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業界動向 2021.07.02

デジタルツインをどう活かす?Symmetryがデジタルツイン構築プラットフォームを提供開始

デジタルツインの技術開発を行うSymmetry Dimensions(以下、シンメトリー社)は2021年6月30日、デジタルツイン構築プラットフォーム「SYMMETRY Digital Twin Cloud」を発表・提供開始しました。同社はまた、オンラインイベント「SYMMETRY LIVE オープンデータを活用したデジタルツイン構築」を同日開催し、デジタルツイン構築や現場での利用方法について業界関係者とディスカッションしました。

本記事では、「SYMMETRY Digital Twin Cloud」の詳細とデジタルツインの可能性が語られたディスカッションのレポートをお伝えします。

※デジタルツイン:現実世界の様々な事象をサイバー空間上で再構成する技術。スマートシティ、Society5.0、サイバーフィジカルシステムなど、多方面での活用が期待されている。

デジタルツインに必要なあらゆるデータを接続する「SYMMETRY Digital Twin Cloud」

シンメトリー社は建築向けVRソフトウェア「SYMMETRY」の開発・提供を経て、現在は空間・都市向けデジタルツイン構築及びプラットフォーム開発を行っている企業です。

今回発表された「SYMMETRY Digital Twin Cloud」はCADデータや点群データなど、デジタルツインに必要なデータの取り扱いはもちろん、各種APIなどとも連携してデジタルツインを構築することができます。


(SYMMETRY Digital Twin Cloudのシステム全体図。さまざまなデータと接続し、マルチデバイスに出力できる)


(SYMMETRY Digital Twin CloudのUI。ノードベースでわかりやすい操作体系)

多様なデータの変換・接続が可能

SYMMETRY Digital Twin Cloudは、3DCAD・点群データ・GISデータ・IoTセンサーおよびデバイスデータ・人工衛星データなどの各種データフォーマットに対応。さらに国土交通省が公開している3D都市モデルのオープンデータ「Project PLATEAU(プロジェクト・プラトー)」や、インターネット上で提供されている気象情報、交通情報、データベースなどへのコネクターがあらかじめ用意されており、各種データへ直接接続できます。


(地形データに気象情報や交通情報を重ねることもできる)

解析エンジンを使った分析・検証が可能

取得したデータをもとに、パートナー企業が提供する分析・シミュレーションエンジンを利用可能。3次元熱流体解析・空間解析・画像解析など、さまざまな分析・シミュレーションに対応しています。


(プロジェクト・プラトー のデータをベースに、レイ・フロンティアの人流データを可視化し、日ごとの人流の推移を可視化した例)


(プロジェクト・プラトーのデータをベースに、建築物の近隣説明や、構造物の耐風設計に活用するための風解析シミュレーションを行った例)

VR/ARデバイスでの利用も可能

SYMMETRY Digital Twin CloudはPCやスマートフォン・タブレットはもちろん、VR/ARデバイスでも利用可能。構築したデジタルツイン上で設定した情報を現実世界に重ね合わせて投影したり、空間に浮かぶARダッシュボードを作成してオフィスや自宅など遠隔で3次元データを共有し、検討・考察することができます。


(ARダッシュボード。ARで表示されたデジタルツインを複数人で同時に見ることができる)

デジタルツインをどう活かす?

オンラインイベント「SYMMETRY LIVE オープンデータを活用したデジタルツイン構築」には、シンメトリー社の代表・沼倉正吾氏が登壇。あらためてデジタルツインとは何か、デジタルツインの最新動向などについて語りました。その中で沼倉氏は、デジタルツインは現実世界をデジタルデータに変換するだけではなく、デジタルツイン内での分析や予測を現実世界にフィードバックすることも可能になる、と言います。


(現実世界とデジタルツインは一方通行ではなく、相互にフィードバックすることも可能になる)

