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セミナー 2022.08.10

大阪でXR・メタバース分野のビジネス展示会「Meet XR 2022 in 大阪」開催、その盛況ぶりをレポート

2022年6月2日から3日にかけて、XR(VR、AR、MR)やメタバース分野のビジネス展示会「Meet XR 2022 in 大阪が開催されました。「大阪・関西万博 EXPO2025」を2025年に控えた大阪。企業や自治体で高まる、XRやメタバースについてのビジネス課題や要望に応えるための展示会です。

出展社数は22社で、7つの特別講演も実施。2日間で約600名もの参加者が来場し、講演は常に立ち見が出るほどの規模となりました。

将来的に巨大な市場規模を持つと予想される「メタバース」への関心の高まりや、リモートワーク・非接触型コミュニケーションの浸透が進む昨今の社会情勢。その結果として、本格的にXRのビジネス活用に取り組む企業は増加を続けています。本イベントも、XRのビジネス活用事例や、新規事業のアイデア、新しいデバイスやソリューションを求める参加者で賑わいました。

ここからは、各ブースの様子を紹介していきます。

徹底的に「フォトリアル」を追求! Varjoの圧倒的高画質なVR/AR体験

こちらはPC向けグラフィック製品の販売やサポートを手がける株式会社エルザ ジャパンのブース。展示会ではフィンランドのVarjo(ヴァルヨ)社の体験会を行っており、予約が全ての時間帯で満席に。

エルザ ジャパンのブースでは、超高解像度のVR/AR両対応ヘッドセット「Varjo XR-3」や、高性能VRヘッドセット「Varjo Aero」が体験できました。


(「人の目レベル」の超高解像度を誇る「Varjo XR-3」)


(Varjo社の最新モデル、VRヘッドセット「Varjo Aero」。同社の「Varjo Reality Cloud」サービスとも連携可能。)

筆者は産業向けエントリーモデルのVRヘッドセット「Varjo Aero」と、モバイルワークステーション「ELSA VELUGA A5000 G3-15」の組み合わせを体験。「Varjo Aero」の解像度は、片目あたり2880ピクセル×2720ピクセル、リフレッシュレートは90Hz。アイトラッキング(視線追跡)も内蔵し、115°の広視野角で、違和感なく映像を見ることができます。


(棚や引き出しに入った雑貨、床に置かれたバケツやオブジェなど、細かな表現もよく見える)

視聴したコンテンツは、アーティストのアトリエを再現したもの。壁には古い額縁に入ったアートや工具が飾られた映像です。雑誌や遠くに貼られたステッカーの文字も、しっかりと読めます。小物類の使い込まれた質感なども含め、細かなディテールも観察できるレベルでした。まさに「その場にいる」と自然に感じられるような、クオリティの高い没入体験を実現しています。

これまでVarjo社の製品は法人限定の展開でしたが、エルザ ジャパンは一般向けにも「Varjo Aero」を31万6,800円(税込)で販売中です。

先日も脳波や心拍を読み取るOpenBCIのBCI技術と、VRヘッドセット「Varjo Aero」を統合したプラットフォーム「Galea」のベータ版リリースが報じられたばかり。「Varjo Aero」は、ヘルスケアや製造業、そしてゲームといった多くの法人企業から注目を集めています。今後も多くの法人での採用やビジネスへの活用が見込まれます。

クラウドの力でハイスペックPCを不要に。NTTの「XRリモートレンダリング」

株式会社NTTドコモのブースでは、「XRリモートレンダリング」が紹介されていました。この「リモートレンダリング」あるいは「クラウドレンダリング」と呼ばれる技術は、高品質なXR体験を手軽に行うためのものです。

例えばVRで超高画質の体験をしようとすると、「Meta Quest 2」のような単体で動作するVRヘッドセット(いわゆる「一体型」)ではパワーが足りません。どうしてもハイスペックなPCを用意する必要が出てきてしまいます。

遠隔地のクラウド上で処理を行うことで、この「敷居の高さ」を解消するサービスが「XRリモートレンダリング」です。このサービスを利用すれば、ハイクオリティな映像を手元のMeta Quest 2で観ることができます。

当日、筆者が体験したのはコンクリートの階段に雨が降っているシーン。床にできた薄い水たまりに雨粒が落ちていきますが、そのときの波紋や光の反射が、高クオリティかつ少ない遅延で表現されています。

このように、VRヘッドセット単体やスマホだけでは描画できない3Dコンテンツも、クラウドを活用することで、簡単に閲覧が可能になるとのこと。さらに5Gでの無線化・低遅延化を組み合わせ、利用者や企業の初期投資を軽減します。既にMeta Quest 2やiPhone、iPadに対応、今後Androidも対応予定。現在、技術検証パートナーを募集しているとのことです。

測量技術×XR。BIMやデジタルツインの積極活用を後押し

ブース付近を歩き回るのは、あのボストン・ダイナミクス社の四足歩行ロボット「Spot」……ちょっとした異彩を放っていた企業が、測量・測位技術ソリューションを提供する株式会社ニコン・トリンブルです。

測量計測センサーと3Dレーザスキャナ「TrimbleX7」に加え、自律四足歩行ロボット「Spot」を組み合わせ、点群計測からデジタルツイン化まで行う測量システムを提案していました。

