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その他VRヘッドセット 2023.02.07

発売目前! メガネ型VRヘッドセット「MeganeX」再レビュー&Shiftallメタバース向け製品を体験

株式会社Shiftallは、2022年1月の発表以来、様々な「メタバース向け製品」を展開しています。2023年2月にはウェアラブル冷温デバイス「Pebble Feel」がリリース、3月~4月にはVRヘッドセット「MeganeX」が発売される予定で、さらに独自機構のVRコントローラー「FlipVR」など、新製品の発表も続いています。

MoguLive編集部は、2022年に引き続き、Shiftallのメタバース向け製品のいくつかを先行体験しました。昨年から完成形に近づいた、ニッチでユニークなデバイスたちの実力をご紹介します。

きっかけはVRChatの音楽イベント 新機軸コントローラー「FlipVR」を体験

まずは、1月に発表されたばかりの新型VRコントローラーFlipVRを見せてもらいました。現状ではまだプロトタイプの段階です。

全体的な構造は、手のひらにバンドを通して、手自体に固定する「VALVE INDEX コントローラー」に近いです。ボタンやスティックの配置されたパネルはコンパクトで、握り込む感覚は飛行機の操縦ハンドルを連想させます。

最大の特徴は、ボタンやスティックの集まる操作パネルを、手の甲側へ跳ね上げることができる機構です。跳ね上げは、手の甲側へスナップするように振るだけで行えます。意外と頑丈なので、思いっきりスナップしても大丈夫そうです。

操作パネルをどかすことで、手のひらがフリーになります。現実世界の物体も難なく手に持つことができます。


(「FlipVR」を装着しながら飲み物のタンブラーを持つShiftall・岩佐琢磨CEO)

飲み物のグラスだって持てます! VR飲み会はもちろんですが、楽器演奏やDJプレイなど、VRをやりながら様々なことができるようになるのがポイントです。

Shiftallの岩佐琢磨さんによれば、この「FlipVR」が生まれるきっかけになったのは、VRChatの24時間音楽イベント「AWAKE24」だったとのこと。イベントに参加していた岩佐さんが、「VRでドラム演奏をするのが大変。なにかよいデバイスを作ってほしい」と打診され、「VRをやりながらでも現実世界のものを持てるコントローラー」というアイデアが生まれたのだそうです。

また、VRコントローラーはどちらかと言えばアメリカナイズされており、手の小さなユーザーには「指が届かない」という問題もしばしば起こるのだそう。「FlipVR」は、操作パネルを前後に位置調整できる構造になっており、どんな手のサイズにもフィットできるVRコントローラーを目指しているとのことです。

現時点ではプロトタイプということもあってか、跳ね上げたときの重心バランスが偏り気味で、「重い」と感じました。しかし、「コントローラーを装着しながらものが持てる」という便利さはやはり大きいところ。さらなるブラッシュアップに期待です。

発売目前「MeganeX」コンシューマー版をチェック

次に、いよいよ発売の迫るVRヘッドセットMeganeXを体験しました。今回は、1月に明らかになった2つの機種のうち、コンシューマー向け機種(の最終調整版)を体験しました。

コンシューマー向け機種は、メガネのつる状のフレームに加えて、額に乗っかるパッドで頭部に固定します。従来機種では「Varjo Aero」や「Meta Quest Pro」で見られる機構ですが、本体重量の軽さも相まって装着感は快適な方です。

また、企業向け機種に存在する視度調整ダイヤルは、コンシューマー向け機種には存在しません。代わりに、メガネレンズアダプターによってユーザーごとに対応したレンズを取り付けることで、様々な視力に対応する構造となっています。

レンズを取り付けた様子がこちら。レンズそのものが薄型なので、元々の構造に大きな変化は見られません。

最初に装着する際には、IPD(瞳孔間距離)調整、視度調整、レンズ設置など、ユーザーごとに合わせた複数の調整が必要となります。やや大変なものの、一度調整が済めば以後は使い回せるため、初期セットアップとして丁寧にやっておくべきでしょう。

肝心の見え方ですが、高画質かつOLEDならではの発色の良さがやはり魅力的です。その上軽いので、「軽くて高画質かつ、Lighthouse規格に対応」という贅沢な要望に応えられる一台になり得るでしょう。ただし、追加レンズまで入れると、レンズと目・まつ毛までの距離がかなり狭くなります。その場合は、額パッドを前後に動かして調整してほしいとのことです。

どうして高価格帯に?「MeganeX」の率直な疑問をぶつけてみた

さて、「MeganeX」については、あることが気になっている人が多いでしょう。それは「約25万円という価格」と「法人向けとコンシューマー向けで機種が分かれた」こと。この件について、岩佐さんに直接尋ねてみました。

