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活用事例 2017.09.12

ビジネスに新しいエコシステムを生み出す「Web / モバイルVR」の世界 講演レポ

8月21日、TECH PLAY主催のイベント「TECH PLAY CONFERENCE2017 ~テクノロジストに学ぶ、成功の作り方~ 『VRが創り出す世界』」にて、講演『新しい「エコシステム」を生み出すWebモバイルVRの世界』が行われました。

本講演はビジネスマン向けとなり、登壇企業はInstaVR、LIXIL、サンリオエンターテイメント。内容としては、VRをビジネスに活用する方法・その手段としての「InstaVR」などについての講演でした。



モデレーターはInstaVR株式会社のCMO小島英揮氏。InstaVR株式会社はVRを作るためのツール「InstaVR」の制作ベンダーです。スピーカーは株式会社LIXILの藤山雅剛氏、株式会社サンリオエンターテイメントの志賀優子氏の2名。
 
以前はAmazonのクラウド事業部でマーケティングの統括を行っていたという小島氏。「Amazon でクラウドのビジネスを始めた初期のころは”クラウドはまだ早い”とよく言われたのですが、結果は皆さんご存知の通り、先に動いた企業がいいポジションを取りました。VRもかつてのクラウドと全く同じだと思いますので、今日を機会にぜひVRを始めてほしいですね」と聴衆の意識を引きつけます。

WebとVRの高い親和性

「VRは盛り上がっているとよく耳にしても、実際に見たり体験したりしたことがある人はまだ少ないのではないでしょうか」と小島氏。VRの流れはふたつあり、ひとつは施設型(アトラクション型)、ひとつはWeb型です。小島氏は「施設型は家庭用ゲーム機やアーケード機器の延長線上にあり、体験できる人の数がWeb型と比べると非常に少ない。つまり、大きなビジネスにはなりにくい」と語ります。


Webの歴史を見ると、文字情報から画像、動画と、より伝わりやすい情報の形をとるというのは自然な流れです。「その文脈からいくと、VRがWebの世界に取り込まれるのはごくごく自然なこと。現在、個人でスマホを所有する人は約50%。スマホユーザーのいる世帯は70%に上ろうとしています。将来的には全世帯の8割がスマホを通じてVRを体験できる環境があることになります」と、小島氏はWeb型VRが来ると確信している背景を説明します。
 

「昔は事業を始めるには資本力が必要でしたが、今ではアイディアさえあれば起業できるようになりました。そして多くの人のアクセスがあれば無料もしくは数百円でアプリを展開できる。そうするとスマホはどんどん売れる。大きくなったWebやモバイルのようなエコシステムはVRを取り込みますので、WebでVRを体験する環境が整ってきます。するとデータを吸い上げるニーズが増えてくるので、ビッグデータも処理できる環境になります。Web型VRは新しいエコシステムを生み出します」と小島氏。

さて、現在のVRは360度空間を撮影する環境や体験する環境は十分ですが、制作面においてはクリエイターやプログラマーが技術の習得に時間がかかること、費用が高額であること、完成までに時間がかかることなど問題点があります。対して「InstaVRは制作面での課題を解消できます」と小島氏は自信を覗かせます。InstaVRは一瞬で使い方を習得でき、コスパが圧倒的、なおかつすぐに完成できるとのことです。

InstaVRの3つの特徴

小島氏はInstaVRの特徴を述べていきます。「必要な作業はすべてクラウド上でできるので、手持ちのPCとブラウザがあればVRアプリを作れます。例えばTHETAで360度の空間を撮って、クラウドにあげれば、インタラクション可能なVRをプログラムレスで直感的に作れます。そしてWebブラウザ用、アンドロイド用、iPhone用などにパブリッシュすると外部に見せることができます」。なお、完成したものはすぐにスマホやデスクトップのブラウザで確認できるそうです。

InstaVRはハイパーリンクや、情報のポップアップ、ナレーション、3DCGや写真も組み合わせられるので、十分な表現力を持っていると言えそうです。またユーザーがどこを見ているか、どのような動線を通っているかの記録をヒートマップで取れるので、よりよいコンテンツにアップデートしていくこともできそうです。

