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医療・福祉 2018.03.20

赤十字のARアプリ 子どもの視点で戦争を体験

赤十字国際委員会(ICRC)は、AR(拡張現実)で戦争を体験できるiOS向けアプリ『Enter the room(エンター・ザ・ルーム)』をリリースしました。本アプリはApp Storeから無料でダウンロードできます。iOS11以降を搭載したアップルのデバイスに対応しており、対応言語は英語、対象年齢は12歳以上です。

ARアプリで戦争を体験する

『Enter The Room』はARや3Dオーディオ、振動を使ってユーザーが戦争を疑似体験し、その悲惨さを感じるARアプリです。本アプリは、ユーザーが戦争に巻き込まれる犠牲者たちのことを考え、彼らの心に寄り添う機会をつくるための、橋渡し的な存在になることを狙いとしています。

本アプリはフランスを拠点に活動するNedd社がアップル社の提供するAR開発機能『ARKit』を使って製作しました。

子ども部屋から戦争を感じる

『Enter The Room』を起動し、iPhoneで地面をスキャンすると、仮想空間に作られた子ども部屋への入り口が現れます。ユーザーは子ども部屋の中に歩いて入ることができ、そこからストーリーが展開していきます。

子ども部屋に入ると、やわらかな光がカーテンから差し込み、窓の外から鳥の鳴き声が聞こえてきます。部屋の中の家具は鮮やかな色でそろえられ、おもちゃや洋服、ぬいぐるみなどが置いてあります。

平和な風景は突如として一変します。部屋は暗くなり、外からは爆撃音やサイレンが鳴り響くのが聞こえてきます。ユーザーはストーリーが進むにつれて、戦争が子どもの世界をむしばんでいき、ひとつの人生を完全に変えてしまう様子を体験します。銃撃と爆発をシミュレーションする時はiPhoneが振動し、爆発音が大きくなるにつれて振動の大きさも比例して大きくなります。

戦争に「気付く」体験を提供

戦争は社会や地域で生活する人々、特に子どもたちに計り知れない影響を与えます。赤十字国際委員会は『Enter The Room』を通して、AR体験をした人たちに、戦争に対する新しい「気付き」を提供できることを望んでいます。

ニューヨーク州認可の臨床心理士で、トラウマとPTSDを専門とするRanjit Bhagwat氏は、米メディアVRScoutのインタビューに対し、次のように話しています。

「このアプリの体験にとても感心しています。生々しい描写が無くても、想像力を使うことでより印象に残る内容でした。シミュレーションできないことやしたくないことは確かにたくさんありますが、このアプリでは戦争経験者に対して大いに敬意を払いつつ、十分に共感できる内容になっています」

『Enter The Room』はAR技術を活用したストーリーテリングを用いて、都市での戦争が子どもの寝室や家庭、生活を破壊する様子を伝え、ユーザーの心が揺さぶられる体験を提供します。自分の住んでいる世界が一変してしまう可能性に気付いたり、戦争の犠牲者たちの声に耳を傾けるひとつの機会になることが望まれています。

App store『Enter the room』ダウンロード

(参考)VRScout赤十字国際委員会NeddRANJIT BHAGWAT, PH.D.
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