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業界動向 2022.11.28

フォトリアルなメタバースで離島への愛着が生まれる?NTTらが「猫島」でプロジェクトを開始

NTTグループの共同研究チームが3D点群データ処理技術を活かして離島全体を3D空間化するプロジェクトを発表しました。NTT西日本、男木島生活研、ケノヒらとの共同検討を通じて、体験者本人の分身がサイバー空間内外で現地の文化・社会を体験できる未来を目指します。


(出所:「IOWN時代のメタバース(デモンストレーション)」より)

日本電信電話株式会社(以下「NTT」)など4者が「TENGUN Ogijimaプロジェクト」に関する共同検討の開始を発表。研究発表イベント「NTT R&D FORUM ― Road to IOWN 2022」(11/16-11/18)で「IOWN時代のメタバース」と題するデモンストレーションを行いました。

デモンストレーションの一つは、舞台演劇と映像表現を組み合わせたイメージ動画。都会の若者が、島出身の友人の誘いで「男木島」メタバース(未公開)を訪れ、サイバー空間で過ごすうちに愛着を持ち、実際に現地へ旅するまでを紹介しました。

デモ動画では、本人の内面・外見・口調・行動などを再現したアバター「Another me」が、本人の分身(デジタルツイン)として島の自然・文化を体験し、本人と情報共有する場面も描かれます。公式発表によれば、今後は現地関係者とともに、開発した3D空間の活用方法(価値、ビジネスモデルなど)を検証するとのこと。

プロジェクトの概要

瀬戸内海の中央に位置する「男木島」(おぎじま、香川県高松市男木町)は、「瀬戸内国際芸術祭」(2010-)の会場の一つで、多くの猫が暮らす「猫島」としても知られます。近年では観光客・移住者が増えているものの、人口約160名の約6割が高齢者。交通・物流の制約から、介護・教育などの課題が顕著になりやすい地域でした。

NTTグループが引用した先行研究(引地・他, 2009)によれば、現地の居住・滞在経験が少なくとも、良質な体験ができればその地域への愛着は高まります。そこで、このプロジェクトでは、現地計測した膨大な点群データをもとに「男木島」のフォトリアルな3D空間を再構築。没入感の高いサイバー空間で、潜在的な「関係人口」に、現地の自然や住民とふれあい、愛着を感じてもらうことを狙っています。

参加者の役割分担

NTT研究所は6Gを見据えた「IOWN構想」のもと、様々な要素技術の研究開発を行っています。本プロジェクトでは、3D空間メディア処理技術や「Another Me」などが活用されました。共同研究チームは他にも、3D点群データの高解像度化、物体認識・情報変換、観点別質問生成、身体モーション生成など、xRやスマートシティに関する幅広いデータ処理技術を有します。

西日本電信電話株式会社(以下「NTT西日本」)は2021年に「地域創生Coデザイン研究所」を設立し、管内30府県で地域社会の活性化に取り組む自治体や企業、組織などを支援しています。本プロジェクトでは、NTT西日本香川支店が、ICT活用による課題解決シナリオの共創、社会実装を担います。

また、島内で古民家再生プロジェクトなどを手がけるNPO男木島生活研究所と、IoTセンサーやドローン活用を手がける有限会社ケノヒが、地域に根ざしたICT活用の検討協力や、現地実証・実装を支援します。

IWON構想の実現に向けたプロジェクト

「TENGUN Ogijimaプロジェクト」は、NTTが推し進めるIOWN構想のもと「さまざまな価値観を包含した多くの情報をリアルタイムに、かつ公平に分け隔てなく流通・処理させることで、様々な「壁」を超えて、誰もが他者を尊重しあえる豊かで持続可能な共生社会の実現」を目指しています。

NTTが2019年に発表した「IOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)」は、2024年に仕様確定、2030年に実現を目指す新たなネットワーク・情報処理基盤の構想です。その特徴は、リアル世界とサイバー世界の体験をシームレスに連携可能な、低遅延、低消費電力、大容量・高品質の情報通信インフラであること。

内閣府が目指す「Society 5.0」の世界像「サイバー・フィジカルシステム(CPS)」を具体化すべく、NTT、インテル、ソニー等が主導する「IOWNグローバルフォーラム」で、ビジョン、ユースケース、技術規格書の検討を進めています。

(参考)プレスリリース


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