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VTuber 2023.11.16

アイドルマスターの挑戦的なプロジェクト「vα-liv(ヴイアライヴ)」は何を目指すのか? 「PROJECT IM@S vα-liv」プロデューサーインタビュー

2023年4月から始動したアイドルマスターの新規アイドルプロジェクト「PROJECT IM@S vα-liv(ヴイアライヴ)」。現在、灯里愛夏上水流宇宙レトラの3名の候補生が所属し、アイドルとしての“デビュー”を目指して、活動を展開している。

このヴイアライヴには大きな特徴がふたつある。ひとつは、アイドルマスターシリーズとしては初めてのVTuber的な活動スタイルであること。候補生はそれぞれにYouTubeチャンネルを開設し、歌を披露したり、ゲーム実況に挑戦したりと、リアルタイムな生配信を活動のメインとしている。チャット欄にいる視聴者(プロデューサー)とコミュニケーションをとりながら、アイドルとしての成長を目指すコンセプト自体、これまでのアイマス作品とは大きく雰囲気の異なるものだろう。


公式サイトより引用

もうひとつは、視聴者(プロデューサー)が彼女たち3名を審査するという点。定期的に行われる「投票」の結果で、彼女たちがアイドルとして成長しているかを測っているのだ。その結果は、公式サイトでYouTubeチャンネルの数値データなどとともに、事細かに表示され、現在の活躍ぶりが分かるようになっている。最終的には、プロデューサーに評価された者がデビューを果たせるというルールであることも相まって、コンセプト発表当時は大きな話題を呼んだ。

そういった意味で、このヴイアライヴの企画は、非常に挑戦的な内容であると言ってよいだろう。このプロジェクトは一体何を目指しているものなのか、現在の活動でどのようなドラマが生まれているのか。「PROJECT IM@S vα-liv」プロデューサーの勝股氏に詳しい事情をうかがった。

――昨年12月に発表、今年4月に始動し、大きな話題となったヴイアライヴですが、このプロジェクトの設立経緯についてお聞かせください。

勝股:
経緯を語る前段として、まずはバンダイナムコエンターテインメントと「アイドルマスター」シリーズについて説明させてください。

総合エンターテインメント企業であるバンダイナムコエンターテインメントの中で、「長く深く遊べる良質なコンテンツと多彩なエンターテインメントは世界中のファンの期待を超える」という方針のもと、「アイドルマスター」シリーズも同様、ゲーム事業に閉じない幅広い事業を展開しています。

その中で昨年、シリーズにおけるIP軸戦略「PROJECT IM@S 3.0 VISION(プロジェクトアイマス サードビジョン)」を発表いたしました。「PROJECT IM@S」とは「アイドルマスター」シリーズにおけるメディアミックス推進プロジェクトの総称です。たとえば、アニメやライブなど、主軸であるゲーム展開から派生したさまざまなコンテンツ展開のことですね。「アイドルマスター」もおかげさまで18周年を迎えましたが「20周年となる2025年を見据えて、さらに進化させていこう」という構想です。

「PROJECT IM@S」は、これまで「2nd VISION」を掲げて10数年やってきたのですが、これまでの取り組みに加え、「アイドルプロデュース体験」×「複合現実」によって、アイドルたちの活動の幅を広げ、お客さま(=プロデューサー)の“プロデュース活動”の楽しみ方や可能性を広げるため、今年の2月の合同ライブを皮切りに「3.0 VISION」へとアップデートすることになった次第です。

ヴイアライヴは、その中の「“MR”-MORE RE@LITY-プロジェクト」(以下、MRプロジェクト)を主軸として、「3.0 VISION」のコンテンツの1つとして立ち上げたものです。アイドルたちが僕らの世界で活躍できる場を増やしていくことで、プロデューサーの方々に、もっと身近に、もっと臨場感を持って、日常生活の中で「アイドルマスター」シリーズの世界観を楽しんでいただける体験を推進する試みとなります。

――ヴイアライヴは従来の「アイドルマスター」シリーズとは異なり、リアルタイムでのコミュニケーションを重視したVTuberのようなスタイルが特徴のプロジェクトとなっています。なぜこのような方式を採用したのでしょうか?