まず、価格が約25万円という高価格帯になった最大の理由は、「サプライヤー提供の基幹部品の価格が跳ね上がったから」とのことです。2022年に大きく変動したドル円レートと合わせて、2021年に発表した当時には予測できなかった価格上昇となり、やむを得ずこの価格帯にせざるを得なかったのだそうです。

一方で、価格上昇に合わせて、各パーツ素材なども高品質なものに変更し、「高級機路線」へとシフトしたのだそうです。とはいえ、ドル円レートが今後改善していけば価格改定の検討余地もあり、基幹部品の入れ替えも、場合によっては考えていきたいとのことです。

次に、法人向けとコンシューマー向けの2機種に分かれた理由は、顔面へのフィットについて、一般ユーザーの使い方では看過できない問題があったからとのことです。

もともと「MeganeX」は視度調整ダイヤルを搭載し、鼻を中心に顔面で支える構造を採用していました。しかし、視度調整ダイヤルがあると鏡筒内スペースに余裕がなくなり、顔面にフィットしない人がいることが判明。ソーシャルVR用途など、長時間装着する上で大きな問題となりました。同時に、鼻だけで支える構造が顔に痛みをもたらしやすい問題も浮上。そこで、法人向けとコンシューマー向けで、思い切って構造そのものを分ける判断に至ったとのことです。

こうして、コンシューマー向け機種は、視度調整ダイヤルから後付レンズで視力補正を行い、額パッドによって長時間の装着性を向上する構造となりました。一方の法人向け機種は、短時間で複数人が使い回すことを想定し、視度調整ダイヤルを残置。額パッドも採用せず、サッと手早く身につけられる構造に寄せたとのことです。

「MeganeX」は今後、一般ユーザーに対しては「軽くて高画質」を求めるハイエンド志向なユーザーに応えるVRヘッドセットとして、法人用途としては自動車業界や建築業界に向けて売り出していきたいとのことです。実際、とにかく長時間、負担なくVRChatなどを遊びたい人にとっては、予算さえあれば十分アリな選択肢かもしれない……と、今回の体験であらためて感じた次第です。

非VRユーザーにも役立つ? 発売直後の「Pebble Feel」をチェック

2月2日に予約が始まったばかりのウェアラブル冷温デバイスPebble Feelも触らせてもらいました。ちょうど取材日は予約開始日の翌日。発表されたばかりの完成形です。

2022年に体験したときは、背中から装着する専用のホルダーを身に着けましたが、発売に際して首掛けホルダーに装着するようになりました。ホルダーは固めでちょっと痛いので、先端などをなにかで包んであげるとよいかもしれません。

デバイスのコンセプトは以前と変わらず、スマートフォンアプリから操作することで、専用の高効率ペルチェ素子により首元が急速に温かく・冷たくなります。リンパ節が集まる首筋を温めたり冷やしたりするため、体感温度は想像以上に変わります。

主な用途は、専用の温度タグを設置した(※技術的には視界ハックシェーダーに近いとのこと)VRChatワールドを訪れ、「メタバース世界の温度」を疑似体験するというもの。しかし、身体を効率的に温める・冷やすことができる「ポータブルエアコン」として、非VRユーザーにも需要を見込んでいるとのことです。

「ニッチでユニーク」路線は引き続き Shiftall製品が目指す先

2022年1月の取材・先行体験から1年経ち、Shiftallの「メタバース向け製品」は全てが市場に登場する目処が立ちました。防音マイク「mutalk」は先駆けて発売されており、一部のユーザーたちが使い始めています。

2022年の取材当時、Shiftallの各デバイスに対して筆者は「ニッチでユニークだが、確実に求められているデバイスたち」という評価をしました。1年ほどたち、発売に向けて具体的な形となりましたが、この評価は引き続き与えたいところです。VRChatなどにハマりにハマった人の中に、必要な人は少ないながら確実にいる。そういうラインナップです。

「MeganeX」は約25万円という価格が一般ユーザーにとって痛いところですが、「金のかかる趣味」と割り切って出費してしまう人も、一定数いるはず。車で言えば高級車のような、ハイエンドデバイスとして流通することが、現段階では予想されます。

そして、新たに発表された「FlipVR」や、現在開発が進んでいる「HaritoraX ワイヤレス」も、ニッチではあるものの、必要とする人に届けられることでしょう。MoguLive編集部では、今後もShiftallの各製品について、より詳細なレビューなどをお届けしていきます。


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