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話題 2023.12.31

【2023年】MoguLive編集部&ライターが選ぶ! 今年印象に残ったバーチャルコンテンツまとめ

2023年も、VTuber、VRChat、VRゲームなど、様々なジャンルで多くのコンテンツが生み出されました。MoguLiveではライターや関係者にアンケートを実施し「今年最も印象に残ったバーチャルコンテンツ」を選んでもらいました。

藤林檎

名取と行く! 那須どうぶつ王国日帰りバスツアー

https://orion-bustabi.com/kanto-feature/natorisana

「名取と行く!」とタイトルにはありますが、「名取」こと名取さなさんはバーチャルYouTuberなので実際のツアーに帯同する訳ではありません。実際はバス車内で放送されるバスガイド音声や那須どうぶつ王国との各種コラボ施策等で参加する形だった訳ですが、この「本人が実際に帯同するわけではない」というところにこのツアーのキーがあります。

例えば生身のアイドルが帯同するタイプのツアーだとどうしても「アイドル本人と邂逅できている時間とそれ以外の時間」という区分けができてしまったり、あるいは「アイドル本人に自分の存在を認知されているファン/そうでないファン」「積極的なコミュニケーションを取るのが上手なファン/そうでないファン」の間でアイドルと取れるコミュニケーションの密度に個人ごとの差が生じてしまったりするなど、あらゆる尺度において””平等””を担保することは難しいことが多いです。(平等でないからこそ生じる””一回性””の素晴らしさは何にも代えがたいという側面ももちろんあるのですが)

それに対して今回のこちらのバスツアーは名取さんが実際に帯同する訳ではないがゆえに、誰もがツアーの楽しさを平等に享受できるところが素敵でした。また「名取と行く!」があくまで概念であるがゆえに、バスに乗っている時間もサービスエリアで休憩する時間も那須どうぶつ王国で楽しむ時間もすべからく「名取と行く! 那須どうぶつ王国日帰りバスツアー」の一部として楽しめるところがよかったです。

そしてもうひとつのこのツアーがよかったキーポイントは、様々なコラボ施策が名取さんの主体的な”こうしたい”を実現する形で執り行われた部分にあると思います。例えばバスガイド音声で話された内容にしても、プレミアムチケットの特典の音声ガイドでの動物達の紹介にしても、単純にスタッフの方が準備した台本を名取さんが読み上げたということではなく名取さんご自身の言葉で話されており、またグッズ用のイラスト等の多くをご自身で描きおろしされているなど、今回のコラボ施策で提供されたコンテンツのどれを取っても「動物達のことが好きだ」ということや、那須どうぶつ王国や動物達の良さを他でもない名取さん自身がファンの方に伝えたいという、能動的な姿勢を感じさせるものでした。

以前話題になったVTuber周央サンゴさんと志摩スペイン村のコラボにおいてもそうですが、タレント側がその場所に思い入れがあるからこそ話題が伝播しやすく、ファン側の「推しが好きなものを自分も直接見られるうれしさ・楽しさ」にも繋がります。なので今回のコラボに関しても従来の広告的なタレントの起用という形ではなく、タレント側の「好き」を起点にはじまるコラボになっている所がとても魅力的でした。

このツアーを通して、”バーチャルを通してリアルの世界がより素敵に感じる”というものの良さを感じました。これはVTuberコンテンツに限らず、VRやMR、xRコンテンツ全般に通ずるものだと思います。コロナ禍を経て再び外に出るようになった世界で、「リアルを生きる人の日々を彩るバーチャル」の裾野がより広がっていく兆しがそこにありました。

おむらいす食堂

Epilogue․ Chapter 2(VRChatワールド)

https://vrchat.com/home/world/wrld_6b66a99f-d283-4ab8-8f55-ba1981df34c9

目まぐるしく様々な話題が飛び交うバーチャルにおいて、特に「記憶しておきたい」ものとして『Epilogue․ Chapter 2』を推します!

言わずと知れたVRChatワールド「ORGANISM」の最終章。第一部の公開から1年後にあたる、今年5月の衝撃は今も鮮明です。ORGANISMで描かれる「帽子の男」が歩んだ人生の一途には、言語を越えて訴えかけてくるものがあります。

幼少期から青年期〜最期の瞬間まで、これほど誰かの人生に想いを馳せることは今までありませんでした。まさに、制作者が作り上げた世界を現実のように目の当たりにできる「バーチャル」だからこそ実現し得た体験です。

昨年から続編を期待していたものの、完結してしまった寂しさが残ります。人生に終わりがあるように、ワールドが描く内容にも終わりがある……どんなに年月を重ねても、一人の人生を見せてくれたORGANISMを記憶しておきたいと思います。

すら@bluesura

คงคา (Endless Echo)