勝股:
ヴイアライヴに関しては、立ち上げる際に大きく分けて2つの構想の軸がありました。1つが、「シリーズの世界観を、臨場感を持って地続きに感じられるコンテンツにする」こと。先ほど「MRプロジェクト」についてご説明しましたが、バーチャルとリアルが混ざり合う世界観を楽しんでもらうMixed Reality(複合現実)を使った施策としては、「THE IDOLM@STER MR ST@GE!!」などの取り組みを以前から実施していました。

そこから一歩進んで、臨場感をさらに強く感じていただけるような完全新規コンテンツとして、ヴイアライヴは、「私たちと同じ一方通行の時間軸を共有できる地続きの物語」に挑戦しています。

もう1つの軸は、「アイドルたちが活躍の場を広げつつある」という考えです。コロナ以前と以後で世の中がどのように変わったかを考えると、特にVTuberの存在によって、二次元ルックのタレントと接する機会がどんどん日常的になってきたと捉えていました。

それまでは「好きなキャラやタレントに会える」ことそのものが1つの貴重なエンタメになっていたのに対して、今やそれが日常になってきていていますし、アイドルをしている方の中でも、SNSや動画投稿サイトで、当たり前のように動画や配信を行っています。

それは見方を変えると、「アイドルたちが輝ける活動の場所が新たにできた」と捉えることもできます。ヴイアライヴが「ライバー活動からアイドルを目指すアイドル候補生の物語」という形になったのも、そのような背景からでした。

今までの「アイドルマスター」には、原作であるゲームの存在がありましたが、キャラクターたちの新しい活躍の場として、「ライバー活動」を主軸にできないか。vα-livでは、そのようなマルチIPの新しい形を提案していければと考えています。

――「VTuberファンにも『アイドルマスター』というコンテンツに触れてほしい」「日頃からYouTubeを見ているような視聴者層にも広げていきたい」という思惑はあったのでしょうか。

勝股:
もちろん、そのような思いもあります。「アイドルマスター」シリーズとしても、どんどん仲間やプロデューサーさんの輪を増やしていきたい、という思いは根本にありますので、今回のヴイアライヴに関しても同様です。また、アイドルの活躍の場を広げることによって、新しいプロデューサーのみなさんに会いに行くことは、PROJECT IM@Sの目標でもあります。

ただ、その場所をメインに選んだのは、あくまでも、新しい表現に挑戦するうえで魅力的だと思ったからです。その結果、VTuberの皆さんをはじめとするストリーマーの皆さんたちとの懸け橋に、ヴイアライヴがなれればいいなと思っています。

――ヴイアライヴの発表は本当に予想外でしたし、実際に驚きの声も多く聞かれていたように思います。今回のプロジェクトはバンダイナムコエンターテインメントさんにとっても大きな挑戦であるように感じているのですが、いかがでしょうか。

勝股:
そうですね。元総合プロデューサーの坂上(陽三)氏の言葉を借りる形にはなるのですが、「みんなが想像する、期待どおりのものを出すのは当たり前」だと思っています。その予定調和を超えないかぎりは感動も生まれないし、新しいものもできない。そのような思いが強くあります。そのため「想像の斜め上を超えよう」という言葉をよく使われるのですが、そういう意味では今回、いろいろな驚きはあったと思うのですが、実際にそう言っていただけたことは、まずは斜め上を目指す挑戦のスタートとして、前向きなこととしてありがたく感じております。

私自身、実は入社時から10年ほどシリーズに携わっておりまして、やはり、長年にわたって展開しているIPには文化と歴史の積み重ねがありますので、どうしても「かくあるべき」という、ある種のルールのようなもので縛ってしまう局面があります。しかしながら、すでにある枠に縛られず、時流に乗って挑戦できることは、「アイドルマスター」シリーズの強みだと感じています。

「余白」によって筋書きのないドラマを生み出す、ユーザー参加型の投票&パラメーターシステム

――ここからはヴイアライヴのシステムについて詳しくうかがえればと思います。ヴイアライヴでは、3名のアイドル候補生それぞれに投票をする機会が設けられており、その結果がデータとして公式サイトに反映されています。このシステムが生まれた経緯についてお聞かせください。


