HMDを付けた時に、ユーザーがどこを見ているのか判別する視線追跡(アイ・トラッキング)技術。
Oculus Connect 2で米VRメディアUpload VRが行ったインタビューで、Oculusの創設者パルマー・ラッキー氏は、VRにおいて視線追跡技術は「きわめて重要」だと語っています。「詳しくはまだ言えない」とのことですが、実際、Oculus内部ではその研究・開発が既に進められているようです。
Oculusも研究を進めている視線追跡技術ですが、既に独自の視線追跡機能を実現しているデバイスもあります。
今年の初めには、日本発の視線追跡型HMDを開発している「FOVE」が、キックスターターで60万ドル以上を集めています。
他にも最近では、SensoMotoric Instruments(SMI)という企業が、Oculus Rift DK2(開発者向けリリース版)に視線追跡の機能を実装したアップデートキットを開発者向けに発表しています。
また視線追跡機能を搭載したサングラス型デバイスを独自に開発しているスイスの企業「Tobii」は、 スウェーデンのゲームスタジオ「Starbreeze」 と協力して、Starbreezeの開発した5Kの解像度・210度の視野を誇るHMD「StarVR」に視線追跡機能を実装するという話もあります。
このように様々な企業が研究・開発を進めていますが、その実用性はまだまだ伸びしろを持っていると言えそうです。
しかし、その潜在的な有用性は確かなものです。
“視線”という要素がVR上に導入されると、アバター同士のコミュニケーションの質が大幅に上がると考えられます。例えばアバター同士、相手がどこを見ているのか認識したり、“目が合う”という体験が生じたりするなど、より質の高い“プレゼンス”(※)が生じます。
※プレゼンスとは、最近VR業界で使われ始めた言葉です。
”没入感”が、「自分がVRの中に入り込んでいる感覚」を指すのに対して、プレゼンスはそれより踏み込んだ「VRと頭で知りつつも、自分の身体や意識がそこにあるように誤認する実在感」のことを表します。
関連記事:【CEDEC 2015】『サマーレッスン』から学ぶVR開発 ー開発者ディスカッション編ー – MoguraVR
また、視線を動かすときに生じるグラフィックのゆがみも、視線追跡機能によって改善されることでしょう。
それ以外には、例えばFOVEのCEOである小島由香氏は「ユーザーの見ているところのみを高解像度にレンダリング(描画)する事で、PCの処理を大幅に軽くする事ができる」という利点を挙げています。(関連記事:VRでの感情表現とその未来について、FOVEの小島由香氏が語った「VRCクリエイターズトーク」レポート)
Oculusのパルマー氏は「現存の視線追跡技術ではまだ完全ではない」という旨のことも語っています。視線追跡技術はまだまだ発展途上ですが、VRの未来に、大きな可能性を与え得るものです。
今後の技術の発展が、ますます楽しみです。
(参考)
Oculus is working on eye tracking technology for the next generation of VR – UploadVR
http://uploadvr.com/oculus-is-working-on-eye-tracking-technology-for-next-generation-of-vr/
※アメリカのVR専門メディアRoad to VR、UploadVRはMogura VRとのパートナーシップを結んでいます。