7月13日、360度カメラブランド「Insta360」の最新製品「Insta360 Titan」についての説明会が行われました。説明会には創業者であるLiu Jingkang氏(通称JK氏)が来日、日本代理店であるハコスコ社の藤井直敬氏も参加。Insta360 Titanの特徴の紹介や、Insta360社の今後の展開について語りました。
(「Insta360 Titan」。最大11Kという高解像度を誇る360度カメラ。国内販売価格は1,880,000円と、プロフェッショナルによる業務利用を想定している)
最大11K撮影、独自圧縮形式、AI活用の画像処理……新機能続々
Insta360 Titanは最大11K解像度で撮影可能なシネマティック360度カメラ。Insta360シリーズの360度カメラ「Insta360 Pro/ Pro2」をさらに高性能化した、言わば最上位モデルです。
Insta360 TitanとInsta360 Pro2の簡易比較表
Insta360 Titan |
Insta360 Pro2 |
|
最大解像度 |
11K(※動画は2Dのみ) |
8K |
センサーサイズ |
マイクロフォーサーズ |
非公表 |
レンズ |
8個(200° F3.2 魚眼レンズ) |
6個(200° F2.4 魚眼レンズ) |
色深度 |
10bitカラー |
8bitカラー |
サイズ |
直径228mm、5,500g |
直径143mm、1,550g |
Insta360では、再生環境の問題として独自の圧縮形式「vrb」と再生プレイヤー形式「Crystal View」を提供しており、この2つによって最大11Kの360度動画を視聴可能です。
ハコスコの藤井直敬氏は「(Insta360 Titanの登場で)360度カメラで作品を創れるようになった。Insta360 Titanは映像のプロフェッショナルが使いたくなるカメラで、今までになかったカテゴリーの製品」とした上で、「11Kを再生できる環境が課題」と語りました。
360度カメラでの撮影において、「暗所での撮影」や「暗所で撮影する際の、ライトの設置場所」は課題となりがちです。カメラの周囲全てを撮影する360度動画では、通常の2D映像と異なり、カメラの後ろにライトを置くことは困難です。新製品であるInsta360 Titanではマイクロフォーサーズセンサーを搭載し、「暗所でもノイズの少ない映像が撮影できるようになった」とのこと。これにより撮影の幅が広がりそうです。
JK氏はロードマップとして「AIを使った自動スティッチング機能」を挙げました。Insta360ではAIによるオブジェクト認識や、オブジェクトの輪郭に合わせたスティッチングを研究しているとのこと。AI自動スティッチングが完成すれば、スティッチングの修整作業が必要なくなり、制作時間と費用縮小の実現が期待されます。
さらにJK氏は、360度動画の全体的な展望として「デプス情報とAIを使って、限定的な範囲での6DoFの360度動画も出てくるだろう」と考えを示しました。
またJK氏は「Insta360 Titanはレンズの数を8個にしたことで立体視の品質が高くなり、人間の目が知覚するものに近くなった」と説明。筆者がOculus Rift Sで体験してみたところでも、10bitカラー(※)になったことも加えてか、現実で見るのと近い、自然かつ違和感の小さい360度動画に感じられました。
(※10bitカラーでは、約10億7,000万色が再現可能です。そのため、10bitカラーの映像では細かいグラデーションやなめらかな輪郭を描写することが可能になります。さらに白飛びや色潰れが少なくなるなどの利点もあります。映画では通常10bitカラー以上で撮影され、Insta360 Titanが「シネマティック360度カメラ」を謳うのも、10bitカラーに対応した360度カメラであることが挙げられます。VR180度撮影で使用されることが多い一眼レフカメラのLUMIX GH5も10bitカラーに対応しています)
(画像出典:B&H)
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(画像出典:Panasonic DC-GH5)
参考:Insta360 Titanで撮影した日没の360度動画(10bitカラー)
これまでのものとはひと味もふた味も違う、高品質な4K360度動画
上述の通り、筆者はOculus Rift Sでinsta360Titanで撮影した映像を視聴しましたが、その映像は4Kに解像度を落としたものでした。しかし、これまでに体験した4Kの360度動画では別モノと言えるほど綺麗で、4K動画であると説明を受けるまでは8K動画だと勘違いをするほど。約10m程離れた向かいの道路にある電光掲示板の文字は潰れておらず、PCのモニターで見るよりもヘッドセットで見た方が細かいオブジェクトや文字が認識できるなど、これまでの4K360度動画とは一線を画す品質です。
この品質の4Kの360度動画であれば、現在の視聴環境でも高品質な360度動画の体験の可能性が広がることが期待できます。
(各レンズの下にSDカードスロットが搭載されている。最大ビットレートは180Mbps)
同様に8K3D静止画では、窓ガラスに映った光すらも自然に再現されており、照明が放つ光も破綻せず、遠くの風景などは肉眼で見る現実の風景とほとんど変わらない再現度だと感じられました。
ただし、これまでの立体視のカメラと同じくカメラに近いオブジェクトは破綻してしまうとのこと。JK氏は「3Dモードでの撮影時はカメラから被写体を1m以上離すことを推奨している」と話しました。
(カメラ頂上にあるネジ穴で外部マイクを固定できます。カメラ搭載のマイクではなく、外部マイクを使うのが良いとのこと)
Insta360 TitanにはInsta360シリーズの特徴である独自の手ぶれ補正「FlowState Stabilization」も搭載されていますが、「Insta360 Titanは5.5kgと重いので、撮影場所に持っていくだけでも大変。スタビは強力だが、撮影する時はクレーンなどを使うのが良いと思う」と藤井氏。操作方法もInsta360 Proシリーズを継承しており、これまでにInsta360 Pro/Pro2を触ったことある人であれば、問題なく撮影できるとのこと。
(大きなカメラのため固定する三脚もしっかりとしたものが推奨される。ファン音を止めるファンレスモードでの撮影は最大5分まで)
また、ハコスコ社では同社が行なっているInsta360 Proシリーズ体験説明会のInsta360 Titan版も行う予定とのこと。さらにInsta360は東京に日本支社を立ち上げる予定で、日本市場に力を入れていくことも明かされました。Insta360 Titanが国内の360度の映像クリエイター/作品にどのような影響を与えるのか注目していきたいところです。