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業界動向 2022.04.04 sponsored

「メタバース」は雇用の課題を解決できるか?パーソルマーケティングが注目する理由

2022年1月、総合人材サービスを展開する大手、パーソルマーケティング株式会社がメタバース市場への参入を発表。専門部署を新設し、PwCコンサルティング合同会社との協業体制で、メタバース市場での人材サービス事業を4月から本格展開する。

一体、パーソルマーケティングはどのような理由からメタバースへの参入を決意したのか。人材サービスとメタバースが組み合わさることでどのような変化が期待できるのだろうか。今回は、パーソルマーケティング株式会社メタバースデザイン事業部の川内浩司氏に詳しい話を聞いた。

川内浩司氏プロフィール
高知県出身。27歳までITエンジニアとして転職を繰り返す。28歳、起業。29歳、現パーソルグループ参画。36歳、新規事業の立上げ。直近はIT事業部・集客事業部を兼務。2022年1月より、メタバース事業の責任者として歩み始める。

労働環境の変化、多様化するはたらく人のニーズに応える「メタバース」

――メタバースへの参入を発表するまでの詳しい経緯をお聞かせください。

川内:

メタバース事業に対する関心は2021年の秋頃から持っていたのですが、そこにドライブをかけたのが、2021年10月末のFacebook社の「Meta社」への社名変更という出来事でした。それ以降、メディアのニュース等でも「メタバース」という言葉を目にすることが非常に多くなっていきましたね。そこを踏まえて弊社としては、人材サービスとの組み合わせにより大きな可能性があると感じていました。そこで、先んじてメタバース領域へと踏み込み、多くの経験を得るためという目的で、今年の1月1日のタイミングで事業を立ち上げました。

――なぜ、人材サービス分野の同社が「メタバース」に着目したのでしょうか?

川内:

人材サービスを展開する弊社では「仕事とのマッチングや働き方の多様性」に関して、現状様々な課題があると感じていました。

例えば、ひとつは「仕事を紹介する上での偏り」です。働きたいという意思をお持ちの方や働く上で必要なスキルや経験をお持ちの方がいたとしても、年齢などによる体力的な問題、お住まいの場所からの通勤条件などからお仕事の紹介が難しいケースが起こってしまいます。1人でも多くの方にお仕事を紹介することをミッションとしている弊社にとって、その課題は非常に大きなものです。

ふたつめは「仕事の多様化に企業側が対応しきれていない」という問題です。コロナウイルス流行以降、求職者側でも働き方のニーズの多様化が大きく進んだにも関わらず、企業が提供する働き方の多様性が同じように増えているとは言えず、アンマッチが起きています。フルタイムの勤務だけでなく、家庭のスキマ時間を利用するような働き方や在宅勤務のニーズは非常に多くあります。

こういった現状を踏まえて、人材ビジネスにおける課題を解決するツールとして「メタバース」があると考えています。

人材サービス企業がメタバースによせる期待

――メタバースが人材サービス分野の抱える課題を解決するキーワードとなるとのことですが、具体的にメタバースに期待しているものはどういったことでしょうか?

川内:

メタバースに関しては大きく3つの期待を持っています。

ひとつは社会情勢の変化にともなう「メタバース事業自体の拡大」です。コロナ禍以降、一般の方がデジタルの空間に触れる機会が増えていくことになり、結果的にメタバース関連の事業自体が広がることになるだろうと考えています。

2つ目は「人材の価値向上」です。先ほど働き方の多様化という話をしましたが、メタバースでは場所や時間といった条件にあまり縛られずに仕事ができる可能性があります。そのためリアル社会では勤務時間や通勤時間といった就業条件の都合により困難になっている部分を、バーチャル側でアシストする役割を担えるのではないかと期待しています。
最後は少し視点が変わるのですが「雇用の変化」です。現在でも完全リモートワーク制を導入している企業や副業に寛容になっている企業が続々と出てきていますが、これを機に「労働環境全体を整備したい」「(より働きやすい環境にすることで)自社の競争力に繋げたい」と考える企業も出てきています。そういったニーズとメタバースは親和性が高く、「メタバース内で働く」という雇用形態が、企業のニーズに合った選択肢のひとつとして登場するだろうと考えています。そういった動きが結果として、仕事の選択肢を拡大させることに繋がると予測しています。

――現状、メタバース関連事業に関しては実際の仕事のニーズが発生してから動き出す企業も少なく無さそうです。パーソルマーケティングが世の動きに先行してメタバース事業に乗り出した理由はどういったものでしょうか?