公式サイトより引用


公式サイトより引用

勝股:
このシステムにした背景としては、担当するアイドル候補生の成長を“臨場感”を持って実感していただき、共感しあえるようにしたかった、というところにあります。

このプロジェクトで特にこだわっているのが、生ものとしての臨場感、つまり「筋書きのないドラマ性」です。「生」の配信だからこそ生まれるドラマによって迫真に迫ることで、生の感動に繋がるのではないかと思ったのです。

たとえば、過去に携わらせていただいた、星井美希のSHOWROOM配信や「MR ST@GE!!」では、「プロデューサーさんとアイドルの心が“繋がる瞬間”」というものを強く感じたことがありました。発信者と受け手が一体となってその場の感情を共有することが、臨場感に繋がり、大きな感動が生まれていると感じました。

そのエモさと大きな感動体験を、いかにこのコンテンツに落とし込めるか、ということを目指した取り組みの一つとして、迫真に迫る“筋書きのないドラマ性”の要素をつくりたい、それが投票システムや数値のオープン化を採用した大きな理由です。

プロデューサーの方々も参加できる介入の余白をあえて作ることによって、僕らのハンドリングも効かないハラハラ感が生まれ、その予測不能性によって臨場感が生み出せるのではないかと思ったのです。

――そもそも「アイドルマスター」といえば、「プロデューサーがアイドルをプロデュースする」という構造が基本としてあります。それを生配信に落とし込むにあたって、今回のようなシステムを採用したのではないか、と予想していたのですが、いかがでしょうか。

勝股:
その通りです。まさにそういった意味で、プロデューサーさんと一緒に作る共創型のコンテンツにしたい、という思いはありました。

プロデューサーさんと一緒に「アイドルを育て」ながら「サクセスストーリーを紡ぐ」、あくまでもPROJECT IM@S名義にはなっていますが、シリーズの根幹である、“アイドルプロデュース体験”を提供する、という姿勢は今回も変わりません。

――先ほどお話にあった「介入」と「余白」について、もう少し詳しくうかがいたく思います。ヴイアライヴの審査システムには中間発表がありますが、その結果がどうなるかは誰にもわかりません。結果がわからないからこそお互いに競い合うし、ファンも誰を応援しようか悩む。そこにある種のドラマ性が生まれて、結果が発表された瞬間にも、また思っていた筋書きとは異なるドラマが始まるかもしれない。そういった意味での「介入」と「余白」ということなのでしょうか。

勝股:
そういうことです。ただ、システムに「投票」を取り入れたことで、当時の反省として「ふるいにかけるための人気投票」のようなイメージが先行してしまっていた部分もありました。「人気がなければ落とす」といったイメージですね。

投票システムに関しては、成績や能力値パラメーターといった現在地を知るための共通の指標や頑張る目的として成績や能力値パラメーターとセットで考えていた演出の一つと考えており、実は裏で候補生が向き合っている活動に伴う様々な「数字」を表面化することで「プロデュース体験」の臨場感を高めたかったのが目的でした。

なので「人気投票をしたかった」というよりは数字の移り変わりによって「最後まで結果がわからないオーディションの臨場感と、その過程で生まれるかもしれないドラマを楽しんでいただきたかった」というのが、我々の思いとしては近いかもしれません。

実際、候補生たちもプロジェクトには、高いモチベーションで取り組んでもらえていますし、この投票数は「プロデューサーさんが『おもしろい!』と認めてくれた数」であり、ヴイアライヴというプロジェクトの熱量のバロメーターとして捉えております。

ありがたいことに、現在、どんどん投票数も上がっておりますし、プロデューサーの皆様が色々な方々にお薦めしてくださったりしているおかげもあって、熱量はどんどん高まってきていると思っております。

