Nianticが、AR開発キット「Lightship ARDK」のバージョン3.0を正式リリースしました。最大10人のARマルチプレイが実装可能となるなど、各種機能が強化されています。今後もクロスプラットフォーム戦略を進め、Unityの「AR Foundation」やクアルコム「Snapdragon Spaces」など、他社の開発ツールとの互換性を高める方針です。
現地時間10月30日、NianticがAR開発キット「Lightship ARDK」のバージョン3.0を正式リリースしました。「Lightship ARDK」は、ARコンテンツ開発に必要な機能を包括的に提供する、ソフトウェア開発キットです。開発者はAndroidやiOSデバイスで動作するARコンテンツを作成できるほか、UnityベースのアプリケーションにAR機能を追加できます。
Unityベースのアプリ連携を容易に
「Lightship ARDK 3.0」は2023年6月にXRカンファレンス「AWE 2023」で発表され、オープンベータ版が公開されていました。今回のバージョンアップで、Unityベースのアプリの連携・移行が容易になったほか、マップ構築機能「Maps」もUnityに対応しています。
また、「Shared AR」機能の強化で、参加コードや二次元バーコードなしでも最大10名のARコンテンツ共有が実装可能に。デバイス位置特定機能「VPS」のほか、「深度、オクルージョン、メッシング」「ナビゲーション・メッシュ」「セマンティックセグメンテーション」なども性能向上が行われています。
Unityアプリの連携・移行が容易に
「Lightship ARDK 3.0」は、UnityのAR開発フレームワーク「AR Foundation」で開発したアプリの連携・移行が容易になりました。Unityプロジェクトのプラグイン設定画面で「Niantic Lightship SDK」を有効化すれば、既存の開発環境にAR作成のためのツールが追加されます。
「Lightship ARDK 3.0」の開発者アカウントは、開発者向け公式ページ「Lightship.dev」から無料で登録できます。詳しい方法は最新版の開発者向けドキュメントに記載されているほか、公式Youtubeチャンネルには環境構築の手順説明や機能別ガイダンスなどの動画も公表されています。
(出所:Lightship AR)
ARゲーム開発事例の紹介も
今回の正式リリースと合わせて、主要な開発事例も紹介されています。
- 黒人文化の史蹟探訪アプリ「Kinfolk」(Kinfolk Foundation)
- 要塞構築バトルロイヤルゲーム「Matter AR」(Hot Dark Matter)
- ブロックチェーンゲーム「Mirror Planet」(Savy Soda)
- ARスケボーゲーム「Reality Crisis」(Rodney Mullen’s Skatrix)
- ゴーストハンティングゲーム「Scrylight」(Spectropia)
- 生物学の学習指導ツール「Step Into Biology」(Zoic Labs)
これらに加えて、Nianticの自社コンテンツである「Peridot」も3.0への移行に成功しており、開発事例としてブログ記事で紹介予定としています。
クロスデバイス、クロスプラットフォーム戦略を改めて強調
Nianticは2023年6月に経営方針を見直し、主力タイトルと開発者向けツールに注力する姿勢を表明していました。今回の発表でも、Appleの「Vision Pro」や「Meta Quest 3」などの新しいMRデバイスを念頭に「空間コンピューティングへの関心が高まっている」とし、今後も「Lightship ARDK」は、新たなモバイル端末や他のハードウェアへの対応を行う旨を明らかにしています。
さらに、クアルコムのXR開発プラットフォーム「Snapdragon Spaces」を搭載したXRデバイスへの対応を予告。第一弾として、AR開発スタジオが「Snapdragon Spaces」に対応した「Lightship VPS」を利用できるようになるとのことです。
(参考)Niantic(1)、Niantic(2)