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企業動向 2023.09.08

VR/AR両対応の「Lynx R-1」ついに出荷開始

フランスのLynxは、VR/AR両対応のヘッドセット「Lynx R-1」の出荷を開始しました。Lynxは2021年秋にクラウドファンディングで37万ユーロ(約4,800万円)を調達し、その後数回の発売延期を経ながら製品開発を続けていました。


(出所:Lynx)

現地時間8月29日、LynxのCEOであるStan Larroque氏は、同社のYouTubeアカウントでライブ配信を行い、「Lynx R-1」の製品仕様や生産状況を説明しました。製造元のCompalから出荷された初期ロットの数百台分を本社オフィスで検品、支援者・予約注文者に発送します。

VR/AR両対応の「Lynx R-1」

「Lynx R-1」はVR/AR両対応の一体型ヘッドセットです。ヘッドセットに内蔵されたカメラ越しに現実空間が見れる、パススルー機能が搭載されています。この機能により、カメラをオフにした「VRモード」と、カメラをオンにして現実の風景にバーチャルなオブジェクトを重ねられる「ARモード」を切り替えられます。また、イギリスのUltraleapが開発する高精度なハンドトラッキング機能も搭載しています。

製品化に苦心も、ついに出荷

Lynxは当初、2020年夏の製品発売を目指していましたが、これまでに数回の販売延期を行い、形状変更や機能調整、ソフトウェアの改善などを進めていました。2021年9月にクラウドファンディングを行った際にはコンシューマー向けの価格設定を発表していたものの、方針転換を行い、今後はエンタープライズ向けに1,299ユーロ(約20万円)で提供するとしています(※過去の予約者は購入当時の価格で入手できます)。

一方、Lynxには継続的な支援が集まっており、2022年5月にはシリーズAラウンドの資金調達に成功。「CES 2023 Innovation Awards」では最優秀賞に当たる「Honoree」に選ばれました。2023年8月10日には発売遅延を陳謝しながらも、自社とMetaの投資金額を比べて「スタートアップとしてヘッドセットを市場に送り出せるのは奇跡」だと述べていました。


(2021年におけるMetaとLynxの投資額を比較した図。超大企業であるMetaの102億ドルに対し、小規模なスタートアップであるLynxは175万ドル。出所:Lynx)

類似の大手製品が登場も、オープン志向の市場戦略に注目

直近数年でLynxを取り巻く市場環境は大きく変化しており、Metaの「Meta Quest 3」や、Appleの「Vision Pro」など、ハンドトラッキングとパススルー機能を持つ、一体型MRヘッドセットが複数発表されています。価格帯や採用技術、認識精度は異なるものの、大手メーカーの新製品と並んで「Lynx R-1」がどのような位置づけとなるのか注目されています。

なお、Lynxは創業当初から、プライバシー保護やプラットフォームの透明性を打ち出す姿勢をとっており、政府機関や文化施設、一部のプラットフォームを避けようとする開発者等に需要があるものと思われます。

(参考)LynxMIXED


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