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他人の視界を共有する鬼ごっこはこれまでの感覚を超越する体験だった【SXSW2017】

ソニー株式会社は、3月10日からアメリカ、テキサス州オースティンにて開催されたSXSWにて、3月12日The WOW Factoryを開催しました。

The WOW Factoryでは、最新技術を活用したプロトタイプや研究開発段階のプロジェクト、ソニーのエンタテインメントコンテンツと組み合わせたアトラクション型の展示など、WOWを伝える全13プロジェクトを展開、その中にあった展示の1つ、『Superception』を体験してきました。


古倉庫に立て込まれたThe WOW Factory


中では13のプロジェクトが展示された

『Superception(Super + perception)』は自分の視界と、他人の視界をゴーグル内に並列に並べ、4つの視界を駆使し鬼から逃げる、または鬼として追いかける鬼ごっこゲームです。
一般的な鬼ごっこは自身の各感覚だけを頼りに逃げたり追いかけたりしますが、Superceptionでは自身を含めた4人分の視覚を情報として受け取り、その情報を駆使しながら逃げたり追いかけたりするアトラクションです。

他人を視界を共有するこれまでにない体験

1ゲームにつき4人一緒に体験することになります。そのうち1名は鬼役、他の3名は鬼から逃げる役です。

ゲームの内容はとてもシンプルで、鬼がスポンジの棒をもち、他の参加者にスポンジの棒でタッチすれば鬼の交代となります。

順番がきたら、フィールドへ移動します。ルールの説明とともに、ゴーグルを手渡されゴーグルを被ります。ゴーグルを被ると視界に入るのは4分割された画面でした。
このうちの1つが自分の視界と気づくまでにそれほど時間は要しませんでした。ゲームなどで複数の視界が1つの画面に入ってくるような場面は経験としてありましたが、4つの画面が同じ大きさで、自分の視界と他人の視界が同じ情報量として画面に表示されるタイプは初めてです。
他人の体験を共有しているこの状況を *1『Jackin』(ジャックイン、説明は後述)と言います。


4分割された画面

まずは自分の感覚をキャリブレーション

参加者はこの状態で鬼ごっこをします。体験者が慣れるための、オリエンテーションが始めに用意されていました。説明の流れでカメラの前に自分の手をかざしてみたり、参加者4人全員で大きな四角を作ってみたり、司会者とハイタッチをします。

司会者とハイタッチをする参加者

また視界を共有した状態で歩くことにも慣れる必要があるため、自由に歩き回る時間も用意されていました。フィールドにはいくつかの衝立があり、迷路のようなフィールドになっています。衝立自体はそれほどしっかりしたものではありませんでしたが、ゴーグルを掛けた状態で鬼ごっこをするには十分隠れられる大きさと高さでした。


フィールドを俯瞰してみたところ

始めにオリエンテーションでいくつかの動作をすることにより、仕組みや距離感などの感覚を掴むことを目的としているようで、実際に障害物を避けながら歩く程度のことはできるようになりました。このオリエンテーションは、新しい感覚への人間自身へのキャリブレーションの役割を果たしていました。

他人の視界を使って逃げる、追いかける

一通りのオリエンテーションが終わり、鬼役を決めたらいよいよゲームスタートです。
ゲームスタートの合図で鬼以外が逃げ、数秒後、鬼が追いかけ始めます。捕まったら人が鬼になっていくといったルールで、言ってしまえばただの鬼ごっこなのですが、先ほどまでのオリエンテーションの時と比べ緊張感がぐっと高まります。


はじめの鬼は挙手制で決まる。

筆者は1回目は鬼から逃げる役でした。始めは自分の視界のみを頼りに逃げ、壁に隠れました。壁に隠れながら今度は他の参加者の視界を頼りに次の行動を考えていると、ある1人の視界に自分が映り込んでいることに気がつきます。
この視界は誰の視界だろう?自分の視界はどこだっけ?と混乱しているうちに、スポンジでたたかれました。

視界の持ち主は鬼でした。筆者はあえなく鬼となってしまいました。

鬼の番になると他の3人を見つけ追いかけスポンジで叩けば良いので、シンプルです。
さっそく自分の視界に入った参加者を追いかけすぐに鬼役を別の体験者に渡すことができました。

鬼に捕まってしまう瞬間

逃げる方と鬼と、両方体験してしまうと、この鬼ごっこの勘所がわかるため、非常にプレイしやすくなります。

筆者は4つの視界に優先度をつけました。1番の優先度は自分の視界です。自分の視界を頼りに兎に角鬼から離れます。2番目に鬼の視界です。鬼の視界に自分が入ったら視界から消えるように移動を始めます。そして、4つの視界を一緒に処理するには慣れが必要と感じ、他の視界はただの情報として割り切って切り離しました。

