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メタバース 2023.02.26

「SANRIO Virtual Festival 2023」制作メンバー振り返り座談会

2023年1月13日(金)から1月22日(日)にかけて開催された、サンリオ主催のメタバースイベント「SANRIO Virtual Festival 2023 in Sanrio Puroland」。

2回目の開催となる今回は、VRChatの特設ワールド「バーチャルサンリオピューロランド」に総勢56組ものアーティストが登場。ライブ以外にも、コミュニティイベントや世界初のキャラクターVRパレードが開催されるなど、見どころ満載のバーチャル音楽フェスとなりました。

1月29日と30日には音楽ライブのタイムシフト公演も行われ、盛況のまま幕を閉じたサンリオバーチャルフェス。今回はその「振り返り座談会」と題して、本イベントに携わる株式会社サンリオの町田雄史さん、株式会社サンリオエンターテイメントの佐藤哲さん、異次元TOKYOの篠田利隆さんの3人にお話をうかがいました。

※開催前の制作陣インタビューはこちら

テーマである「コミュニケーション」を実現できたサンリオVfes2023

――まずはフェス全体を通しての感想をお聞かせください。

佐藤哲(以下、佐藤):
「多くの人に楽しんでもらえた」という実感があり、非常にありがたく感じています。今回のイベントは「コミュニケーション」がテーマでしたが、純粋に音楽フェスを楽しんでいただく一方で、お客さん同士でも新しい出会いのある場となっていたと聞きました。そういう意味では、フェス全体を通してテーマを実現できていた点も非常に良かったですね。

町田雄史(以下、町田):
「コミュニケーション」をテーマに掲げるなかで、非常に多くのことを感じ取れたイベントでした。メンバーはみんなそう感じているのではないでしょうか。自分は今回、VRChatコミュニティとのコラボイベントなどで人と関わる機会も多く、クリエイターさんと直に話をして、どのような思いで活動をされているかを感じ取ることもできました。

クリエイターさんとのコミュニケーションを重ねるなかで、たとえば「VRChatのイベント運営ではこのような問題が想定されるので、こうやってクリアしてみてはどうでしょう」という提案をいただくこともあり、とてもありがたかったです。あとは、逆に「我々の思いをみなさんに伝えられた」という感覚もありますね。そういった部分で、僕ら自身も進歩できたように思います。

また、新たにパレードを実施したことで、我々のフェスの新しい在り方を指し示すこともできました。パレードでは「ミラクルハートライトをみんなで振ろうよ」という、お客さんにも“参加”してもらう演出があったからこそ、何回も見に来てくださった方も多かったのではないでしょうか。繰り返し楽しめるコンテンツの在り方や見せ方は前回のフェスにはなかった部分ですので、これも大きな成果のひとつです。

あとはユーザーさんに対しても、「友達と一緒に参加してほしい」というメッセージを強く伝えられたように思います。「パレード、見に行ってみない?」と誘う声も実際に会場で耳にしましたし、たまたまコミュニティイベントを訪れた人が「今、なにかサンリオのイベントでもやってるの?」と周りの人に聞いて、そのまま一緒にパレードを見に行っていたという話も聞きました。コミュニケーションが伝播していることを実感できたのは非常に良かったと感じています。


篠田利隆(以下、篠田):
僕は「VR」寄りのレイヤーでの話になりますが、そもそもサンリオバーチャルフェスに関わる前はVRを仕事にしようとは思っていなかったんです。というのも、好きだと感じたことを仕事にしてしまいがちな人間なので、VRだけは「趣味」にとどめておこうと思っていたんですよ(笑)。なので3年くらいは、普通にVRChatterとしてふらふら遊んでいただけでした。

それが前回からこのイベントに関わらせていただくようになって、「自分がすごいと感じたVRの世界のクリエイターさんを紹介したい」と思うようになりました。前回のフェスではキヌさんやDJ・VJの方に出ていただいたのですが、今回はその範囲をより広げることができたように思います。