社外向けのVRアプリ制作とモバイルへの配信

Web/モバイルVRがどういうビジネスになっていくのか、セッションはファクトに基づく話に移りました。パネラーはサンリオエンターテイメントのマーケティング課の志賀氏。「サンリオはハローキティやマイメロディのような、キャラクターの物販をしている企業で、ピューロランドとハーモニーランドというふたつのテーマパークを運営しています」と志賀氏は説明していきます。

「しかしサンリオやピューロランドの存在を知っている人は多くても、テーマパークの入場者数は目標には達していません。ピューロランドに何があるのかを認知されていない、キャラクターたちの本格的なショーやパレードがあることを、外に伝えられていないのが原因なのかなと考えました」と志賀氏は続けます。

VRアプリ制作の始まりは昨年秋、「クロスコさんという動画を中心に制作している会社さんから、VRをやってみないかと提案がありました。最終ゴールが集客になるのでコストは重要になりますが、提案された予算は着手しやすい金額でした」と志賀氏。技術面はすべてクロスコ。サンリオ側が企画、内容、ストーリー、絵コンテを担当することで始まりました。
 

まずデモテープとなるモックアップを作るためにロケハンをおこない、カメラはどのくらいの高さで取るか、どこにカメラを置いたらよく見えるかを検討し、モックアップを作成。VRでは360度の全てを見ることができるので、ストーリーを進めるためにキティちゃんなどの着ぐるみの動きを演出しています。

ロケハンの翌日にはモップアップが完成。「YouTubeにあげてもらったものを見せながら説明できたので、デジタルに弱い上司やVRが何なのかわからないスタッフにもわかりやすく伝えられ、企画が通りました」と志賀氏は振り返ります。その後、本番撮影を8Kにて行い、クロスコ側がVRアプリを完成させました。

アプリをテストランニングさせたのは2月に行われた国内展示会。志賀氏は「女性はそもそもHMDをつけてくれるのか懸念があったので、HMDはヘッドバンドなしで見られるようにしておいたところ、とても好評で、テーマパークのチケット売り上げ数が例年よりも高まりました。海外の営業メンバーにも配布しており、営業メンバーはWeb型VRを積極的に使っていて、手応えもあります」と言います。今後はWeb型VRの利点を活用して、コンテンツを追加していき内容を充実させていくとのことでした。

社内向けの事業所紹介ツールとしてのVR

スピーカーはLIXILの藤山氏に変わります。

LIXILは、TOSTEM、INAX、新日軽、sunwave、TOEXの5ブランド合併により2011年に生まれた会社です。家を一棟立てるための住宅建材を揃えており、海外にもグループ企業があります。スピーカーである藤山氏はクラウド系のソフトの導入展開およびバーチャルショールームの構築を担当しているとのことです。

Web型VR導入の背景

藤山氏は社内向けの事業者紹介にWeb型VRを導入した背景から話し始めます。
「五社合併してできたLIXILには営業拠点や生産拠点などが国内だけでも数百以上あり、社員であっても会社全体のことを理解できているとは言えません。各事業所の紹介で理解を深める必要があります」。

リーズナブルに社内向けのVRを作る方法を模索していた頃に知ったのがInstaVR。まずは無料版で試してみて、これは行けそうだと実感し、「不動産業界で近年活発化しているVR内覧システムなど、簡易VRの検証、および簡易VR制作のノウハウを蓄積するためにInstaVRを導入しました」と藤山氏は語ります。

多数ある社内事業所紹介にVRを活用

LIXIL社内にはナレッジマネジメント(KM)活動という社内のノウハウを共有する活動があり、全国各地の事業所を紹介する活動もしています。「そのチームと協力して、VR素材や資料を集めました」と藤山氏。

制作の流れとしては、まず本社スタッフ、自分、現地のスタッフで、どこを撮影するかを決め、素材はTHETAで撮影。事業所の紹介文をもらい、InstaVRでコンテンツを作成、完成させます。

社内向けVRのため売り上げに計上できる効果はないものの、簡易VRを見たLIXIL社員の反応はガラッと変わり「自分の事業所でもやりたい」という声が複数上がったとのことです。「素材さえあればすぐにVRを作れるのがWeb型簡易VRの良さだと思いますので、用途に応じてWeb型簡易VRと設置型を使い分けています」と藤山氏は述べました。

なおモデレーターの小島氏によると、InstaVRのライセンス料は一月あたり3万円強、年間契約であれば一月あたり2万円強とのことでした。


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