デモでは実際にSpotが歩く様子や、Spotの進路を妨害するとどういった対処をするのかを見ることができました。目の前に人が立つとSpotはぴたりと立ち止まりますし、人間がわざと横からぶつかっても転倒しません。まるで生きた動物のように「よろける」だけで、しっかりと立ち続けます。測量時のトラブルにも耐えうることを証明するようなデモでした。

この安全性と機動力に優れた「Spot」の上に3Dレーザスキャナ「TrimbleX7」を取り付けることで、作業員が立ち入れない危険な場所の測量や、人手を使わない工場のスキャン等が可能。安全かつ簡単に、点群データを取得できます。


(ヘルメット一体型のHoloLens2「Trimble XR10」。画像は骨伝導スピーカー付きモデル。)

併せて展示されていたのは、ヘルメット一体型のHoloLens2こと「Trimble XR10」。「ヘルメットをかぶるだけ」というシンプルな装着方法で、現場作業員に「使ってもらうこと」への心理的ハードルを下げます。クラウドサービス「Trimble Connect MR」と組み合わせて使えば、現実の工場の中に3Dモデルを配置したり、施工時の図面と実物の確認作業や、遠隔での作業支援を行うことができます。

ニコン・トリンブルの取り組みは、企業のMR活用事例として注目が集まる「インダストリアルメタバース」に対応しています。これは企業が所有する工場など、物理資産をデータ化し、そのデータをもとに、様々な方法で効率性の向上を図るものです。

測量とMRを組み合わせた同社のプロダクトは、今後建築や土木、製造業界での導入に期待できそうです。

心拍、瞳孔センサーで生体情報を取得。HP Reverb G2 Omnicept Edition

株式会社日本HPのブースでは、様々なセンサーで生体情報を取得できる、VRヘッドセット「HP Reverb G2 Omnicept Edition」を体験できました。このデバイスでは、瞳孔や心拍などをデバイスが読み取ることができ、そのデータを取得して様々な事例に活かすことができます。

同デバイスを使って体験できたデモは「ビル火災 避難VR」。4K対応の高画質で、火災をリアルに体験できるVR避難訓練です。発生した炎や黒煙の中を、かがんで逃げながら、「正しい逃げ方はどれか?」といった選択肢を選び、ゴールを目指して進みます。デバイスには表情を読み取るフェイスカメラや、心拍センサー、そして最先端の視線追跡技術を持つTobii社製のセンサーが搭載されており、視線の方向も識別できます。また中心視野の画質も高めることができる機能も搭載されています。


(内側の緑色部分が心拍センサー。下のピンクに光るフェイストラッキングセンサーでは、鼻や口の位置を把握することで、表情の変化をアバターに反映することも可能)

本デバイスでは、画面に表示されるアイコンを「視線移動」で選択できるという点が大きな特徴。コントローラーを使う必要がなく、視線を動かすだけで操作できるため、コントローラーに不慣れな人でも簡単にトレーニングが可能です。さらにトレーニングの最中も、コンテンツを流して観るだけでなく、体験者自ら、デモ内での行動を選択します。

実際に体験してみた感想としては、自分の判断の「何が正しくて、何が間違っていたのか?」が非常に記憶に残りやすく、トレーニング内容が定着しやすくなると感じました。


(取得した生体データ。パフォーマンスを数値化し、どこで不安を感じたか、どこで安心しているかなどを把握できる)

PC側では、フェイスカメラが捉えた体験者の表情からトレーニングの理解度を判断したり、「次に出す映像」を変えたりといったことが可能です。これにより、より体験者の状況に沿ったVRトレーニングやVRコンテンツを提供することができます。

日本HPは「このようなハードウェアと、ワークステーションの一式をワンストップで提供できるのが強み」とのこと。開発者向けツールも提供中で、担当者は「今後も自社の得意分野に加え、他企業と協力し、様々な方面へソリューションを広げていきたい」と語りました。

近畿経済産業局・京都府も! 行政がXRを支援

最後に紹介するのは、行政からの出展となった、近畿経済産業局・京都府・一般社団法人京都知恵産業創造の森のブースです。京都AR・VR技術活用促進事業が、3回にわたって開いたシンポジウムをまとめた冊子「XRの未来図鑑」や、スタートアップの支援窓口などの資料配布、パネルが展示されました。また大阪に実際に存在する町工場の中を、VRで見学できるバーチャル工場ツアーのコンテンツも展示されています。


(大阪にある本物の町工場の様子を、24時間バーチャル工場見学できる)

行政の主導で地域の各社が連携し、XR活用に取り組むことで、地方の中小企業の持つ強みを積極的にPRできます。また既存事業とXRを組み合わせることで、事業や地域の活性化も期待できそうです。行政がXRに積極的に関与することの必要性が示された展示でした。

2022年末、東京で「Meet XR」と「XR Kaigi」が開催!

大阪での「Meet XR」は、2019年以来となる3年ぶりの開催。各種デバイスの体験はもちろん、VRやAR、MRソリューションに取り組む企業から、「生きた情報や知見」が得られるのは、リアルイベントならではの良さと言えるでしょう。株式会社Moguraは、2023年も大阪でMeet XRを開催予定です。

また、2022年12月14日〜12月16日、そして12月22日〜12月23日の5日間にかけて、XR/メタバースをテーマとした国内最大級のテックカンファレンス「XR Kaigi 2022」も開催予定。リアル展示イベント「Meet XR」も併催されます。8月1日より早割チケットを販売中、購入はこちらから。


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