この音楽は、タイのVTuberエージェンシー「Algorhythm Project(ARP)」が11月末にリリースしたものです。海外では、VTuber音楽シーンが2022年頃から盛り上がりを見せ始めていました。中国のVirtuaReal、韓国のISEGYE IDOLやPLAVEが音楽で活躍して、アメリカのVShojoは音楽への取り組みを強化しています。そんな中、タイでは0の状態からVTuberを始めて、タイの音楽シーンに食い込むレベルまで成長してきたのがARPです。1期生のEvaliaさんのオリジナルソング「คงคา」は、息をのむような物語性の強いアニメーションだけでなく、VTuber音楽にタイの文化をふんだんに盛り込んだ素晴らしい作品となっています。ARPのMVは、日本的なアニメーションやLive2Dだけでなく、タイの伝統的な影絵芝居を用いた、VTuberらしい手法で作られています。しかも、アニメーションはタイで活動するアニメーターたちが手掛け、影絵もクリエイターに依頼しており、ファンやタイで知名度のあるアーティストからも愛されています。2023年はVTuberという手法が、より各国の文化と結びつき、面白い作品が生まれる年となりました。このMVは、そんなシーンを代表する一つの作品です。ARPの作品には、日本語字幕もついていることが多く、日本との距離感も近いので、ぜひご覧ください!

東雲りん

VR宇宙博物館 コスモリア

宇宙という膨大なスケールのテーマを上手く取り扱ったワールド。VRを活かした展示として、実寸のスケールをそのまま展示したり、重力の違いを表現したりしていた。文字を極力手元のタブレットに集約することで、展示物に集中できる作りなのも良いポイント。有志による制作においても1つの到達点に達したのではないかと思った。金銭のやり取りのない有志だからこそできるとも言えるが、ここまでのものを作れるのはVRChatのコミュニティはとんでもないなと感じた。

武者良太

ANA GranWhale

https://www.ana-granwhale.com/

ANAマイレージクラブのマイルで課金可能、万人向けのコンテンツを用意している、荒らし目的のユーザーと接点を持ちにくいなど、初めてアバターコミュニケーションに取り組むにはバランスの良い設計となっている点が良いですね

nusa

VARTISTs

VRChat発のアーティストのみで開催された初のリアルライブだったから。国境を意識しにくいVRというコンテンツが下地にあることで、ライブの出演者だけでなく、客層も国際的なライブとなっており、VRCアーティストならではのイベントだと思ったから。オフ会的な要素も兼ね備えており、物販会場やライブ前後の余裕時間に多くのアーティストやフレンドと交流することができたから。下北沢という文化の発信地の中でVRというコンテンツが一つのライブハウスを満員にしたことで、今後のさらなる発展にも期待が持てるようなイベントだったから。

けいろー

kinu 5th live “はじまりのおわり”

VRChatワールドなら「Exhibition˸ EXFLAT」に「Epilogue․ Chapter 2」、イベントなら「ぽこピーランド」に「ぱんだ歌劇団『アラジン』」、ライブなら「さなのばくたん。」に「CIEL LIVE SHOWCASE at VRChat」、ゲームなら『HUMANITY』に『DYSCHRONIA: Chronos Alternate』――と、例年にも増して記憶に残るコンテンツがモリモリてんこ盛りだった2023年。

正直なところ選びようがないのですが、それでも無理やり1つに絞るとするなら、やっぱりキヌさんの5th live(とSANRIO Virtual Festival)でしょうか……! だって、わずか15分程度のライブでありながら、「体験」としての密度と残響が大きすぎるんだもの!! 「想像を超えるすごいものを見た結果、複数の感情がまとめて表に出てしまう」なんて体験、そうそうできるものじゃあございません。

それも単なる感動体験にとどまらず、自分がこれまで楽しんできた「バーチャル」の世界について改めて考えさせられるような、このカルチャーに親しんできた人ほど価値観を揺さ振られるような、そんな約15分間だったのではないでしょうか。そして年末を迎えた今、改めて振り返ってみれば、2023年1月にあの場所で投げかけられた問いは、この1年間の自分の、バーチャル世界との向き合い方を、決定づけるものとなっていたような気すらします。現在進行系で日々変わりゆく世界の中で、それでも“続いていきたい”と願うわたしたち――。いやー、つい先日に詳細が発表された、2024年のサンリオVfesも楽しみですね!

