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開発 2018.06.06

視野角を広げて没入感向上 VR/AR向け新ディスプレイ 2019年には提供

透過性の導光板ディスプレイ技術を持つAR企業Digilensは、視野角150度のVR/ARヘッドセット向けディスプレイを開発していることを明らかにしました。このディスプレイは2019年のリリースを予定しています。広い視野角のディスプレイが登場することでより没入感の高い体験が可能になります。

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DigiLensのディスプレイは、主にヘッドアップディスプレイ(HUD)や類似製品に用いられてきました。近年ではAR/VRデバイス市場への注力を強めており、2018年5月にはドイツの自動車メーカーから出資を受け、ARナビゲーションの開発に取り組むことを発表しています。

150度の広視野角デバイス

同社の設立者でありCTOのJonathan Waldern氏は、メディアRoad to VRの取材に対し、冒頭の視野角150度のAR/VRヘッドセットに関する計画を明らかにしました。

Oculus RiftやHTC Vive、Oculus Goなど現行の多くのVRヘッドセットの視野角は100度前後となっており、体験中も左右の黒い枠が気になることもあります。150度まで改善するとVRの没入感は高まることが期待できます。


(Jonathan Waldern氏)

Waldern氏によれば、1枚のディスプレイでAR/VRいずれにも対応可能なデバイスを実現するとのこと。実現のため、透過性を変えられる液晶を利用するとしています。取り外しの出来るライトブロッカーや、色つきのフィルムを重ねることも可能な見通しです。

2005年の設立以来、DigiLensは独自の導光素子技術開発を進めてきました。この技術では、薄く透過性のある物質に、光の動きを操作する回折格子を「印刷」します。回折格子は特定方向への光を強めたり弱めたりすることが可能な素子です。光は回折格子を通り、人の眼に画像を投影します。

導光板ディスプレイについては、ソニーなども製造を行っています。しかしDigiLens社は、他社に比較して大きくコストメリットがあることを強調。この技術を元に3,500万ドル(約38.5億円)の資金調達を行っています。

Waldern氏は、150度という広い視野角を実現するカギは「ディスプレイの回折格子を減らすこと」だとしています。従来のDigilens製ディスプレイには、RGBの3原色に対応する3層の回折格子を用いていました。しかし最新の製品は、緑を赤と青の層に分割することで、回折格子を2層に減らしています。


光線の動きは、通過する物体の屈折率によって変わります。全ての波長の光を1層の回折格子に集約すれば、画像(光)を各回折格子で処理し、合成するよりも、広視野角を実現することが可能です。

製品化はさらに先か

Digilensはこの広視野角導光板ディスプレイを2019年にリリースする計画ですが、VRヘッドセットの製品化まではさらに時間を要すると考えられます。同社はヘッドセットを製造していませんが、レファレンスモデルを公開する可能性はあります。

現時点で最新の2層の回折格子ディスプレイについて、DigilensはスマートヘルメットメーカーのSenaと提携し、モーターサイクリスト向けのHUDにディスプレイを提供しています。この製品は間もなく400ドル(約4万4,000円)で販売される予定です。商品化に当たり、Digilensも技術面からコスト削減を行ったとのこと。将来の広視野角ディスプレイについても一般向けの価格設定になることが期待されます。

またDigilensは、「EyeHUD」と呼ぶ眼鏡型デバイスのレファレンスモデルも開発しています。この製品は、スマートフォンのように使うAR/VRデバイスとされています。

広視野角のVRデバイスに関しては、Oculus社が150度の視野角を実現するディスプレイを搭載したプロトタイプを明らかにしています。

(参考)Road to VR
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