実際には、2月に行われる最終審査の結果次第で全員がアイドルデビューをできうるシステムとなっておりますし、プロジェクトとしてもそれを目標にして制作を行っています。

――ヴイアライヴの場合は、アイドルの活動や個性に焦点を当てたアンケート項目が多く、その結果を数値化したデータも丁寧です。そのためデータを元にして、「どのステータスを伸ばしていくと、より活動が盛り上がるようになるか?」を、アイドルとプロデューサーが一緒に考えることのできる仕組みになっている印象です。

勝股:
ありがとうございます。そう捉えていただけていて嬉しいです。

最初にもお話しましたが、このプロジェクトは「プロデューサーさんたちと一緒に、1人のアイドルを育てる過程を共感し合え、実感できる」ことが大切だと考えています。そのうえで「3人ともアイドルとしてデビューしてほしい」という思いが前提としてありますし、候補生の成長する過程を見せることが重要なのかなと。あくまでもあの数字はボーダーラインではなくて「指標」という意味合いが強く、だからこそ、パラメーターなどの要素を掲載しています。

可視化されたパラメーターを見て、候補生たちと一緒に笑いながら、自分たちの成長を一緒に喜べるような状況をつくる。同時に、自分たちのちょっと至らないところを一緒に悔しがれるようなシステムとしても見せたかったので、あえてYouTubeチャンネルの動向や数字も赤裸々に書いています。

――ちなみに現在、3名の候補生の方々はご自身のデータを見て、ポジティブに捉えていらっしゃるのでしょうか?

勝股:
最近もパラメーター投票の結果を出しましたが、2つの意味で好意的に受け取ってくれていると思っています。1つは、候補生自身が今後向かうべき方向性について候補生とプロデューサーとの共通の指針になること。もう1つは、純粋にパラメーターの要素が話題に結びついていることです。

たとえば今回、灯里愛夏の知力が、「6」→「31」に上昇し、比率としては400%もアップしていることから、本人が純粋に喜んでいる姿が印象的でした。レトラも、コミュニケーションの上手さから「IQが高そうだ」というイメージが生まれ、今回は800%以上の上昇率を見せていました。なのに、2人の合計を足しても、実は宇宙の知力の半分もいっていない。

そういった一連のパラメータの変動で喜んだり、笑ったりできますし、その差分がそれぞれのキャラクターの個性にもなります。ライバーである以上、目に入る視聴者数などの数字とは真剣に向き合う必要はありますが、パラメーター要素を見て、前向きになれている部分も間違いなくあると思っております。

――アイドル候補生とプロデューサーを前向きにするシステムとしても、はたらいている面もあると。

勝股:
今プロジェクトに対して「過酷な競争」というイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれませんが、アイドル候補生のみなさんには楽しみながら取り組んでいただけていると、我々は考えております。もちろんプレッシャーはあるでしょうし、外からはシリアスに映る部分もあるかと思いますが、データを示すことで、「ここは私の強みだから負けたくない」という強みの発見や、自己成長のモチベーションも生まれていますし、競争を越えて「私の課題はこれだとわかったからこの数字を伸ばしたい」という自己実現のための指標にもなっているのです。

――VTuberの方にも、ライブ配信の「数字」をシビアに捉えている方がとても多い印象です。そういった意味で、立っている土俵がとても近いと感じました。

勝股:
ヴイアライヴの候補生がデビュー後に目指している理想像として、「ライバーアイドル」という存在があります。

先にも触れた通り、現在は才能のみならず、それを「自ら発信できる」こともマルチタレントとして活躍するための必須スキルとして重要になってきておりますし、そういった意味でも、配信者としても一人前になってなってほしいと思っております。

このプロジェクトは、プロデューサーの皆様に、アイドルプロデュースでありつつも、ライバーのプロデュースの側面も、ヴイアライヴならではのプロデュース体験として楽しんでいただきつつ、そこで生まれるドラマを目撃してほしい。そのように考えております。

同じ目標に向かう仲間であり、比較されるライバルでもある

――ヴイアライヴでは現在、灯里愛夏さん、‎上水流宇宙さん、‎レトラさんの3名が活動中で、中間発表を経て、それぞれのステータスも高まりつつあります。運営側から見て、3人の活動の手応えはどのように映っているのでしょうか。また、それぞれのタレントへの印象をお聞かせください。

