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VRの「いま」を掘りだすニュースメディア

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VRはジャーナリズムを変えるのか  朝日新聞が始めたVR活用の狙い

ふと、気づくと日差しの強い街に自分は立っています。
人気のない通りに徐々に集まってくる人々。

このシーンは、イラク北部でISからの解放作戦が進むモスルの様子を360度カメラでおさめたもの。朝日新聞が6月29日に公開したサービス『NewsVR』で体験できる360度動画『モスルの解放作戦、最終局面に 現地ルポをVRで』です。動画は専用アプリ(iOSAndroid)で視聴でき、2眼モードにするとスマホ用VRゴーグルを使って見ることができます。

私たちは、毎日数々のニュースを目にします。地球の裏側で起きていることも瞬時に映像を見ることも、概要を文章で読むこともできます。目を閉じて、現場で起きていることに想いを馳せることもあるかもしれません。

しかし、「実際にその場にいる体験」を再現することは、これまでできませんでした。「実際にその場にいる体験」を再現できる360度カメラとVRを使って新たな報道のあり方を模索する取組が世界中で進んでいます。今回は、朝日新聞社で『NewsVR』に取り組む同社メディアラボの堀江孝治氏、アプリ開発を行った株式会社アルファコード代表取締役社長CEO兼CTOの水野拓宏氏に話を聴きました。

VRを使った「体験する報道」は何をもたらすか

報道にVRを使う取組は、世界の大手メディアではアメリカのニューヨーク・タイムズ紙が2015年末から取り組んでいるほか、CNN、ウォール・ストリート・ジャーナル、USAトゥデイなどのアメリカのメディアはこぞってVRに参入しています。日本でもNHKが「NHK VR」を立ち上げています。

朝日新聞では、2016年春頃から構想をスタートさせたとのこと。同10月頃からサービスの開発がスタートし、2017年3月末にはほぼ完成、6月に公開して以降、現在は週2,3回の定期的な更新を行っています。

なぜ朝日新聞がVRの取組を始めたのか。「体験型報道」というのが堀江氏が語った言葉の中で印象的な言葉でした。朝日新聞社として、見る報道から体験する報道へ、という報道のあり方の転換を図っている中でVRはまさに「体験する報道」であり、「写真や文字だけでなく、事件・事故などをはじめ世界で起きていることをより一層自分ごととして捉えられるようになるのではないか」と語ります。


朝日新聞社メディアラボ堀江孝治氏

速報性があるからこそ没入しやすい

VRコンテンツの中でも、『NewsVR』が扱うのは360度カメラで撮影した実写のVRコンテンツです。通常、360度動画は撮影後の編集などに工数をかけますが、朝日新聞で重要視しているのは「即時性」(堀江氏)とのこと。朝日新聞では、十数台の360度カメラ(Gear 360)を導入し、現場に向かうカメラマンが通常の一眼レフでの撮影と合わせて360度撮影を行っています。

ニュースの現場でのVRコンテンツに関しては、「作り込もうとすると、コンテンツの導入をしっかりやらなければいけないが、ニュースの360度動画はそれ自体、話題になっているトピックなので、ホットなうちに配信すれば、速報性があるからこそ没入しやすい」(水野氏)との話も。


株式会社アルファコード代表取締役CEO兼CTO水野拓宏氏

堀江氏は今後の展望として「カメラの数を増やして全ての局に持ってもらいたい」と語ります。さらなるコンテンツ増に対応し、なおかつ撮影から公開までのプロセスにかかる時間を短縮するためには、編集・配信の仕組みをより簡単にすることが重要になります。

スマホアプリ版では、撮影した360度動画にテロップなどを加えて編集し、アプリに公開して配信を開始するVRコンテンツ制作・運用ツール『VRider DIRECT』というシステムを導入しています。この『VRider DIRECT』を提供したのがアルファコードです。撮影から編集を行うと、公開できるクオリティのものを制作し、配信に至るまでのプロセスを簡易化しています。

600万部の発行数を持つ新聞の影響力

VRは盛り上がっているとはいえ、まだデバイスを持っている人も少なく、合わせて普及させていく必要があります。

堀江氏も、新聞紙を使ったスマホ用VRゴーグルをリアルイベントで配布・販売をしたり、今後は認知度を高めていくことを課題に挙げています。先ほども挙げたニューヨーク・タイムズ紙は、アプリのリリースとともに定期購読をしている全100万世帯以上にダンボール製のスマホ用VRゴーグルを配布するという意欲的な試みを行っています。

紙面とVRが連動していることも重要になります。「たとえば、朝刊の一面にVRへの導線となるQRコードなどを貼って『これはVRで見れます』と出すことで連動させていきたい」とのこと。

朝日新聞は発行部数600万部以上という影響力の強いメディアです。「見る報道」から「体験する報道」へ。新聞という歴史のあるメディアがVRを活用することで、報道がどう変わっていくのか、注目したいところです。

この記事を書いた人

すんくぼ(久保田 瞬)

慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、環境省に入省。環境白書の作成等に携わる。ECベンチャー勤務を経て、現Mogura VR編集長、株式会社Mogura代表取締役社長。VRジャーナリスト。
VRが人の知覚する現実を認識を進化させ、社会を変えていく無限の可能性を感じ、身も心も捧げている。VR/AR業界の情報集約、コンサルティングが専門。また、国外の主要イベントには必ず足を運んで取材を行っているほか、国内外の業界の中心に身を置きネットワーク構築を行っている。

Twitter:@tyranusii

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