直接のお知り合いではなくても、VRの世界でおもしろいことをしている人にサンリオバーチャルフェスの舞台に立っていただき、お客さんに向けてその人自身のクリエイティブを発信してもらえた。その姿を見て――自分が言うのも変ですけど――エモーショナルな気持ちになりました。

さらに、そのクリエイティブを受け止めて「自分もやりたい!」と意気込んでいる人もいれば、純粋にエンターテイメントとして音楽を楽しんでくださっている人もいる。いずれにしても、このフェスを楽しんでくださる方が去年以上にSNSで多く見られていたので、自分としてはよかったなと感じています。

ちょっとした裏話なのですが、ALT3の出演者のなかに、「自分たちは前回のサンリオバーチャルフェスのALT3で友達になって、今回はDJ&VJとして一緒に出演することができた」と、めっちゃ泣いていた人がいまして。そういう話があるのも含めてエモーショナルだし、カルチャーだなと思っています。

篠田:
自分は「VR」をどちらかと言えばギークなものとして捉えてスタートしたのですが、今は「機械でただ遊ぶだけじゃないもの」になっていて、生活や文化があることを知れたので、そこにサンリオバーチャルフェスが良い形で入っていって、みんなで一緒に盛り上がれるイベントのひとつになりつつあるのではと思い、それが自分としては嬉しく思います。

サンリオバーチャルフェスを含め、今まさに広がりつつあるVRの文化って、新しい「世界」が生まれているようなものじゃないですか。もちろん、機材の問題をはじめとするハードルの高さや、課題もまだまだいっぱいあります。でも、40歳を超えて、ここまで心をとらわれるカルチャーが生まれるとは思っていなかったんですよね。

そのなかで自分は――町田さんや佐藤さんとも一緒なのかもしれませんが――自分で全部を作ろうとするのではなくて、この世界から出てきたクリエイターさんたちにいろいろお願いをするような立場でもVRに関わっていきたいなと。2回目のサンリオバーチャルフェスは、改めてそう思えるイベントになりました。

――お話を聞いていて、サンリオバーチャルフェスに参加された一般ユーザーの方だけでなくクリエイターの方からもポジティブな意見がでたという点が、このイベントの熱さを感じさせます。

篠田:
本当にそうですよね。これまで展示会や即売会のイベントは数多く開催されていますが、サンリオバーチャルフェスは「表現」を前面に出す方向で広がりつつある。音楽ライブに加えて「VR表現を広げていく」ような役割も担いつつあるように思います。

キヌさんが去年、魂か何かが注ぎ込まれたかのような想像を絶するクオリティの作品をバーン! と出してくださって、そこで着目されたことにはすごく夢があると思うんです。でもその一方で、普段からパーティクル演出をしている方のなかには、去年のキヌさんのライブを見て「俺もできるのに……!」と感じた人も絶対にいると思うんですよ。

篠田:
もちろんその全員に声をかけるのはまだまだ難しいですが、今年はサンリオさんが出演者の数を増やしてくださったので、キヌさんが去年振った旗に集まるようにして、たくさんの人に出てもらうことができました。memexさんはキヌさんよりも先輩だったかと思いますが、「memexはmemexなんだぞ!」という感じのライブでしたし、逆にTORIENAさんはキヌさんからめちゃくちゃ影響を受けていることを公言されています。

で、その旗を振ったキヌさんですが――実は今年のライブがどうなるのか僕はめっちゃ不安だったんですけど――リハーサルを見て「何を心配してたんだ」って思うくらいの、元祖B4フロアじゃないですけど(笑)そんなライブを見せてくれていました。本当にB4フロアみなさんそれぞれのライブになっていたと思いました。

(memex)

(TORIENA)

(キヌ)

篠田:
そういえば、もともとのB4のフロアの趣旨はどこに行っちゃったんでしょうね? “チル”パークなのに(笑)。佐藤さんが「アンビエントを流してぼーっとできるサウナを作りたい」みたいな話をされていましたよね。

佐藤:
懐かしいですね。

篠田:
みんなはどちらかと言えば、「本当にサウナいるの……?」「サウナ、いらないでしょ」みたいに話していて。でも佐藤さんが「サウナやりたい!」「絶対に残しましょうよ!」と話していたので、途中で1回作り直すくらいにはこだわって作りましたよね(笑)。

佐藤:
そうそうそう! 「サウナ、いらねえだろ!」みたいな話になって(笑)。

篠田:
「いやいや、今のサウナは気に入ってないから、もう1回作り直す!」て言って、作り直したら……何のことはなく、キヌさんにガーーー!! ってやられて(笑)。

佐藤:
逆に気持ちいいですよね! 

