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業界動向 2020.01.23

Oculus Questの対抗馬なるか 一体型VRヘッドセット「Pico Neo 2」体験レポ

2020年初にラスベガスで開催されたCES 2020にて、中国のVRヘッドセットメーカーPicoは一体型VRヘッドセットPico Neo 2シリーズを発表しました。Pico Neo 2はコントローラー含め“身体を自由に動かせるVR”である6DoFに対応。機能だけ見ればOculus Questと同様です。

今回Mogura VR Newsではこの「Pico Neo 2」シリーズを体験。中国のメーカーが送り出すVRヘッドセットがどのようなものなのか、詳細にレポートします。

Pico初の6DoF、片目約2K採用は継続

Picoはこれまでにも、スマートフォンやPCを使わない一体型VRヘッドセットを中心に製品を開発・販売しています。2019年には両目4Kの解像度を実現した「Pico G2 4K」を発売するなど、VRヘッドセット開発に取り組み続けています。

今回発表発表されたのは通常モデルとなる「Pico Neo 2」、そしてアイトラッキング(視線追跡)搭載モデルの「Pico Neo 2 Eye」の2種類です。いずれも、Picoの製品としては初の「両手にコントローラーをもって自由に動かすことができる」VRヘッドセット。いわゆる6DoFのデバイスです。フェイスブック(Oculus)のOculus Questと同様に体や手を自由に動かすことができ、VR内でも現実さながらの移動が可能です。

なお、ヘッドセットの解像度は先行モデルと同じく片目約2K(=両目約4K)の液晶パネルを採用。公称でのリフレッシュレートは75Hz、視野角は101度、搭載されているプロセッサはクァルコムのSnapdragon 845です。

4Kの高解像度と用途によっては気にならないコントローラー

PicoのVRヘッドセットはOculus StoreやSteamと異なる、独自プラットフォームでコンテンツを体験することになります。筆者が体験した際はエレクトロニックな曲に合わせて前方から流れてくるノーツを叩く、「Beat Saber」や「AudioShild」ライクなVRリズムゲームでした。

プレイヤーの動きについては、ヘッドセット前面にある2個のカメラで空間認識を行います。ときおり床に対する違和感があるものの、トラッキングはおおむね良好でした。

手に持つコントローラーはスティック状のもの。正面にボタンが3つ、メニューボタン、スティック(押し込み可能)、側面(内側)にグリップボタンがあります。Oculus Questではカメラを使ったトラッキングを行っていますが、Pico Neo 2はコイルを使った磁気式トラッキング。カメラの範囲を気にせず手を動かせる点は小さくない利点でしょう。なお、MRデバイスである「Magic Leap 1」も磁気式のトラッキングを使っています。

実際にコントローラーを振り回してみると、若干の遅延が。動きの速いリズムゲームのハードモードでは気になります。位置のトラッキング・手のトラッキングとも、Oculus Questのトラッキング精度に比べるとやや劣るところがありますが、Pico Neo 2は主に産業用を謳っています。その用途に限れば、そこまでストレスではないかもしれません。

驚きの「アイトラッキング×フォービエイテッド・レンダリング」

続いて体験したのはアイトラッキングを搭載した上位モデル「Pico Neo 2 Eye」。アイトラッキング搭載のVRヘッドセットは(超ハイエンドモデルを除き)HTCの「VIVE Pro Eye」くらい。「アイトラッキングが搭載された一体型VRヘッドセット」はおそらく史上初ではないでしょうか。

アイトラッキング技術については、同分野の老舗とも言えるTobii社のものが組み込まれています。実際に体験しても、眼球の動きを問題なく追跡できていました。ユーザーの視線データを分析したり、操作に応用したりと、一体型VRヘッドセットであっさりとアイトラッキングができてしまう点は大きな強みとなるでしょう。

手軽に使える一体型VRヘッドセットでアイトラッキングが実現していることも驚きでしたが、それ以上の衝撃を受けたのは、アイトラッキングをフルに活用した「フォービエイテッド・レンダリング」が実装されている点です。

フォービエイテッド・レンダリングは、人間の目の性質に注目した技術です。従来、人間の目がはっきりと見ているのは視界の中心部のみ。いわゆる周辺視野はかなりざっくりとしており、解像度を下げてもあまり気づきません。そこで視線を向けている部分だけを高解像度で描画、周りを低解像度で描画することにより、自然な見た目と処理の軽量化を実現しています。特にモバイル向けCPUを使う一体型VRヘッドセットはスペック上の制約が大きいため、フォービエイテッド・レンダリングはより効果的です。

CESで体験したデモでは、フォービエイテッド・レンダリングのON/OFFにより描画クオリティが上がる(そして、明らかにきれいな描画になってもフレームレートが落ちない)体験ができました。どの程度画質を上げることができるのかは不明ですが、SDKを使うことで実装が可能になるようです。

さりげなく展示されていた”ストリーミング”プレイ

Pico Neo 2の展示では、1カ所、他と異なる展示をしているものがありました。それがPCからのストリーミングです。Pico Neo 2とWi-Fiルーター、専用の中継機を組み合わせることで、PC向けのVRコンテンツをPico Neo 2に無線転送し、体験できるようにしたものです。

混雑しているCESの展示エリアであっても、その体験は非常に良好。次々と迫ってくる壁に空いた穴に合わせてポーズをとって避けるVRフィットネス「OHSHAPE」が違和感なく体験できました。現時点では、こちらの中継機は中国国内のみでの展開とのことでしたが、今後に期待したいところです。

Pico Neo 2は産業利用で重宝されうる

PicoはクアルコムやHTCのVRプラットフォームにいち早く参加し、中国のハードウェアメーカーが苦手とするSDKなどのソフトウェア・エンジニアリングおよびプラットフォーム展開を補ってきました。その結果もあり、Oculusの商用利用があまり進まない日本国内では、公共施設での体験や企業案件での利用が増えつつある印象です。Oculus Questと同等の機能を持つPico Neo 2は、Oculus Questを商用利用で使いたかった法人の選択肢になりうるものです。アイトラッキングに関しても、一体型での競合が存在しないことは大きなアドバンテージとなるでしょう。

さらにPicoは他にも小型・軽量にチャレンジした「Pico VR Glass」を展示。徐々に特徴的な製品を揃えつつあり、今後の展開にも期待できそうです。

Pico Neo 2シリーズは(発売時期は不明ですが)公式サイトで法人向けの予約を受付中です。


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