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テック 2021.01.14

VRで網目が見えてしまう「スクリーンドア現象」、その意外な解決策 フェイスブックらが発表

フェイスブックのAR/VR関連チームFacebook Reality Labsとアリゾナ大学の研究者らは、ディスプレイに網目模様が見えてしまう「スクリーンドア現象」の解決を探る研究結果を発表しました。

本研究ではディスプレイを高速で物理的に動かし、ピクセル間の隙間を埋めるという大胆な手法を採用。定量的な効果も検証しています。

「スクリーンドア現象」は、主にディスプレイ解像度が原因で網目模様が見えてしまう問題です。2021年現在、VRヘッドセットの解像度は数年前と比較して飛躍的に向上し、超高密度のディスプレイ等によってスクリーンドア現象は大きく改善しました。しかし、“完全な解決”には未だ至っていません。


(スクリーンドア現象の例)

ディスプレイを高速で円運動、その成果は?

今回の研究で提案されたのは、ディスプレイを高速かつ細かに動かし、隣り合うピクセルでピクセル間の隙間を埋めるというものです。ディスプレイの揺れという懸念もありますが、別のディスプレイに関する技術研究では、十分速い動きであればイメージが固定されて見える、との結果が出ています。

実験に際し、下記のような装置が用意されました。2つの圧電アクチュエーターがディスプレイを120Hzで円運動させ、各ピクセルは1秒に120回の速度で10µmの円の軌跡を描きます。円のサイズはディスプレイのピクセル間距離に合わせて設定され、ピクセル間の隙間を適切に埋められるようにしています。この円の動きは、”‘Non-redundancy(非冗長)”モードと呼ばれています。

一方”‘Redundancy(冗長)”モードでは、表示されるフレームをさらに4つのサブフレームに分割。各サブフレームは、それぞれ独立して動きます。ピクセルがスクリーンドアの原因となる隙間を埋める場所に来た際、ピクセルにはその場所に本来あるべき色が適用されます。

定量的・定性的な効果は?

研究ではさらに、スクリーンドア現象の改善についての効果の検証も行われています。

まずは定量的な効果の検証です。ディスプレイの部分間のコントラスト比を確認し、これをスクリーンアクチュエーターのオンオフで比較します。コントラスト比が低ければ、ピクセル間の隙間が埋められている、すなわちスクリーンドア現象が改善されていると言えます。

結果は下図のように、”‘Non-redundancy”、”Redundancy”いずれのモードでも、コントラスト比の低減が見られました。

次に定性的な効果です。下の写真が示すように、”‘Non-redundancy”モードでは元の鮮明さを維持しながら、はっきりとスクリーンドア現象が改善されています。

注目すべきは、”Redundancy”モードではスクリーンドア現象を改善するだけでなく、画像がより鮮明になっている点です。これはピクセル数を増やすことなく解像力を上げているという、非常に興味深い結果でもあります。

研究者らは実験を踏まえ、機械で適切に動かすアプリケーションを導入することで、スクリーンドア現象は改善ができると述べています。加えて、今後の研究では、ユーザースタディーの手法も必要であると提言しました。

スクリーンドア現象への取組はこちらの記事でも紹介しています。

(参考)Road to VR
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