大盛りあがりだったパーティクルライブと、パレードに込めたメッセージ

――チルパークに関しては、メディア目線でも非常に注目度が高かった実感があります。特に2日目は本当に大勢の方が集まっていた印象がありますが、運営側の手ごたえとしてはいかがでしょうか?

佐藤:
もちろん、キャスティングをお願いした篠田さんやGugenkaさんによるアドバイスがあってこそですが、パーティクルライブを楽しめるチルパークは最高のフロアだったと思います。僕自身、お客さんの反応を見て、滅茶苦茶興奮していました。ただ、そこだけに引っ張られちゃうのも寂しいな、という気持ちも本音としてはありますね。

全体的な設計としては当然、チルパークも含めて我々も力を入れています。パレードもそうですが、あのようなライブを無料で見られるフロアがあったことで、お客さんにも満足いただけたのではないか、そしてトータルのバランスも取れていたのではないかと思います。VR上で開催されるフェスとして前回よりもパワーアップさせたことで、お客さんのリクエストにも応えられたのではないでしょうか。

(team:beyond_a_bit with EstyOctober)

(約束)

(戊屡神ゆゆ)

――今の佐藤さんのお話にもありましたが、新フロア「バーチャルピューロビレッジ」で見られる無料のバーチャルパレード「ミュージカルトレジャーハント」も大盛りあがりでした。こちらはいかがでしょうか。

篠田:
パレードは本当に作るのが大変でしたね……。いろいろな理由があって仕方なかったのですが、あの規模のものを作るにはスケジュールがキツかったです。

ただ、僕もそれをわかっていながら、まあまあヤバめのコンテを書いてしまって(笑)。自業自得だったかもしれませんが、それで監督の0b4k3さんたち諸共みなさん大変な思いをしてしまうことになってしまいました……。音楽も結構大変でしたよね。1回作ってはやり直して、みたいなこともあったりとか。

佐藤:
そうですね。反省点としては、やっぱりスケジュールですよね。

篠田:
正直、今回の状況では仕方なかったと思いますが、そのスケジュールに合わせたものを作らなくてよかったとは思っています。0b4k3さんたちも、スケジュールに余裕の無い中で、勢いで作っていたと思うので、みんな「良いものは作ってると」思いつつ、実際どうなんだろうとはなっていて、ずっと作業してるとわからなくなってしまうと言いますか……。

0b4k3さんたちは本当に素敵なものを作ってくれて、みんなで「良いものができた!」と話してはいたのですが、大混乱の中でみんなで作っていたので、やっぱり不安はありました。なので、初日に「泣いた」「感動した」といった感想を見たときは嬉しかったですね。

町田さんも僕も佐藤さんも、もともと音楽カルチャーにいて、音楽のことばかり考えて生きてきたような人間です。今回のパレードはその「音楽」を題材にしたストーリーだったので、その分思い入れも大きかったですね。さらに、そこにサンリオさんの「みんななかよく」というメッセージを絡めて、それがお客さんにも伝わっていた。「音楽は音楽!」という呟きをたくさん見かけましたが、もしかしたらそれが一番嬉しかったかもしれません。

佐藤:
そうですね。制作の途中途中で、修羅場みたいな状況は正直ありまして(笑)。ある日、打ち合わせの途中で用事のために退出したことがあったのですが、町田から「佐藤さん! ヤバいです! 戻ってきてください!」と連絡がありまして。でもその時は別の仕事に関わる会合にいたので「戻れないです!」と(笑)。「なんで戻ってこないんですか!?」って町田に怒られました(笑)。

町田:
結局のところ制作チームのみなさんが、最終的に「またやりたい」という気持ちになってくれるかどうかが一番だと思っています。0b4k3さんとReflexさんに聞いた感じですと、「納期をくれるならもう1回やる」と言っていたので(笑)その点はやっぱり嬉しいです。

佐藤:
0b4k3さん、第2弾もやりたいって言ってたよね?