川内:

メタバース事業を先んじる必要があった理由のひとつは、求職者の方々への事前のレクチャーや育成環境の整備の必要性を感じたことです。現状、弊社には、さまざまなスキルや経験をお持ちの求職者が多く登録されていますが、その方々がすぐにVRヘッドセットやコントローラーをうまく利用したりメタバースで積極的に動くことができるかと言えば、そうではありません。例えば、これまで身振りや顔の表情を使ったコミュニケーションを得意とされていた方が、アバターを使用した際に同じようにできるとは限りません。 
であれば、今のうちから求職者向けに「メタバースで働く」ということ自体のレクチャーが必要です。基本的な操作方法やコミュニケーション手法を習得しててもらうことで、メタバース関連の仕事にチャレンジしやすい環境を我々が整えていくべきだと思いました。

――今、求職者を対象としたレクチャーという話がありましたが、パーソルマーケティングでは具体的にメタバース関連でどのような事業を計画されているのでしょうか?

川内:

先ほどのレクチャーも含めたメタバースでの人材派遣事業を計画しています。弊社に教育センターを設置して、メタバースでの仕事に興味のある求職者の方に育成と仕事紹介ができるような環境整備を進めています。
また企業への(メタバース事業関連の)コンサルティングも実施していきます。企業の担当者のお話をうかがっていると「メタバースが自社のサービスにフィットするのか?」といった質問をよくお聞きします。ですので、メタバースによってどのような価値提供ができるのかといったところまで歩み寄った提案を行っていきます。この試みにはメタバース事業そのものの事業を拡大していき、将来的には求職者が働く選択肢を増やしていきたいという狙いがあります。
さらにメタバースのワールド自体をパッケージ化して提供できるようなワールドホルダー的なサービスの提供も予定しています。

メタバースで「はたらいて、笑おう」

――企業側へのコンサルティングについてですが、どういった職種の企業であればメタバースを活用しやすいとお考えでしょうか?

川内:

サービス構想当初は、メーカー関連の企業とメタバースの相性が良いと考えていました。なぜなら、自社の製品プロモーションとしてバーチャル空間でPRでき、そのまま物販へと紐付けられる可能性があるからです。しかし、いろいろな企業や業種の方のお話聞けば聞くほど(メタバースの)利用できるシーンは他にもさまざまにあるという印象を抱きました。つまり「合わないところがあまり無い」と感じたのです。
将来的には現在の受動的に閲覧するタイプのホームページがユーザー体験型のメタバースへと変化していくようなイメージで、ユーザーに向けた表現方法自体が変化していくのではないかと思っています。

――各社提供のメタバースへと参加することで、バーチャル空間で商品を見たり、コンテンツを楽しんだり、企業担当者とコミュニケーションをとれたりといったことが可能になるというイメージですね。

川内:

そのとおりです。ユーザー側は企業の公式サイトから情報を「受ける」だけでなく、情報を「体験する」といったかたちへと変化していくことになるかと。また、メタバースとリアルのどちらか一方だけでなく、両方の特徴を活かしたサービス展開もオプションとして可能になってくると思います。

――今回はPwCコンサルティング合同会社と協業しての事業として発表されていますが、どういう協力体制になっていくのでしょうか?

川内:

PwCは5年ほど前からメタバース関連事業に携わっており、VRなどの次世代のテクノロジーに関する知見をお持ちです。弊社の人材サービスの経験とPwCのテクノロジーへの知見を双方に共有しながら併走するようなかたちで事業を進行していきたいと考えております。

――ありがとうございます。最後に今後のメタバース関連事業に関するパーソルとしての展望をお聞かせください。

川内:

近い将来、メタバースが世に普及していくなかで、toCのビジネスはより活性化すると考えています。その際、メタバース上で働く人がそれぞれが個性を生かして安心して活躍できる環境を作っていくことが私たちの役割だと思っています。
こうした取り組みにより、リアルの世界では課題だったことを一つ一つ解決することで、パーソルグループのビジョンである「はたらいて、笑おう。」を実現していきたいと考えています。一人でも多くの方が働ける市場をつくり、働く場所の選択肢を増やし、働き方自体もさらに多様化させて、個性を生かし、自分に合った場を見つけられるようにする。そのような社会にするための手段として、メタバースを活用していきたいと考えています。

――ありがとうございました。


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