このおかげで「鬼の視界に入る」、「少し移動する」という行動パターンを繰り返し逃げ切ることができました。こうして慣れてきた頃に体験時間は終了となりました。

視覚の拡張がもたらす新しい「遊び方」

初めての体験にもかかわらず鬼から逃げなければならないという状況が、緊張感を生み、4つあるはずの視界が、最初は逆に視野を狭くさせます。さらにこの仕組み自体に身体がどんどん順応していくことで、今度は自分の視野を超え、他人の視野を使い、逃げ、追いかけるという体験に、SXSW2017で体験したVRコンテンツの中で一番エキサイトした体験となりました。

聞いたところによると、慣れてくるとこの仕組みを裏手に取り始める人も出てくるらしく、例えば、自分の視界を塞いでしまい、他の参加者からの視界も見えなくしてしまうといったテクニックを使う参加者もいたそうです。

実際に、何度か鬼の交代をすると、わざと鬼の視界に入って挑発したり、常に鬼の背後に回る参加者もいました。

4分割された画面を見て気づいたのは自分の視界だけ解像度が高いことです。スタッフの方に聞いた所、これは敢えて仕様として採用されているもので、解像度が高いものが1つあり、そうでもないものが3つあると、 自然と高解像度のものが自身の視界だと認識するそうです。またこうすることで通信を少しでも軽くする狙いもあるそうです。

『Superception』は *2 HADOに続く参加型アトラクションコンテンツにカテゴライズできる体験でした。慣れれば慣れるほどスピードがあがり、テクニックが使われ始め、激しい鬼ごっこになります。実証実験の一環として行っているとの事で、今後の展開については今のところ具体的にはないとのことですが、ぜひ常設アトラクションとしても展開してほしくなるコンテンツでした。

*1 JackInとは
他人の体験を共有する状況をJackinと呼びます。

ソニーコンピュータサイエンス研究所と山口情報芸術センターが、新しいコミュニケーションの形を探索し、人間の能力や感覚を拡張していく事象を探る「JackInワークショップシリーズ」を研究開発しています。

複数人の参加者が簡易型のヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着して、ネットワーク越しに相互に体験を共有するJackInという状況に身を置きながら、いくつかの簡単なゲームをおこないます。参加者はこの過程を通じて、人間の拡張・人間のメディア化の可能性について考えを深めることを狙います。装着するHMDには自分視点の映像に加えて、他の参加者の視点の映像も表示されるので、普段とは異なる複雑な状況が生まれます。

自分と自分以外の視点から状況を把握する方法や、複数の映像から「自分」を理解する感覚など、「自分」と「自分以外」の新しい関係性がもたらす、ネットワークで接続された体験と、知覚拡張の可能性について、感覚的に学ぶことになります。

*2 HADOとは
HADOは、体を動かして技を発動させ、フィールドを自由に動き回り、味方と連携して楽しむ『テクノスポーツ』です。頭にヘッドマウントディスプレイ、腕にはアームセンサーを装着。AR技術により、子どもの頃に憧れた魔法で戦う世界を圧倒的な臨場感で実現します。

SXSWについて

毎年3月にアメリカ合衆国テキサス州オースティンで行なわれる、音楽祭・映画祭・インタラクティブフェスティバルなどを組み合わせた大規模イベント。
1987年に音楽祭として始まり、毎年規模を拡大している。
近年では日本企業からトレードショーへの出展や、アワードへのエントリーも増えてきており、SXSW Interactive Innovation Awardsでは昨年WHITE社がMilbox TouchにてFinalistに選出、今年は東大 ロボット義足開発チーム「BionicM」が日本からのエントリーとしては初の受賞に至っている。

(参考)
The WOW Factoryについて
http://www.sony.co.jp/brand/stories/ja/project/sxsw/

山口情報芸術センターについて
http://www.ycam.jp/

HADOについて
http://meleap.com/

SXSWについて
https://www.sxsw.com/

 

この記事を書いた人

松葉 忍

フリーランス VRプランナー/ディレクター、デジタルクリエイティブプランナー/ディレクター。主に広告。八王子市出身、アパレル畑出身、SE上がり。広告制作プロダクションでデジタルクリエイティブの仕事をしていたのですが、VRが楽しくて、VRの仕事を積極的にしていたらフリーランサーになってました。VRの楽しさをみなさんにも伝えたいです。

Twitter:@snb04

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