篠田:
このあいだ、第2弾の入り方をどうするかをとうとうと語ってましたよ(笑)。

――すでに第2弾の構想があるのは楽しみでなりませんね……! ストーリーもそうですが、パレードは演出面も評判が良かったように思います。

佐藤:
SNSの反応を見ると、「パレードっていうよりもミュージカルじゃん!」「ショーじゃん!」といったお声も目立っていたので、バーチャル空間ならではの新しいコンテンツを作れたのではないかと思っています。

あとは「サンリオやプロジェクトメンバーの思いが伝わった」ことが何よりだと思っていて。前回のフェスではサンリオキャラクターを受け入れてもらえたことが嬉しかったのですが、今回はプロジェクトメンバーの思いと、サンリオのフィロソフィーも受け入れていただけた。そのことが、僕個人としては本当に嬉しく感じています。

先ほど篠田さんが仰っていたように、パレードは「音楽」を軸に作っていて、「いろんな音楽があってもいいじゃん」というメッセージを込めています。言い換えれば、それは「いろんな人がいてもいいじゃん」ということでもあります。そういった思いがパレードを見てくださった人に伝わり、受け入れてもらえたことは、本当にありがたいし嬉しく思います。

前回はなかったスポンサー施策と、一緒に楽しんでもらうための考え方

町田:
今のお話を聞いて思い出しましたが、「スポンサー」の文脈を入れたのは今回の新しいポイントのひとつですよね。ただ、篠田さんにそのことをお話した時は大反対されて。

篠田:
いや、大反対っていうわけではないんですけど、わかんなくて! もちろん大反対ではないですよ。はっきりした言葉で言うと、「マネタイズする部分がないと文化は廃れてしまう」という意識は、僕自身もいろいろな文化に関わってきてよくわかっていることなので。

ただ、VRやメタバースの商業面に関しては変なイメージがついてしまっている部分もあるので、そこをどう乗り越えていけばいいのかが正直よくわからなかったんですよね。そのあたりは自分もナーバスになりがちな部分だったので……大反対なわけじゃないですよ?(笑)

町田:
僕はやっぱり、フコク生命さんの例で本当にわかりやすく効果が出たと思っています。キャラクターの力もあったと思いますが、CMに出演されている斎藤工さんのことをユーザーさんが結構話していて(笑)。

ほかにも、自然と写真を撮ってもらえていたエントランスのフォトブースとか、パレードの前の時間に置いたことで、多く見てもらえていたスペシャルフロート撮影会とか。我々のキャラクターを媒介にすることで、あまり広告らしくない「コンテンツ」として楽しんでいただけた印象があって、とても良い取り組みになったなと思います。

篠田:
誰もそのことに対してネガティブな話をしていませんでしたよね。僕は残念ながら行けなかったのですが、ラジオ体操の時には一緒に踊ってくださったんでしたっけ?

佐藤&町田:
名誉会長の体操?

(1月14日~20日の毎朝実施された、「VRCラジオ体操/Questラジオ体操部」とのコラボイベント。スクリーンの映像で辻名誉会長が登場したほか、会場にはポムポムプリンくんをはじめとするサンリオキャラクターも訪れ、一緒にラジオ体操をする光景が見られた)

篠田:
そうそう。そういう部分でも盛り上がっていたとか、「自分たちがちゃんと考えて取り組んでいれば、みんなにも受け入れてもらえるんだ」というのは僕も感じましたね。

町田:
僕は普段からライセンスの仕事もしていて、今回のスポンサーの営業をライセンスチームがやってくれたのですが、協力してくれたリーダーが「おもしろいことをやろう」とよく話していて。企業が何かをやる際には、自分たちの伝えたいことだけを前面に出して押し付けようとするのではなく、おもしろいことをやろうとすれば、一緒になって楽しんでもらえるかもしれない。それが、篠田さんの問いに対する僕らの答えですね。

