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業界動向 2022.04.13

レノボのスマートグラス「ThinkReality A3」を体験。現場作業支援デバイスの新たな選択肢

2022年4月13日より、レノボはエンタープライズ向けのスマートグラス「ThinkReality A3」の販売を開始しました。レノボが手掛けるスマートグラス「ThinkReality」の新型機種であり、「働き方を変えるARスマートグラス」をキーワードとした一台です。

Mogura VRは今回、レノボの新製品説明会に参加し、「ThinkReality A3」の実機を一足早く体験しました。本記事では、「ThinkReality A3」の特徴や使い勝手をレポートします。

「ThinkReality A3」

「ThinkReality A3」は、リモートワークや現場作業支援といった、様々なユースケースが想定されています。様々な現場での使用も想定されるため、IP54準拠の防水性も確保している点が特徴です。

デバイス本体のスペックとしては、解像度は片眼1080p(1920×1080ピクセル)、リフレッシュレートは60Hzを確保。SoCはQualcomm Snapdragon XR1を搭載しています。本体にはマイクとスピーカーが内蔵されており、通話にも利用できるとのことです。また、トラッキングは2基のデュアルフィッシュアイカメラによって6DoFに対応しています。

提供されるエディションは「PC Edition」と「Industrial Edition」の2つ。「PC Edition」はPCに接続し、最大5つのバーチャルモニターをレンズ越しに表示することができます。主にリモートワークのサポートが想定されるエディションとなります。

「Industrial Edition」は、専用のAndroid端末「motorola edge 30 pro」に接続して使用する、現場での作業支援、リモート支援などが想定されたエディションです。デバイスに加えて、作業支援・リモート支援アプリケーション「holo|one sphere」、デバイス・ユーザー・アプリ管理アプリケーション「ThinkReality Cloud Portal」などもセットとなったパッケージとなります。

コンパクトな実機をチェック

こちらが「ThinkReality A3」の「PC Edition」。収納ケースつきのシンプルなセットです。

こちらは「Industrial Edition」。本体とAndroid端末「motorola edge 30 pro」、現場作業向けのレンズや「motorola edge 30 pro」を固定するためのベルトや、それらを収納できるケースがセットとなっています。

レンズの内側は、ARグラスでよく見られる投影用ディスプレイが設置された構造になっています。当然、メガネをかけた状態では装着できないため、内側には度付きのレンズを専用のインサートレンズホルダーで設置することが可能です。

フレームには耳に近い部分にヘッドホンが内蔵されており、右側には音量調整ボタンが設置されています。

接続端子はUSB Type-C。これ一本でPCおよびスマートフォンへ接続する方式です。

フロントフレームを外した状態がこちら。通常フレームはレンズが暗みがかっていますが、「Industrial Edition」にはレンズが透明で、ANSI Z87.1に適合した「Industrial Frame」が付属します。フレームはかなり固めのツメで固定可能で、簡単には外れないようになってます。


折りたたむと普通のサングラス並みにコンパクトになります。「PC Edition」付属ケースに収めれば、カバンの中でも邪魔にならないサイズ感です。

装着感の良さに驚く

まずは「Industrial Edition」で想定されている運用を体験してみることに。「motorola edge 30 pro」に接続すると即座に起動し、ローディングを挟んでメニュー画面が眼前に表示されます。各種操作はアイポインター方式で、視野の中央に存在するポインターを、実行したい項目の上に重ねることで起動することができます。

体験したコンテンツは、眼前にオートバイの3Dモデルが表示され、特定の位置にフォーカスするとパーツ単位で分解されるというもの。映像は比較的鮮明で、直感的なアイポインター操作も相まって、扱いやすく感じました。一方で、視野角はそこそこで、映像が眼前で長方形に切り取られたような感触はあります。

なにより驚いたのはフィット感の強さ。一般的なサングラスと似た構造ながら、フレームは後頭部まで包み込むようにしっかりと保持されているため、ずれ落ちるということはまずありませんでした。人間工学に基づいてデザインされたフレームは、耳に接触する先端部分のパーツを自由に換装できるようになっており、頭の形状に合わせた最適なフレームを用意することができます。

「Industrial Edition」のデモの次は、「PC Edition」で想定されるバーチャルモニターを体験しました。こちらも、専用アプリケーションをインストールしていれば、「ThinkReality A3」本体をPCに接続すれば即座に立ち上がります。

ノートPCに最大5枚までのバーチャルモニターを追加すると、作業スペースが一気に広まったように感じられます。レイアウトは専用アプリケーションで自由に構築できるため、自分好みの配置を作り出すことができます。また、バーチャルモニターは本体のディスプレイには映らないため、カフェなどの公共性のある場所で、人に見られるとまずいものも安心して閲覧できるのは、ユースケース次第ですが便利だと感じました。

現場作業支援スマートグラスの選択肢となるか

直近のスマートグラスの潮流を汲むように、「ThinkReality A3」も普通のサングラスのように、なじみやすくコンパクトなデザインに仕上がっています。その上で特に良いと感じられるのはその装着感のよさ。様々な頭の形に強くフィットし得る構造のため、多くの人が不快感なく装着できる点は大きなポイントでしょう。

映像もなかなかに鮮明に見えますが、全体的には視野角は広くはなく、視野外のオブジェクトを見るために頭部ごと動かす必要が生じるのは、評価が分かれるところかもしれません。また、長く起動すると本体が強く熱を帯びてくるため、「PC Editions」での長時間運用には少し注意が必要かもしれません。

全体的に、「Industrial Edition」が想定する「屋外で短時間装着し、ARガイドや音声指示を受けながら作業を行う」というユースケースが、最も輝くスマートグラスであると思われます。ソフトウェアやサービスもバンドルとなって提供される「Industrial Edition」は、現場作業支援スマートグラスとしての進出が期待できます。


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