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業界動向 2017.03.04

PS VRキーマン吉田修平氏に聞く 販売約5ヶ月間の動向や今後の展開


2016年10月の発売以来、全世界で100万台近く出荷されているPlayStation®VR(PS VR)。2月27日からサンフランシスコで開催されているGDCでソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏にPS VRの現状を聴きました。

予想を上回る実売台数

ーー今週、PS VRの実売台数がやっと公表されました。予想通りの台数なのでしょうか。

吉田氏:
予想を上回る台数です。当初はできるだけ早く100万台を達成することを目標にしており、半年ほどかかると思っていました。製造して出荷するとすぐに売れる状況が日本だけではなく世界中で続いています。

ーー品切れに関しては、有機ELの生産が追いついていないといった推測もありますが、どうなのでしょうか?

吉田氏:
もともとの計画が保守的だったので、PS VRの供給が間に合っていない状況です。徐々に増やしています。

ーーアンドリュー・ハウスCEOは4月にある程度,生産が改善されるとをおっしゃっていましたね。

吉田氏:
一気に増やすというよりは、徐々に増やしてます。4月ぐらいまでには買いやすくなるのではないかと想定しています。買いたい人がみな買える状況に、できるだけ早くしたいと思っています。

ーー世界累計の実売台数はでましたが、日本での数字というのはまだ出されていませんね。

吉田氏:
日本は各社さんがデータを出されているのですが、我々としては地域別の数値は公表していません。

VRはユーザーあたりのコンテンツの利用数が多い

ーーユーザーのプレイ時間や頻度など、ユーザーの傾向みたいなものってものある程度なにかお話しいただけますか?

吉田氏:
いい形で進んでますね。ゲームでいえば『バイオハザード7 レジデント イービル』(バイオ7)がでてまたボンとプレイ時間が伸びました。バイオ以外でも、コンテンツのアタッチレートの数(1ユーザーあたりのコンテンツの利用数)はやっぱり高いですね。普通のプラットフォームのローンチと比べると、より多くのコンテンツをご利用いただいています。

『バイオハザード7 レジデント イービル』

ーその高い状態は発売から約5ヶ月経った今も継続しているのでしょうか。

吉田氏:
そうですね。プレイ時間も減っていないです。逆にバイオ7が出たことでまたかなり伸びています。そして、YouTube対応など新しいコンテンツやサービスが出るたびに伸びています。我々としては非常にいい形で進んでいると考えています。

ーーYouTubeも結構、利用されているんですね。

吉田氏:
コンテンツも多いですからね。

ーーちなみにプレイ時間にはシネマティックモードも入ってるんですかね?

吉田氏:
含まれています。シネマティックモードも多くのユーザーさんに使っていただいてますね。リリースしている様々なゲームがシネマティックモードで遊ばれている状態です。そして、多くのご要望をいただいましたが、ファームウェアの次回アップデート(バージョン4.50)でブルーレイ3Dの再生機能に対応します。驚くほどに綺麗なんですよ。右目と左目で同じ映像を見ていたのと比較すると、少しずつ情報が増えて、奥行きだけでなく全体的な解像感が増しています。ブルーレイ3Dコンテンツをお持ちの方はぜひぜひやってみていただきたいです。シネマティックモードがさらに便利になります。

それから、「PlayStataion 4 Pro」(PS4 Pro)のユーザーが増えてます。全てのタイトルではないですが、多くのタイトルで綺麗になります。PS VRのために初めてPS4買ったという人は、PS4 Proを合わせているという方もいらっしゃいますね。

Aim Controllerは日本でも発売予定

ーー周辺機器について伺います。例えばOculus Riftではヘッドフォン付け替えてイヤホンを出したりとか、Viveだとトラッカーであったりアタッチメントも発表されていますね。PS VRですと周辺機器などは出していかれるのでしょうか。

吉田氏:
既にPS VR Aim Controllerを発表しています。Aim Controllerは個人的にも非常に期待しています。日本ではまだ発売日を発表していませんが、シューティングコントローラーという名称で出す予定です。

ーー日本でも売るんですね。

吉田氏:
はい。ほぼ間違いありません(笑)海外では5月16日に対応ソフトの『Farpoint』のリリースと同時に発売です。バンドル版もリリースされる予定です。シューティングコントローラーは『Farpoint』専用ではないので、いまはデベロッパーの皆さんに対してサポートを行っているところです。今後、シューター系のVRは対応していくと思います。

『Farpoint』

ーーそういう意味では日本でも発売される可能性が高いということは、逆に日本の開発者もシューティングコントローラーを使ったものを作れるということですね。Devキットは提供されているのでしょうか?

吉田氏:
手を挙げていただいてるサードパーティには提供してます。もう量産に入っていますので。

ーー日本の会社でも作りたければまず相談、ということですね。

ーー最近ではハイエンドVRのワイヤレス化を可能にするものが登場しています。PS VRに関しても検討はされているのでしょうか。

吉田氏:
内部で様々な技術の研究は試しています(笑)ただ、今の形でワイヤレス化はなかなか難しいですね。ルーター(発信器)を追加で設置したりしなければなりません。PS VR向けに、家庭でも使いやすい製品として出すには時期尚早だと考えています。
PCベースのVR体験向けにワイヤレスのキットが出てきましたが、特にアーケードやルームスケール(部屋サイズの移動が可能なVR体験)では楽しいですよね。家庭での利用をメインにしたPS VRではできないことがやりやすくなることは、非常にいいことだと思いますし、ありがたいと思っています。

アーケードでの利用に期待

ーー先日コーエーテクモがアーケード向けの筐体を発表しました。PS VRは引き続き家庭用がメインなのでしょうか?

吉田氏:
やはりタッチポイントを増やしていきたいと思います。一回数百円とか数千円で体験していただく機会を提供して、PS VRをやってみたという人が増えるのはすごくいいことだと思います。これまで我々は家庭向けのPS VRの発売に集中していましたが、いろいろお話はいただいておりました。PS VRの場合、本体のPS4も含めての総合的なコストが抑えられるメリットもありますし,機会があればアーケードのような場所でも使っていただければと考えています。

ーーアーケードにPS VRを採用したい企業とパートナーシップを結ぶ形になるのでしょうか?

吉田氏:
そうですね.今後は、場合によっては一緒にできるかなというところですね。

ーーSteamの場合、コンテンツを商用利用する場合、月額でライセンス使用料を支払う仕組みがあったりしますが、PS VRでもそういうことを想定していますか?

吉田氏:
そういう形での展開ではないですね。一件一件ご相談をさせていただくという流れになります。

ーー今後、どうやってまだVRを知らない方にもVRを普及させていこうと考えていらっしゃいますか?

吉田氏:
イベントや店頭での体験はずっとやっていくべきとは思っています。そして、未経験の人でも、PS VRを持っている知り合いやクラスの友達のところに「ちょっと遊びにいっていい?」といった形で体験しに行くという話をよく聞きます。また、今後も数百円から数千円程度で、最新のVR体験が手軽にできる機会が増えていくと思います。地方都市でもそのような展開が出てくると思いますので、まずは試していただきたいですし、その意味ではPS VRである必要はないとも思ってます。まずは、「VRってこういうものなんだ」と感じていただきたいですね。
VRの普及に向けて、我々もできることをやっていきたいと思っています。

ーーアーケードでの展開にも注目ですね。今回はありがとうございました。


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