そういう意味で言うと、フコク生命さんは「創業100周年」というのがまずあったので、それをどうすればポップに伝えられるかをみんなで考えました。バブルガンのアイデアも「やっぱり楽しめるものがほしいよね」と。

(パートナー企業の撮影ブースの隣に設置されていた、バーチャルバブルガン。手に持ってトリガーを引くと、キティちゃんや企業ロゴの泡が発射される)

町田:
それこそ会長のラジオ体操も、みんなで考えるなかで出てきたアイデアのひとつです。会長は95歳なのですが、そのくらいの年齢の方が発するメッセージって、今の若い世代の人にとっては新鮮に映る部分もあると思うんです。今年は実現しませんでしたが、企業の代表の方に話を聞くとか、「スポンサー」の文脈でやりたいことはたくさんあります。

ドワンゴさんの「ニコニコ超会議」などもそうですが、「スポンサーが感謝される」ような文脈を体現できているイベントも、世の中には存在していると思うんです。企業さんも参画することで楽しめて、そこに来た人もおもしろがってくれる。そういった文脈のヒントを今回のフェスで得られた感覚があるので、開催してよかったなと思います。

――CMに関しても、パーティクルライブに関しても、前回以上にサンリオ色が強く出ているイベントになっていたと改めて感じました。

篠田:
そうですよね。フコク生命さんのケーキはケーキ自体がかわいいし、そこにちゃんとキティちゃんがいて、ナレーションも入っているから、自然と見ていられる。

ライブ前のキティちゃんががんばっているCMについても、「あのCMを見るのが毎回楽しみ」と話している人が結構いましたよね。「キティちゃん、がんばらせないでー!」って叫んでいる人がいたのがおもしろくて(笑)。それはやっぱり、サンリオさんのベースにある底力が本当にすごいからなんだろうなと思いました。

(バーチャルピューロビレッジで開催された「フコク生命presentsスペシャルフロート撮影会」。パレード開始前の約10分間、大きなケーキ型フロートの前で写真撮影などをして楽しめる)

サンリオバーチャルフェスの会場に「流しそうめん」!?

――今回のフェスでは音楽イベント開催前から非公式イベントも話題になっていました。YSSさんや93poetryさんといったアーティストが非公式にライブをするなど、VRChatコミュニティの方々が積極的に利用していましたが、そちらの感想をお聞かせください。

町田:
実を言うと、現時点では会社で大々的に謳っている施策ではなくて(笑)。チルパークのフリーエリア化はGugenkaの三上さんと話して、非公式イベントを許容し、実施する上での方法やルールについて告知していました。というのも、我々には「クリエイターさんが独自に発信することに強く向き合っていきたい」という思いがあるからです。

僕も実際に「#VfesFree」のハッシュタグのイベントに参加して、一発目の流しそうめんのイベントの主催の方と、自分の立場をお伝えせずに、お話してきたのですが、流しそうめんのイベントも流しそうめんのイベントで歴史があって、それをわかってファンの方が来てくれているらしいんですよね。

それこそ篠田さんが仰っていた「カルチャー」ではありませんが、そういう歴史のあるイベントをサンリオバーチャルフェスの会場で開催してもらえたことは、ありがたく思います。

町田:
そういえば聞いた話ですが、ALT3に関しても、ピューロランドとは別のワールドでALT3っぽいことをやるイベントがあったらしいですね(笑)。そういう独自の楽しみ方や文化も含めて許容して、このフェス自体がみんなで楽しめるお祭りになっていったら、それはそれで正解なんだろうなと。そのようなことを今回は強く感じました。

こうした取り組みの中からスターが出ることもあると思いますし。あるいは学生さんがそういう場所で何かを発表するとか、そういうふうに繋がっていったら、この業界自体にも良い影響が出るかもしれないなと。