「データのオープンソース化の波」がデジタルツインを加速する

沼倉氏はまた、Project Plateauをはじめとするオープンデータ化の流れがデジタルツイン構築に重要な役割を果たすとし、オープンデータを活用することでデジタルツイン構築のコストを下げ、空いたリソースで新規アプリケーションの開発や新規産業の創出などを目指すことができると言います。オープンデータを提供するプラットフォームも国内外問わず立ち上がっており、そこに企業などが公開しているデータも組み合わせることでデジタルツイン構築・活用が進むだろうとしました。


(Project Plateauのほか、総務省が運用する「データカタログサイト」ではオープンデータに関する情報集約が行われている)

SYMMETRY Digital Twin Cloudを利用したデモも紹介

続いては実際にSYMMETRY Digital Twin Cloudの使いかたや、活用事例などを紹介。その中で、シンメトリー社が研究中の「フィジカルとデジタル、双方向のデータ反映・共有」のデモも披露されました。


(梓設計との協業による、HoloLens 2を使ったデジタルツインを活用した施設維持管理システムの事例。画像元:梓設計



(デジタルツインとARクラウドの技術を活用した、双方向のデータ反映・共有デモ。デジタルツイン内のオブジェクトの位置が現実世界と連動しており、オブジェクトを別の部屋へ移動させると、現実空間でもその部屋に行かないとオブジェクトが見られなくなる)

自由な発想でのデータ活用がイノベーションを生む

イベントの後半はシンメトリー社と関わりのある企業4社が登壇。各社の取り組みや、デジタルツインの動向や今後についてディスカッションが行われました。登壇者したのはレイ・フロンティア代表取締役社長CEOの田村建士氏、スペースシフト代表取締役の金本成生氏、静岡県交通基盤部・未来まちづくり室室長の増田慎一郎氏、名古屋鉄道 経営戦略部 事業プロジェクト担当課長の岩田知倫氏の4名です。


(デジタルツインに関わる事業に取り組む企業・自治体関係者による議論が行われた)
ディスカッションではまず各社・自治体がそれぞれの取り組みを始めた経緯についてトーク。各社とも共通していたのは、最初から具体的な事業や売り上げの形が見えていたわけではなく、「まずはやってみよう」の精神からスタートし、デジタルツインの登場でようやくデータの使い道が見え始めたということでした。

また、「各社が提供しているデータをどのように活用してほしいか」というテーマに対しては、「都市計画やインフラ調査など、日常生活を安全で豊かにしていくような使われかたはもちろん、我々が想像もしていなかった意外な使われかたをされることにも期待している」(スペースシフト 金本氏)、「実証実験を通じてデータを取得・提供・フィードバックの仕組みは作れたので、その仕組みを使ってみたいという方と一緒に新しい取り組みをしていきたい」(名古屋鉄道 岩田氏)とそれぞれ回答。

さらに「VIRTUAL SHIZUOKAの点群データは、『釣りドコ』という海底地形マップサービスで利用されるなど、想定外の使われかたも複数あった。そうしたイノベーションに加え、個人的には点群データから生成した3Dデータの“見せかた”でも新しい技術が出てきてほしい」(静岡県 増田氏)、「アプリなどを通じて、実際にデータを取ったり利用したりという体験をまずはしてもらいたい。そうすることが新たな創発につながっていくと思う」(レイ・フロンティア 田村氏)との回答が出そろったところでディスカッションは終了となりました。

(3次元点群データを活用し、バーチャル空間に県土を構築するプロジェクト「VIRTUAL SHIZUOKA(バーチャル静岡)」)


(名古屋鉄道ではグループ会社や協力会社と提携し、LiDARを搭載したタクシーで営業運転をしながら3Dデータを取得する実証実験を行った。画像元:マップフォー

製品価格は要問い合せ。一般向けのデモ版も準備中

シンメトリー社ではSYMMETRY Digital Twin Cloudを企業や自治体・団体向けに提供するほか、デジタルツインの構築に必要な現場のデジタルデータ化、システム設計、利活用に関してのご提案・カスタマイズも提供するとのこと。同製品に関する問い合わせや資料ダウンロードは製品サイトから行えます。また、一般向けに製品を体験できるデモ版も準備中とのことです。

(参考)SYMMETRY Digital Twin Cloudプレスリリース


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