勝股:
運営目線で印象を語ってしまうと、キャラクターのイメージの定着に繋がってしまうので、一般的な話に留めてお話させていただきます。

まず宇宙さんから話すと、彼女は6月までの1クォーターから7~9月の2クォーターにかけて、パラメーターを一番伸ばしている候補生です。特にゲーム実況を始めてからは顕著に伸びていて、一般的なライバー活動においても主軸を担っている「ゲーム実況」が、彼女の強みとして現れつつある。そのことが数字を見ても実感できますし、ライバーの自力がかなりついてきているのだとわかります。

‎愛夏さんに関しては、今まではある種の「三枚目キャラ」や「女の子が大好き」といったムーブなどが目立っていて、個性が非常にわかりやすく出ているキャラクターでした。加えて審査員特別賞を最も多く獲得していることから、「ここぞ」というときの勝負強さも持ち合わせています。また、また、プロデューサーさんのフィードバックなども拝見し、ホラーの実況配信やTGSの活躍を通して「がんばる姿勢」が評価されており、彼女自身の個性が武器として広がってきているように感じています。

レトラさんに関しては歌枠を通して披露された「歌唱力」が最初から圧倒的な特徴としてありました。今回の投票ではパラメーターが振り切れるほどの数値を記録していましたが、同時に、配信を通して本人のパーソナルな部分と向き合うなかで、豊かな発想力や時折垣間見える応用力なども特徴として出てきているようです。特にレトラさんは年長者ということもあり、3人で集まったときの良い意味でのムードメイク力やバランス感覚も評価されてきている印象です。

総論としては、活動を通して際立ってきた本人たちの個性が、お互いに被ることなく、三者三様の魅力として発揮され始めています。そのような現状も含めてプロデューサーさんたちからも認められつつあり、またチームとしてもまとまりができているように感じております。

――最初にヴイアライヴの概要を拝見したときは「3人で競い合うことになるのか」という印象も少しあったのですが、実際に活動を追うなかで、「チームとしての強さ」のようなものが表に出てきているように感じています。「3人で団結して、お互いを支え合うような形でデビューする」イメージもあるのですが、いかがでしょうか?

勝股:
「全員がアイドルを目指して、全員がデビューする可能性がある」というところが、やはり肝になっているのかなと。同じ目標に向かう同志であると同時に、ライバルでもある。お互いに切磋琢磨しながら高め合っていく中で磨かれた個性がかみ合って、チームワークが生まれてきているように思います。

――3人の共同チャンネルでは、講師的なゲストを呼んで、講義形式でアイドルに必要なスキルをレクチャーする配信が実施されています。この公式番組の狙いはどういったものでしょうか?

勝股:
公式番組をやらせていただいているのは、「アイドル育成プロジェクト」である、という軸を明確に打ち出すことにありました。

成長のための課題を与えられ、アイドルとして、プロのタレントとしてのマインドを磨いていくなかで、ライバーとしての大事な要素も学んでいく。候補生たちががんばる理由を作る機会であると同時に、プロデューサーの皆さんと一緒に並走できる共通のお題を示し、一緒に勉強しながら、アイドルのレッスンの過程を共有することで、プロデュース体験の実感をより強く持っていただけると思ったのです。

「とにかくアイドルを目指せ」とだけ言われても困ってしまいますが、「今月は何が課題なのか」というテーマが示されていれば、それをクリアするためにはどうすればいいのかを考えながら取り組むことができる。テーマを通して日々の活動に取り組むことで、本人たちの成長に繋がればと考えています。

しかも成功しているプロの方を呼んで直々に教えていただけるので、「教養バラエティ」のような楽しみ方もしてもらえるのではないでしょうか。芸能界を目指している方などに「参考になるな」と思ってもらえたら嬉しいですし、ヴイアライヴ自体も「みんなで夢を応援し合える場所にしたい」という思いを持って取り組んでいます。