――「場所を提供することで、クリエイターさんが何かをするきっかけになった」というのは大きな動きですよね。

町田:
はい。そこで何かをすることで、あの空間がその人にとっても思い入れのある場所になっていたら嬉しいです。

篠田:
エントランスでゲリラライブをやっていたmemexさんのところに、因幡はねるさんが来られて……なんてこともあったみたいですね(笑)。

そういう偶然が生まれたのも、今回のフロア開放もそうですが、サンリオさんがオープンな雰囲気で開催しているからなのかなと。こういう事象の積み重ねが、やがてカルチャーになるのだと思います。そうやって、VRでもストリートのようなことができるんだなと。

サンリオキャラクターとアーティストのコラボレーションが実現!

――有料ライブも盛り上がっていましたが、特にピーナッツくんとぐでたまなど、サンリオキャラクターとのコラボも大きな話題になっていました。ステージ上でのリアルアーティストの見せ方も自然で好評でしたよね。

(ルナステージより、ピーナッツくんのステージ。ぐでたまさんのほか、ぽこぽんさん&ぽんぽこさんもゲストとして登場した)

篠田:
よかったー! B2フロア、ルナステージの見せ方はすごく苦労したので、気になってたんですよね。それこそ、町田さんと言い合いになるくらい(笑)。

(VRでのリアルアーティストの見せ方は)口では僕も含めてみんないろいろ言えますが、実際にやってみないことには、どうしたって想像しきれないんですよね。しかも、そのテストに行くまでにもいろいろな工程があるので、時間がかかるんですよ。そのあいだは本当に不安でしたし、今のような形になるまでは僕はかなりイライラしながら進めていました。

佐藤:
してた!(笑)

町田:
よく話してましたよね。「やべえ……篠田さん怒ってるけど、俺らはこれが正解だと思ってるんだけどな……」って(笑)。

篠田:
そうそう! みんなは「これで良い!」って言っても、「ぜんぜん気に入らない!」って(笑)。

佐藤:
プリプロを含めて一番苦労したことのひとつかもしれないですね。

篠田:
そうですね。ルナステージは、やり方を変えたことで「サンリオキャラクターとアーティストが絡めるようになった」のが前回との大きな違いであり、よかった点だと思います。あとはモニターを増やしたことで、「いろいろな角度から自分の見たい場所で楽しめるようになった」というのも、自分的にはもう1つのポイントでした。

当日はあまりB2フロアの呟きを見かけなかったのでちょっと不安だったのですが、2日目が終わってから、スチャダラパーとポムポムプリンの写真とかが結構タイムラインに流れていますよね。

(ほかにもナナヲアカリさんのステージにバッドばつ丸くんが登場するなど、B2フロアではサンリオキャラクターとのコラボが盛んに行われていた)

佐藤:
「今夜はブギー・バック」で終わって、プリンがいて、良い締めだったなと思います。ステージに関しては、Moguliveさんに取材していただいた前回の記事で、篠田さんが「なに言ってんの、この人たち!?」ってコメントしていたのがおもしろくて(笑)。

篠田:
いやー、マジで最初は「そんなことできるわけないじゃん」「なに言ってんだろうこの人たち」って思っていたので(笑)。

佐藤:
結果論ではありますが、最終的にはリアルとバーチャルをうまくマージして、1つの手法として提示することができたのではないかな、と思います。

篠田:
そういえばALT3では、VJのらしおさんが、Twitterに投稿されていたサンリオバーチャルフェスの写真を500枚ぐらい持ってきて、それでVJをしていたと聞きました。すごい盛り上がりだったらしいですよ。

町田:
フェスって、僕らの知らないそういう話があるのがいいですよね。VRC学園で講義をさせてもらった時にも話したのですが、プロデューサーである自分は全体を知っておかなければいけないのに、知らないことが多いんですよ。でも、それってつまりは「見るものがたくさんある」ということなので、良いことなんだろうなとプラスに捉えています。

(フェスの期間中、チルパークで開催された私立VRC学園のイベント「みんななかよく課外授業」。町田さんは1月20日に講師として登壇した)

気になる「次」は……?

