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業界動向 2020.03.13 sponsored

VRやARは、社会にどのような “幸せの断片”を見せたか――デジハリの成果発表会から

デジタルハリウッド大学大学院の「DEFRAGMENT -DHGS the DAY-」は、社会人向け専門職大学院の成果を幅広く発信するための発表会として2月29日に開催されました。この成果発表会では、アートやファッションをはじめ、IoTやテクノロジーなど様々な分野の研究や開発のプレゼンテーションやデモの展示が行われています。

本記事ではこの成果発表会について、全体感なども織り交ぜつつ、XR系の展示を中心にレポート。様々なプロダクトやプレゼンを通して、デジハリの姿に迫ります。

デジハリの全貌が垣間見える、成果発表会

デジタルハリウッド大学大学院では、今回の展示・発表されている成果のひとつひとつを “幸せのありどころを探すための断片”であると説明します。 “その○○は、世界を幸せにしているだろうか?”のコピーと共に、プレゼンや展示にて社会の様々な領域にある問題解決や、新しいビジネス展開などが披露されました。

修了課題のプレゼンテーションでは、テクノロジー領域はもちろん、音楽教育から映画祭など多様な題材が取り上げられました。特にXR関連では、自動車工場の現場でVRを活用する例や、養豚場で個体識別技術を使い、家畜の健康管理に使用するなど、社会的な活用事例が多く語られました。

また、XR系以外にもモーションキャプチャーやIoTを使用し、歯科医療や病児保育などの現場へ活用する方法なども。既存の業務にテクノロジーを導入することで、いかに問題解決するかも取り上げられました。前述の例も含め、テクノロジーが持つ「人間の認知や知覚を拡張する」という機能をいかに社会実装するか、という点に注目した発表が多数見受けられました。デジハリ大学院生らの社会課題への意識が良い形であらわれている、と言えるかもしれません。

プレゼンテーションの登壇者や、デモの展示の参加者の多様性についても注目。在学生はもちろん、教員や修了生、スタッフらも発表を行っており、デジタルハリウッド大学院の全体像がわかる発表会だったと言えるでしょう。

XRに限らず、多様な技術を社会で活かす可能性が見えてくる

では、テクノロジーを社会に生かす可能性として、どのようなプロダクトが制作・提案されているのでしょうか? 今回の成果発表会には、デジタルアートやクリエイター向けのデバイスなどが出展されたほか、アニメと実写を融合させたPR手法などもあり、非常にバラエティ豊かなものでした。

先述の通り、XR系のプロダクトでは、社会の問題解決を目指す展示が目立ちます。中でも「アバターワークス」は非常に興味深いものでした。2018年ごろからブームとなったVTuber(バーチャルユーチューバー)のように、3Dキャラクターを通して、自宅からでも勤務や会議ができる、というものです。

開発している株式会社キッズプレートの方にお話をうかがうと、「アバター就労のインフラを作りたい」とのこと。会議といった用途だけではなく、会社の受付のような職種での利用も考えているそうです。


「アバターワークス」が提示する可能性はきわめてタイムリーなものです。2020年3月現在は世界的なコロナウイルス流行の問題があり、大人数で同じ空間にいることや通勤を避けた、自宅でのリモートワークに注目が集まっています。

もちろんそういった利便性だけではなく、VTuberのように“キャラクター性”を活かし、リモートワークを華やかにしてくれる効果もあるでしょう。働き方改革が掲げられている中、カジュアルな方向から、しっかりと問題解決を図るプロダクトだと感じました。

ARの分野では、“歴史をダイレクトに見れる”可能性が定時されていました。現実科学ラボによる「昭和へGO! タイムマシンはAR式」はまさしくそんなプロダクトといえるでしょう。これはスマートフォンからQRコードを読み取ることで、タイトル通り昭和のイベントや建築、芸能についての画像が空間に浮かび上がります。

今回の成果発表会ではトルコからの方のプレゼンなど、様々な国からの登壇者や展示の参加者が見当たります。そうした様々な国の人々のためのARアプリが「EDUPICTO」でした。これはタブレットを通すことで、日本語のテキストを読み取り、母国語での翻訳や説明だけではなく、イラストも付けることで母国語に理解しやすくする手助けをします。

「スキマ時間で楽しんでほしい」というプロダクトもあります。「LightAR -Quiz-」はARマーカーを使い、かわいいキャラクターを生かしたクイズアプリです。10種類以上のキャラクターを選択し、3択式のクイズを解いていくものとなっています。

キャラクターは解答の当たりかはずれかで大きなリアクションを取ってくれたり、表示する大きさを変えられたり、スクリーンショットとして残すことを考えたときの仕様も上手く作られています。会場ではARマーカーも配られ、自宅などでも楽しめるようにしていました。

エンターテインメントのユニークな展示も

ARの面白さを見せる、大きな規模の展示もあります。フジテレビの人気アニメを原作としたPSYCHO-PASS サイコパス 渋谷サイコハザードは、スマートフォンをかざして見えない犯人を探し出し、仕留めていく内容となっていました。こちらは現実の渋谷で行われているイベントでもあります。

かなり奇をてらった……ように見えながら、医療啓発を考えたプロダクト「触覚体験うんこツンツン -排泄ケアへの挑戦-」です。これはタイトル通り、デバイスを通して“大便を指でつつく”ような体験をさせます。健康的な大腸から生み出される便が、どのような触覚となっているかを確認できるのです。

指を入れる機械が展示されており、おそるおそる人差し指を入れてみると、画面に表示されている大便に触れます。「理想的な水分量」と説明された、健康的な大便の触感を感じることができます(なんとも言えない触感です)。ややトリッキーではありますが、大腸ガンの啓発や介護の“ファーストショック”回避などに活用の道を見出しているようです。

コンテンツ情報処理ラボの作品では、フォトグラメトリとARを使ったカードゲームの展示も。カメラにカードを映すと、フォトグラメトリによる様々な3DCGのキャラクターが現れます。まさしく“カードゲームでキャラクターがその場で闘う面白さ”を見せようとしているプロダクトだと言えるでしょう。

社会でのテクノロジー活用を見据えた姿

今回のデジタルハリウッド大学院における成果発表会全体を振り返るに、XRの分野をはじめ、様々なテクノロジーを今後の社会でどのように活用していけるかをしっかりと考え、実装に移しているという傾向が感じられるものでした。今回のコピーのように、“世界を幸せにしているだろうか?” という問いかけを実践しようとするプロダクトが多く見受けられたと言えるでしょう。

デジタルハリウッド大学院では、4月入学の社会人院生の出願を受付中。現地に行けない人のために、ライブ配信も用意されています。テクノロジーを追いかけることはもちろん、技術が今後の社会でどんなふうに仕事を変えていけるか、どのように世界を幸せにできるかにも興味がある方は、ぜひご参加ください。


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