また、この番組はMCを立てていることも特徴でして、お笑いコンビの土佐兄弟さんのMC力のおかげで、バラエティとしての番組クオリティが格段に上がるだけでなく、候補生だけでは出せない良さを引き出していただいています。普段シリーズの配信番組はMCを声優さんが進めたり、バンダイナムコの担当社員が務めたりしていたのですが、こういったところも、今までにないアプローチだと思っています。

――たしかに「アイドル育成番組的」のような雰囲気は感じていました。ちなみに候補生の配信を見ていると、感極まって泣いてしまっている場面を目にすることがあります。皆さんの真剣さが垣間見える一幕だと思っていますが、運営としては、そのような場面をどのように見られているのでしょうか。

勝股:
もちろん、彼女たちが泣くことに関しては、シナリオとして「ここで泣け」と指示しているわけではないので、想定外のこととして、運営側はティッシュを用意したり「配信続行できる、できない」といった相談などで、僕も自分の出番のことはそっちのけでバタついていたりします(笑)。 ある意味、運営としてはハラハラする部分でもあるのですが、それもまた、全員が真剣に向き合っているからこその気持ちの表れなのだと思っていますので、少しでも彼女たちの本気度が伝わっていたらうれしいなと思っております。

また、本人たちが一番元気づけられる、勇気づけられるのは、配信やSNSで届けられる、プロデューサーの皆さんからの声だと思っています。彼女たちの本気の気持ちを支えてくださっているのは、やっぱりプロデューサーの方々なので、彼女たちの成長を、引き続き見守ってくださると有難いです。

「“天海春香”のいる世界」で生まれた新しいドラマと、これからのヴイアライヴ

――9月の「Official Lesson」で天海春香さんが特別講師として出演された際に、号泣してしまった上出流宇宙さんに対して、現役アイドルの「天海春香」としてコメントをされていた姿が印象的でした。SNSでも大きな話題になっていましたし、まさにvα-livだからこそ生まれたドラマだったと思うのですが、運営側としてはどのような感想を持たれたのでしょうか。

勝股:
「天海春香さんはすごい……!」と思いました(笑)。本当に、アイドルとして最前線で頑張り続けている彼女だからこそ言えるコメントだったと思っています。

宇宙さんが感極まってしまった場面については、彼女の中にも嘘がなく、気を持って自分自身を本気で表現しようとしたからこその涙だったのかなと。だからこそ、間違いなく春香さんの琴線に触れるものがあって、それが見ていたプロデューサーの皆さんの琴線にも触れるものがあったからこそ、広く話題にしていただけたのかなとも思います。

もちろん運営としては「がんばれ!」という気持ちでいっぱいで、実際歌いきれなくて悔しい気持ちもありましたし、しっかりとやりきった二人に対しても「頑張ったね! すごいね!」と、ご視聴いただいているプロデューサーさんと同じ思いで見ていたのですが、振り返るとあの瞬間は、プロジェクト当初から実現したかった“みんなが繋がる”瞬間だったと思いますし、目指していたコンテンツの形が見えた瞬間だったと感じています。

今回は宇宙さんのくやしさがトリガーとなりましたが、もちろん、次は喜びで繋がれれば嬉しいです!

https://www.youtube.com/watch?v=1p2yhjY0BVQ

――そもそも「天海春香さんが『天海春香』として登場し、現役のアイドル候補生と絡む」こと自体が、特殊な光景でした。こういった試みはどういった発想から生まれたのでしょうか?

勝股:
もちろん「ヴイアライヴの候補生が活躍する場所には、天海春香たちもいる」ので、必然として彼女にもいつかは出演していただきたいと思っていました。

これまでヴイアライヴを主語に語っていましたが、各プロダクションのアイドルを主語としたときにも、彼ら彼女らがアイドル候補生と触れ合うことで「普段、自分たちの活動の中では見せない一面を引き出せるんじゃないか」という期待感はあって、候補生の活動によって、関わるアイドルたちのそういった一面がどんどん引き出せることも、このプロジェクトの魅力であり、醍醐味の一つだという風に捉えています。