ノンジャンル人生

もっと!ねこあつめ

ゆるい。とにかくゆるい。最初は放置ゲーの要領が分からず、一度にすることも多くなくて戸惑ったが、いつの間にかこれのためにQuest 3を被る自分がいる。特に感動のストーリーも手に汗握る展開もなく、何ならVRである必要すらないのかもしれないが、なんかこう、ねこが目の前にいるだけで良いよね……。

松本友也

バーチャルボクシング大会「バーチャルファイター」

イセゲアイドルの所属する韓国のストリーマーコミュニティ「WAKTAVERSE」が、日本発の「VRCボクシング大会」を舞台に行ったVRボクシングゲーム大会。チームに分かれて練習を重ね、本番で熱い試合を繰り広げる対戦イベント自体はWAKTAVERSEでは珍しくないが、競技の性質上フィジカル?なぶつかり合いがあり、長時間の配信ながら思わず見入ってしまった。また自分の知る限り、WAKTAVERSEが日本でここまで(局所的とはいえ)話題になったのは初めてだと思うのでそれも印象深かった。今年は翻訳チームGAMRAMSTONEのみなさんの活躍もあり、WAKTAVERSEの動画に日本語字幕がつくペースもずいぶん速くなっていた。あと少し何かきっかけがあれば日本での知名度も一気に上がるんじゃないか、、と密かに期待している。

井文

VR宇宙博物館コスモリア

ふらっとフレンドと一緒に行ったところ、その圧倒的な作り込みに度肝を抜かれてしまいました。宇宙ネタは全体的に大好物なのですが、特にロケットや人工衛星等の展示セクションがお気に入りです。

ビジュアル的にも非常にキレイな場所が多く、生物誕生や天動説・地動説の解説エリアは、(もし宇宙系の興味が薄くても)見ているだけで楽しめるかと思います!

まだ行っていない人は、ぜひ覗いてみてください!

ゆーてる

VR宇宙博物館 コスモリア

VRChatで4年間活動を継続してきた『天文仮想研究所 VSP』では宇宙のことが好きなユーザーたちが交流しつつ知見を高め合い、宇宙をより多くの人に知ってもらおうとコンテンツ制作も行っています。

様々な企画実施などの日頃の活動と並行して制作されたこの『VR宇宙博物館 コスモリア Cosmoria』は、完成までに2年も費やしたいわばVSPの集大成。

彼らの宇宙への憧れ、そしてそれらの取り組みにかけた愛が「ほぼすべて趣味の手作り」により構築された巨大な博物館を生み出しました。
『VR宇宙博物館 コスモリア Cosmoria』の圧倒的なコンテンツのボリュームとそれらから得られる学びの豊さを見るに「博物館がぼくたちの家に来てくれた」と言っても過言ではありません。

地元が田舎のぼくにとって博物館というものは、子どものなけなしのお小遣いと長い移動時間をかけてようやっと行ける「めったに行けない場所」でした。
でも今はメタバースの存在と、そこに根差すユーザーたちが趣味と愛とで作り出していくコンテンツのおかげで、どうにかしてスペックの高いPCとネット環境さえ確保できれば、このような生まれ育った地域に影響され閉ざされてしまいがちな「機会」を誰でも得ることができる。

『VR宇宙博物館 コスモリア Cosmoria』はそういったバーチャルの持つ可能性について改めて希望を見出させてくれたコンテンツです。

ゆりいか

「さなのばくたん。ハロー・マイ・バースデー」

今年のバーチャルエンタメ界隈は大きく揺れ動き続け、一体何が面白いのか、何が楽しいのか、先に繋がる希望は何なのか、分からなくなることが幾度となくあった。そんな中、自分にとって確かな指標となり、「こんな素晴らしいものを見せてくれるなら応援したい」と思えたのは、名取さなさんのバーチャルライブ『さなのばくたん。ハロー・マイ・バースデー』だった。これを目撃した日に、たまごまごさんに連絡して急ぎでレポートを依頼したときの興奮は忘れられない。「名取さな」というVTuberが5年間もの長きにわたり紡ぎ続けてきた物語に、ひとつの決着をつけたライブであり、虚構が現実となって昇華される、つまり“可能性が本当になる”瞬間を目にできた舞台だった。感謝しかない。

たまごまご

「さなのばくたん。ハロー・マイ・バースデー」

明るくハッピーなバーチャルナース名取さなが、数年温め続けていた裏設定ともいえる「本来の名取さな」をステージ上に出して、タブーを乗り越えた物語性で全部伏線回収したのは、VTuber表現のありかたに大きな波紋をもたらしたと思う。
普段配信で見ている名取さなが、憧れが生み出したイメージの存在だと演出したのは今までとこれからに大きな杭を打った。一方でリアルとバーチャルの隙間にいるような患者名取の「幻に憧れる孤独な存在」の表現も強烈だった。虚構の存在を本物として認める儀式のようなミュージカル風イベントだった。
バーチャルな存在の物語を楽しく丁寧に作り続けているクリエイター名取さな。多くの人に強く支持されているのを見て、彼女の活動を、VTuberの未来を信じたくなった。


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