ視覚に障害を持つ人たちは、芸術鑑賞に困難を伴うケースが多くみられます。このような人たちが芸術を楽しむ体験を豊かにしようと、VRを使って芸術作品に“触れて見る”取り組みがなされています。では、どのような技術が鑑賞を助けているのでしょうか。
様々な触覚フィードバックで質感を再現
スペインのスタートアップNeuroDigitalやプラハ国立美術館らが協力して製作したのは、VRコンテンツ「Touching Masterpieces」です。視覚障害者が芸術作品を”見て”鑑賞することを実現しようとしています。
このコンテンツでは触覚グローブを着けて空間に手を伸ばすと、あたかもそこに芸術作品が存在するかのように、触れている感覚が再現されます。VRヘッドセットの装着は不要です。
現在コンテンツに収録されている作品は、「ミロのヴィーナス」、ミケランジェロの「ダヴィデ像」、「ネフェルティティの胸像」の3点。開発者は、UV展開とリトポロジー(ポリゴンメッシュの再構成)により、作品の3Dレーザースキャンデータを編集しました。また作品の臀部、唇、目などの陰の部分を、振動のパターンによって再現しています。これによって、細かな質感まで鑑賞者に伝え、リアルに触れる鑑賞を実現しています。
この“触れる”体験に使われているのは、NeuroDigitalの触覚グローブ「Avatar VR」です。細かな触覚フィードバックをユーザーに返すことで、鑑賞者は細部まで触って理解することができます。
今回収録された3点の作品だけで、実に1,024パターンもの異なる触覚フィードバックが用意されています。ユーザーの脳は本物に触れているかのように感じ、視覚障害者でも、触覚を通して芸術作品を”見る”体験が可能になります。
芸術作品を”見る”ことができた
体験者の一人はBBCの取材に対し、「作品に触れたときの振動(触覚フィードバック)によって、どの部分に触れているのかを理解することができました。普段は決して見ることができないものを”見る”ことができて、とても嬉しく思います」と話しました。
この「Touching Masterpieces」は、今年3月にプラハ国立美術館で公開されました。Touching Masterpiecesのウェブサイトにアクセスすれば、現在でも無料で鑑賞することができます(ただし、触覚グローブは別で用意が必要です)。
(参考)VRScout
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