現在は「MRプロジェクト」は“MORE REALITY”を志向するプロジェクトとして進めているのですが、その根本には「Mixed Reality」、虚構と現実が溶け合う新たな世界観表現、いわゆる複合現実の拡張が1つのテーマとしてあるとも捉えています。なにがバーチャルで、なにがリアルで、といった二元的な解釈を越えた感動体験を味わえる、そんな世界観に可能性を感じていますし、今回の配信で、改めて目指すべきものは間違っていないという手ごたえも感じました。

これまでは「アイドルマスター」という世界観と我々の暮らす「リアル」という世界観がそれぞれあって、その二つの世界観の境界線にある余白を、「アイドルマスター」側の世界観から埋めていくといったアプローチだったのですが、今回のヴイアライヴではそれを逆転させています。つまり、リアルから「アイドルマスター」の世界観に向けて余白を埋めていくアプローチをしている構図ですね。

その試みの過程で生まれる世界観の重なり合う空間が、今後どれくらい広がっていくのか。そしてその空間が、どのようなコンテンツやドラマを生み出すのか。「世界観の拡張」への挑戦の中で生まれた一つの結果としてあの公式番組での出来事があるのではないかと思います。

――今までは「『アイドルマスター』というIPが現実に影響を与える」という形で動いていたものが、ヴイアライヴに関してはその「逆」があるかもしれない、ということでしょうか。今後、彼女たちが成長していくにつれて、「アイドルマスター」という世界観や物語自体に影響を与えて、何か大きな変化や広がりを生み出す可能性があると。

勝股:
そのようなことも期待してのプロジェクトですし、「PROJECT IM@S」の役割の一つだと思っています。新しい展開が、世界観や物語の拡張を生み、さらに展開が広がっていく、という循環の中で、新しい可能性を生み出すために、まだまだ挑戦していきたいです。

――その世界が広がっていくと、今までゲームのキャラクターだと思って接していた人たちが、こちら側に手を振って話しかけることが普通の世界になるかもしれないし、逆に現実世界で活動していたキャラクターたちが、ゲームに登場して違う成長の姿を見せる……といったこともあり得るわけですね。

勝股:
そのような可能性が新しく生まれ得る空間を、どれだけ作ることができるか。「3.0 VISION」はそれが1つのテーマになると思っています。

――今後「アイドルマスター」は、ゲームや漫画、アニメといった従来のメディアミックスだけでなく、ライバーの生配信などにまで広がることになり、初めてコンテンツに触れる人たちに向けた入口が非常に増えていくことになるかもしれません。

勝股:
それこそ予想の斜め上を行くような、何か新しいアプローチが生まれるかもしれません。今はまだそこに可能性をかけて強引にこじ開けている段階なので、茨の道をかき分けて開拓している感覚もありますが。笑 何が飛び出るかわからないドキドキ感の中で、「次はどうなるんだろう?」とワクワクしながら楽しめるコンテンツになれば、嬉しいですね。

――ありがとうございます。最後の質問になりますが、ヴイアライヴのプロジェクトを長期的に展開するにあたっての今後の運営方針と、現状の課題感や目標についてお聞かせください。

勝股:
まずは候補生たちのデビューに向けて、活躍されているアイドルの皆さん、配信者の皆さんと肩を並べられるように、より大勢のプロデューサーの方々に愛されるように、引き続き運営一同、がんばっていければと考えております。

その過程で、ヴイアライヴだからこそできることに挑戦し、「アイドルマスター」シリーズにおける新機軸を自分たちで開拓する、切り込み隊長的な存在になれたらと思っています。「こういうことがヴイアラができたら、これもできるかもしれない」「そういうのやるのおもしろいね!」みたいなものが、1つでも多く作れるといいなと。斜め上を行くおもしろさを提供し、ヴイアライヴの今後に期待していただけるよう取り組んでまいります。

最後に、プロデューサーの皆様、駆け出しのプロジェクトでございますが、日頃よりアイドル候補生を応援し、支えて下さり本当にありがとうございます。

今後のヴイアライヴの展開もお楽しみいただきながら、引き続き、プロデュース、よろしくお願いいたします。

――今後の活躍にも注目させていただきます。

vα-liv公式サイト
・灯里愛夏YouTubeチャンネル
・レトラYouTubeチャンネル
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