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業界動向 2022.12.07

VTuber二大大手、ANYCOLORとカバーが誹謗中傷対策強化で共同声明

ANYCOLOR株式会社とカバー株式会社が誹謗中傷などの対策をさらに厳格化する共同声明を発表しました。(Moguliveの速報

12月5日(月)、VTuberグループ「にじさんじ」を運営するANYCOLOR株式会社と、VTuber事務所「ホロライブプロダクション」を運営するカバー株式会社が、迷惑行為・誹謗中傷のさらなる対策強化を発表しました。両社で連携体制を組み、従来の対策に加え、司法・警察との連携、ノウハウ共有などを行います。

司法・警察との連携体制を2社で構築

両社は2020年から通報窓口や対策チームを設置。弁護士を通じて匿名投稿者の発信者情報開示、加害者への損害賠償を請求するほか、公式チャンネルのコメント機能を制限するなどの安全対策をとってきました。今年9月には、ANYCOLORが直近1年間で約90件の通報に対応し、カバーが2件の事件で和解金支払に応じたと、それぞれ報告しています。

また両社は、今回の共同声明に先立ち、2022年10月から11月にかけていわゆる「まとめサイト」の運営者と交渉し、悪質行為の助長を今後一切行わないことを条件に、係争事件について示談に応じていました(出所1出所2)。

今年8月には、アクシア・クローネ氏(にじさんじ所属)が体調不良などを理由に無期限活動休止を表明し、ANYCOLORも「極めて重大な問題」「卑劣な言動を決して許容」しないと宣言するなど、業界内外で大きな注目を集めていました。過去にも、迷惑行為やトラブルなどで活動を引退した方が続出しています。

被害相次ぎ、社会問題に

ネット上の誹謗中傷は1990年代から発生していて、2010年代から急増し、深刻な社会問題になっています(参考:総務省)。近年では匿名の嫌がらせに留まらず、偏向報道や著名人の暴言、政治家による煽動(いわゆる「犬笛」)も各国で問題視されています。

VTuberの典型的な被害は、虚偽・誤情報の流布、上場企業への風説の流布、信用・名誉毀損、本名・顔写真の曝露などプライバシー侵害、ストーカー・つきまとい、「荒らし」「粘着」などの業務妨害、危害予告(脅迫)などです。

弁護士の関真也氏によれば、VTuberやその所属先に対して「公然と(つまり、不特定又は多数人が認識できる状態で)、本人の社会的評価を低下させる事実を適示した場合には、名誉毀損として書き込みの削除や損害賠償請求などの対象となる可能性」があるとします。

悪質行為の厳格対応が進む

ネット上の悪質行為に対しては、コンテンツプロバイダ(SNS運営会社など)が禁止行為の明示やアカウント凍結、フィルタリングなどを試みているものの、著名人の体調不良、精神疾患、活動休止・引退、死亡事件などが後を絶ちません。

こうした状況を受け、2022年7月には改正刑法が施行され、侮辱罪は公訴時効が3年となり、罰則に懲役刑が加わるなど、誹謗中傷は厳格に扱われる見通しです。同10月には改正プロバイダ責任制限法が施行され、新設された「発信者情報開示命令に関する裁判手続」で、被害者はより簡易な手続きを行えるようになりました。

また、いわゆる「パワハラ防止法」の施行に伴い、社内・取引先のハラスメントだけでなく、顧客の迷惑行為(カスタマーハラスメント)も、企業(事業主)が労働者の安全配慮義務を負うべきとの見方が広がっています。

実名の個人だけでなく、キャラクターと本人のアイデンティティが異なることもあるVTuberへの司法判断も出ています。2022年3月・8月には東京地裁と大阪地裁がそれぞれ、VTuberと実在する個人の同一性を認め、中傷投稿の発信者情報開示請求を認めました。

今後も、VTuberをはじめとして、ネット上で配信活動をする方(ストリーマー、配信者)への悪質行為が、社会的に厳重な捜査・処罰の対象になると見られます。

参考:ANYCOLORカバー


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