半導体大手のクアルコム(Qualcomm)は、AR開発キットを手掛けるWikitudeを買収すると認めました。買収額は非公表です。
クロスプラットフォームのSDK提供
クアルコムは、スマートフォンなどモバイル機器向けチップセットを手掛けています。VR/ARデバイス向けチップセットの開発にも注力しており、Oculus Quest 2やPico Neo 3などの一体型VRヘッドセット、ARデバイスではHoloLens 2やNrealLight対応のスマートフォンなど幅広く使用されています。
一方のWikitudeは、2009年創業でオーストリアに拠点を置く企業。世界初のモバイルARアプリリリースを謳う古参企業で、ARソフトウェア開発キットを手掛けています。
その特徴は、Android、iOS、Windows、スマートグラスとプラットフォームを問わず利用できる点です。開発者にとって、異なるデバイスへのアプリケーション展開が容易というメリットがあります。
クアルコムとは2019年から協業しており、当時はクアルコムのSnapdragon 855をベースとしたモバイルプラットフォームに、WikitudeのARプラットフォームを最適化しました。
独自SDKも視野?
今回の買収について、原稿執筆時点で両社から公式なプレスリリースは出されていません。しかしクアルコムの広報担当は「クアルコムがWikitudeを買収することは間違いない(Qualcomm can confirm the acquisition of Wikitude)」と言明。またWikitudeの公式サイトには、”We are Wikitude, a Qualcomm company”の表記も見られます。
2021年3月、クアルコムはVR/AR用のSnapdragon XR1 Platformに基づく初のARリファレンスデザイン「Snapdragon XR1 AR Smart Viewer Refence Design」を発表しました。このリファレンスデザインは、スマートフォン、Windows PC、プロセッシングパックに接続するもので、Snapdragon搭載デバイスとの接続に最適化されています。
買収により、両社がどのように協業を深めるのかは現時点で不明です。しかしクアルコムがデバイスのリファレンスモデルに加え、独自のAR開発キット提供に乗り出す、という可能性も考えられるかもしれません。
クアルコムの動向
(参考)Auganix