――全員が追えないくらいのボリュームのコンテンツがあり、いろいろな場所でドラマがあったという印象です。さて、最後の話題ですが、サンリオとしては、今後もVRの施策を続けていくのでしょうか。

町田:
イメージしているものはありますというのも、今回のフェスで答えが一定程度は見えた……というか、「次の在り方はこれだろうな」と思うところがありまして。

お話したかぎりでは、佐藤や篠田さんの感覚とも共通していて、おそらくチームメンバーみんなが同様の実感を得たんじゃないかなと感じています。それが何か……というのは言えませんが、目指すものは見えた気がしています。だからまずは「会社を説得して、もう1回やれるようにする」ところからですね。

篠田:
イベントが終わってから2日経ちますが、この2日間、VRChatに入るとみんなから言われる一言目が「次、やるんですか??」なんですよ(笑)。まだ先のことはわかりませんが、ここにいるメンバーはみんな、次を開催できるようにがんばっていろいろアイデアを考えていきたいと思っています。

佐藤:
そうですね。もちろん、町田を筆頭に取り組んでいるプロジェクトなので、町田が次回開催を握れるかどうかが一番重要ではあります(笑)。

一方で、個人的には引き続き「リアルとバーチャルをどう繋げていくか」が重要だと思っています。コミュニケーション上でも地続きになっている取り組みを考えるにあたって、「コミュニケーション」をより拡張する方向でなんとなくその青写真を描いている、という感じですね。あとはNakayoku Connectもそうですが、フィジカルのハートライトがバーチャルでも使われているのは、クロスオーバーしてるような感じで非常に良いなと(※「ミラクル♡ライト」は、リアルのピューロランドのパレードでも使われているアイテム)。

ただ、予定調和になってしまうのはダメだとも思っています。今後も回を重ねていくことになった場合、「あー、1回目と2回目のフェスの延長だなあ」と思われてしまうのは避けなくちゃいけない。そこをケアしながら、予期せぬ驚きや感動を伝えていきたいな、とはぼんやり思っていますね。とりあえず「すべては町田が握っている」と思ってもらったら大丈夫だと思います(笑)。

篠田:
佐藤さんの話の延長にあるのかもしれませんが、アーティストの出し方にも新しい見せ方があるんじゃないかとは思っています。

前回は「リアルアーティスト」「VTuber」「VRChatの人」といった形で階層を分けていましたが、今年はそこをちょっと混ぜられたはずですので。ステージに関しては今あるフロアを引き続き活かしていくことになるかと思いますが、参加するアーティストの出演方法も含めて、新しい見せ方ができないか――とぼんやり思っていたりはしますね。

町田:
ただ、これだけは伝えておきたいのですが、閉じた世界になってしまうのは避けなければいけないと考えています。

今回、チルパークのステージをYouTubeチャンネルでも配信したのですが、配信チームは「どうやったらもっとカッコよく撮れるのか」をずっと試行錯誤してくれていました。だから、2日目の最後のほうにいくにつれてカメラワークのクオリティが高くなってるんですよ(笑)。

そういう努力が演者さんにも伝わったように感じていて、スタッフからすれば嬉しいんですよね。そうやって、みんながそれぞれの場所で盛り上げようとがんばってくれている。それがこのフェスだと強く感じているので、スタッフにもクリエイターさんにも頭が上がりませんし、ひたすら感謝しています。

その上で――こう言うとおこがましいのですが――この世界にいるクリエイターのみなさんが、他の場所でも活躍するためのお手伝いをしたい。この世界の魅力を伝えつつ、スターが飛び出していく手助けをすることも、僕たちのミッションのひとつだと感じています。だから、そのためにもフェスを開催したいです。

――サンリオのクリエイターファーストなスタンスはこの2回のフェスで十分に伝わっているでしょうし、次は出演者側で参加したいと思っている人も少なくないように感じています。次回の企画に期待しております。

※アンケート実施中!
https://twitter.com/SANRIO_Vfes/status/1617162668472680448

・公式サイト:https://v-fes.sanrio.co.jp/
・公式Twitter:https://twitter.com/SANRIO_Vfes


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